アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.0-63 大筒花火

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…古代都市の出口へたどり着き、外へ出る。
 煮えたぎる砂漠はそのままのようだで、現状はすぐにこの場所を脱出することはできないが、ギリギリのところまで進み、振り返る。

 ゴゴゴゴゴゴっと地面が揺れ始め、地下の異常が感じ取れるだろう。
 地震とは異なる、下から何かが無理やり出てくるような地鳴りと共に、古代都市の中央に大きな亀裂が入り、そこから何かが出てきた。

【シドドド、デッボォォォォォォォミサイラァァァ!!】

 それは、一見すると巨大なミサイルの様だろう。

 だがしかし、ただのミサイルではなく、物凄い量のもやしが纏わりつき、その内部に侵食をしているだろう。
 足元のエンジン部分からは、元のシードの名残というべきなのか、いくつもの筋肉質な足が出ており、それで身体を支えているようである。

 その頂点部分はミサイルな弾薬がありそうだったが…なぜか、超巨大化したヒマワリの種が出来上がっており、ぎろぎろと無数の目をあの筋に沿う形で顕現させており、不気味さを増している。

―――
>惑星破壊ミサイルが侵食され、そのエネルギーが奪われました。
>モンスターデータの変更を確認。
>突然変異種『デボスミサイラー』が爆誕しました!!

『デボスミサイラー』
恐るべきシードたちがミサイルのエネルギーを強奪し、むりやり吸収して成長した結果生まれたモンスター。
レイドボスの子供たちということだけあって、その資質は十分あったが、惑星破壊ミサイルのエネルギーを取り込んだことによって異常な方向に開花してしまった。
―――

「異常成長による変異か…見た目がかなり不気味になったのも、納得だな」

 ログに表記された相手の情報を見て、思わずそうつぶやくハル。
 これまで様々な相手を見てきたが、この醜悪さを持つようなものがなかなかいなかっただろう。

 ヒマワリの種だけに、文字通り開花する可能性も否定できなかったが…このような形で開花するとは、流石にレイドボスの方も想定していなかった可能性もある。



「どうする?奴ら、巨大化しすぎて逆に周囲を見わたしにくくなって、こちらをすぐには見つけられていないようだけど…」
「戦おうにも、今の状態は不味いからね…」

 あそこまで成長した上に変異もあった以上、毒の手が使えない可能性が大きい。
 MPも回復していないし、戦力差的にも厳しいだろう。


 だがしかし、ここで逃げるという手が使えたらよかったが、あいにくここは煮えたぎる砂漠であり、簡単に取れるわけではない。
 そのうえ、プレイヤーであるハルやミント、中三病だけならばデスペナルティで済むかもしれない状況だとしても…


「ふむ、下手すると小生、ここで生涯を終えるか。むぅ、もっと研究したかったが…」
「そっか、NPCドクターリリエルの場合は僕らと違って、ここで命を落としたら終わりか」

 こういう状況になることがなかなかないが、プレイヤーと違ってNPCはこのオンラインの世界の存在な関係上、デスペナルティどころか本当の死に直結してしまうことがある。
 命の価値はプレイヤー以上に重いからこそ、取り返しのつかない最悪の事態は避けたかったが…残念ながら、現状そうなる可能性は非常に高い。

「さて、どうしたものか…まだ気が付かれていない間にドクターリリエルさんだけでも逃がせればいいけど…この煮えたぎったタギリニノ砂漠、自力で横断できる?」
「無理」
「100日周期で通常の砂漠に切り替わるから、それだけの間粘る…のもダメか」

 逃げられない状態、まさに絶体絶命だろう。
 いつもならば頼みの綱になりうる黒き女神の力も、万全に振るえないこの状況。

 いっそ、故障などの後々の支障をぶっ飛ばしてグレイ号を呼ぶ手段もあるが…このモンスターを相手にして待つだけの余裕はあるのか。


 どうしたものかと、盛大に悩んでいた…その時だった。



ズゴゴゴゴゴゴ!!
【デッボミサァァィ?】
「「「「ん?」」」」

 既に相手は地表に出てきているはずなのに、何かまた地鳴りが聞こえてきた。

 何かが掘り進んできているかのような、こんなところで他にいる相手は…


ドゴォォォォォォォォォン!!
「とぉぉぉぉう!!」

 爆音を上げ、地中から誰かが飛び出してきた。

 何事かと見れば、どうやら僕ら以外にいつの間にかやってきていたプレイヤーのようだが…何だ、アレは。


【デッボミサイラァァァ!!】

 出てきたものをすぐに敵として認識したのか、デボスミサイラーの目が光り輝き、光線が解き放たれる。

 大量の目から放出され、あっという間に蒸発させるかと思いきや…


「ぬぅん?!地上に出て早々、敵か!!その程度の筋肉の無い攻撃なんぞ、おそるるにたらず!!ふんすぅ!!『シャインマッスルガード』!!」
バシィィィィィン!!
【デボミサ!?】
「「「「ええっ!?」」」」

 瞬時にそのプレイヤーの体が何倍にも膨張し、光り輝き、光線を防ぎ切った。

「ぬぅんぬぅんぬぅん!!惜しいぞ、惜しいぞその肉質な足は!!折角の筋肉を活かさぬ敵とは、何とも惜しいものか!!」

 光が消えたが、その膨れ上がった肉体は…まさに筋肉ダルマと言って良いような状態になったプレイヤーはそう叫ぶ。

 何だろう、初めて見た人のはずなのに、物凄く変な既視感を感じるような…

「…ミーちゃん、何かあの人、どこかで見おぼえないかな?」
「いやいや、私の知り合いにあんな筋肉ダルマは…ん?でも、確実に見たことがあるような」

 プレイヤーのアバターは少々手が加えられるとは言え、元は現実の肉体に近いものがある。

 そのため、どこ関わっていたとしても、何かしらの既視感があり、確実に出会ったことがある人だと思ったが…気が付いた。



「ま、まさか…と、父さん!?」
「あ、そうだよ!!あの人、どこかで見たことがあると思ったら、ハルのお父さんに似て、いや、あの筋肉がたりからしてまさかの本人!?」
「「身内なのか!?」」

 まさかまさかの、身内の…父親、青葉巌とのオンラインでの遭遇。
 本人と確定させたくはないのだが、残念ながら色々と証拠がそろい過ぎているのであった…



「ぬぅん!!マッスルイヤーに反応が!!そこにいるのは他のプレイヤーか!!筋肉が少々足りぬのが惜しい者たちばかりか!!」
「どういう耳をして今更気が付くんだよ!!」

…間違いない、この反応は、物凄く否定したいけど、父だ。
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