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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~
ver.6.0-51 ドクターの手にかかれば
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大量毛玉暴走爆走劇場とでもいうべきか、剛毛の蹂躙劇というべきか。
ドクターリリエルの攻撃力の高さに驚いたが、マッドサイエンティストを名乗る以上、本人に戦闘力があるパターンがあるのは珍しくもない。
いやまぁ、中にはメカに乗ったりひたすら土下座したり変な杖で何かを操ったりするような者たちもいるだろうが、この毛玉の場合は自ら戦うタイプなのだろう。
そのおかげで、道中の戦闘も中々楽できるわけだが…
「戦い終わった後の、増えた毛玉がどろどろに溶けていくのはちょっと怖いな…」
「ふははは、戦いに犠牲はつきものだと理解しているからな。小生たちも理解しているからこそ、畏れぬのだよ」
じゅうううっと音を立てて、戦闘のたびに増えていたドクターリリエルが自らに投薬して増殖した毛玉たち…ドクター曰く、増殖体と呼ばれる者たち。
それぞれに一応自我のようなものはあるらしいが、所詮は一時的に作られた仮初の命であることを自覚しており、満足劇に消えゆく様はなんというべきだろうか。
中には折角のシチュエーションだからと、どこで仕入れた情報なのか、溶鉱炉に片手をあげて沈む名シーンを再現している者もちらほら見受けられるだろう。
「しかし、科学の発展に犠牲はつきもの。発展のための礎として、小生たちは自らが消えるのは畏れぬものだ。まぁ、すでに数多くの小生たちが無へと期しているが…この身が本物なのかどうかもまた、怪しくはあるが些細なことである」
「いやいや、些細なことじゃないって」
「自分自身のことは省みない、猪突猛進タイプのさらに厄介な感じの人だ、これ」
作られたものが自分と同等の者であれば、例え本物がうっかり消えても構わないだけの心を持っているというのだろうか。
マッドサイエンティストを名乗る以上、それだけのことをするための心の強さを垣間見たような気がしなくもない。
…いや、これ薬で増えているから、どちらかと言えばケミカルな方だからマッドケミカリストなのだろうか。そのあたりはツッコんだら負けなのだろうか。
そう思いつつ、道中のモンスターたちが哀れな剛毛たちによって蹂躙されつつも、情報収集を怠らないように動く。
ゴリランドロノメダ内はまだまだ開発途上なこともあって人が多いわけではないが、それでも開発場所にそれなりに人が来ており、様々な情報を得ることができるのだ。
「その中で集めた情報だと、砂漠の向こうの古代都市群が怪しいか…それに、もう一つの目撃情報が」
「蠢くウツボカズラのようなものに丸呑みされた状態で目撃された人かぁ。これ、中三病さんじゃないかな?」
何だろう、この物凄くわかりやすいような目撃情報は。
そんな情報で割り出せるのもどうかと思うが、あの人も一応プレイヤーだし、惑星破壊ミサイルを探していてもおかしくはないだろう。
目撃された絵面がほぼ怪談噺の妖怪の類になるが、あの女帝の弟であると考えれば何の不思議もないと思えてしまう。
あの人はあの人で、苦労する光景を見てきたからなぁ…このオンラインゲーム内で割とよく巡り合う人物にして、別方面の苦労人臭が漂ってくるからこそ、わかってしまうのだ。
おそらく、惑星破壊ミサイルを探して動いているのは間違いないだろうし、目撃情報によればすでに古代都市群とやらに向かった様子でもある。
このまま中三病さんが先にミサイルを見つけて、レイドボスに対して攻撃しても別に良いのだが…せっかくのレイドバトルなので、ここはひとつ、協力しに向かうというのもありだろう。
「それで古代都市群へ向かうことにするけど、みんないいよね?」
「別に問題は無いよ」
「ふぅむ、古代都市の方面か…あのあたりはまだ、ゴリラマン先生が手を付け切っていない場所だからこそ、ここで先に入り込めるのは悪くはないかもなぁ」
マリーたちにも確認を取り、砂漠の先にあるという古代都市群へと進路を向ける。
先に中三病さんがミサイルを手にしていても良いが、手助けできるときはしてあげたほうがいいだろう。
これまでの経験上、相当な苦労をしているのを理解しているからこそ…苦労をかけさせてくるどこぞ屋の変態共とは違い、協力をしたくなるのだ。
そんなわけで、ハルたちもまた、中三病と同様に古代都市の場所へ向けて砂漠越えを開始するのであった…
「あ、でもドクターリリエルはどうするんだ?その毛の量だと、砂漠の暑さがどう考えても地獄になると思うんだけど」
「そんなこと、想定していない小生だと思ったか?この毛の弱点に対して、しっかりと対応できる代物は用意済みだ。いざとなれば、一か月に一度使える『全身脱毛身代わりの術』のスキルを使えばいいからな」
…名前がそのまますぎるが、その剛毛がずるりとすべて抜け落ちるのだろうか。
その中身がどうなっているのか、ちょっと気になるな…
ドクターリリエルの攻撃力の高さに驚いたが、マッドサイエンティストを名乗る以上、本人に戦闘力があるパターンがあるのは珍しくもない。
いやまぁ、中にはメカに乗ったりひたすら土下座したり変な杖で何かを操ったりするような者たちもいるだろうが、この毛玉の場合は自ら戦うタイプなのだろう。
そのおかげで、道中の戦闘も中々楽できるわけだが…
「戦い終わった後の、増えた毛玉がどろどろに溶けていくのはちょっと怖いな…」
「ふははは、戦いに犠牲はつきものだと理解しているからな。小生たちも理解しているからこそ、畏れぬのだよ」
じゅうううっと音を立てて、戦闘のたびに増えていたドクターリリエルが自らに投薬して増殖した毛玉たち…ドクター曰く、増殖体と呼ばれる者たち。
それぞれに一応自我のようなものはあるらしいが、所詮は一時的に作られた仮初の命であることを自覚しており、満足劇に消えゆく様はなんというべきだろうか。
中には折角のシチュエーションだからと、どこで仕入れた情報なのか、溶鉱炉に片手をあげて沈む名シーンを再現している者もちらほら見受けられるだろう。
「しかし、科学の発展に犠牲はつきもの。発展のための礎として、小生たちは自らが消えるのは畏れぬものだ。まぁ、すでに数多くの小生たちが無へと期しているが…この身が本物なのかどうかもまた、怪しくはあるが些細なことである」
「いやいや、些細なことじゃないって」
「自分自身のことは省みない、猪突猛進タイプのさらに厄介な感じの人だ、これ」
作られたものが自分と同等の者であれば、例え本物がうっかり消えても構わないだけの心を持っているというのだろうか。
マッドサイエンティストを名乗る以上、それだけのことをするための心の強さを垣間見たような気がしなくもない。
…いや、これ薬で増えているから、どちらかと言えばケミカルな方だからマッドケミカリストなのだろうか。そのあたりはツッコんだら負けなのだろうか。
そう思いつつ、道中のモンスターたちが哀れな剛毛たちによって蹂躙されつつも、情報収集を怠らないように動く。
ゴリランドロノメダ内はまだまだ開発途上なこともあって人が多いわけではないが、それでも開発場所にそれなりに人が来ており、様々な情報を得ることができるのだ。
「その中で集めた情報だと、砂漠の向こうの古代都市群が怪しいか…それに、もう一つの目撃情報が」
「蠢くウツボカズラのようなものに丸呑みされた状態で目撃された人かぁ。これ、中三病さんじゃないかな?」
何だろう、この物凄くわかりやすいような目撃情報は。
そんな情報で割り出せるのもどうかと思うが、あの人も一応プレイヤーだし、惑星破壊ミサイルを探していてもおかしくはないだろう。
目撃された絵面がほぼ怪談噺の妖怪の類になるが、あの女帝の弟であると考えれば何の不思議もないと思えてしまう。
あの人はあの人で、苦労する光景を見てきたからなぁ…このオンラインゲーム内で割とよく巡り合う人物にして、別方面の苦労人臭が漂ってくるからこそ、わかってしまうのだ。
おそらく、惑星破壊ミサイルを探して動いているのは間違いないだろうし、目撃情報によればすでに古代都市群とやらに向かった様子でもある。
このまま中三病さんが先にミサイルを見つけて、レイドボスに対して攻撃しても別に良いのだが…せっかくのレイドバトルなので、ここはひとつ、協力しに向かうというのもありだろう。
「それで古代都市群へ向かうことにするけど、みんないいよね?」
「別に問題は無いよ」
「ふぅむ、古代都市の方面か…あのあたりはまだ、ゴリラマン先生が手を付け切っていない場所だからこそ、ここで先に入り込めるのは悪くはないかもなぁ」
マリーたちにも確認を取り、砂漠の先にあるという古代都市群へと進路を向ける。
先に中三病さんがミサイルを手にしていても良いが、手助けできるときはしてあげたほうがいいだろう。
これまでの経験上、相当な苦労をしているのを理解しているからこそ…苦労をかけさせてくるどこぞ屋の変態共とは違い、協力をしたくなるのだ。
そんなわけで、ハルたちもまた、中三病と同様に古代都市の場所へ向けて砂漠越えを開始するのであった…
「あ、でもドクターリリエルはどうするんだ?その毛の量だと、砂漠の暑さがどう考えても地獄になると思うんだけど」
「そんなこと、想定していない小生だと思ったか?この毛の弱点に対して、しっかりと対応できる代物は用意済みだ。いざとなれば、一か月に一度使える『全身脱毛身代わりの術』のスキルを使えばいいからな」
…名前がそのまますぎるが、その剛毛がずるりとすべて抜け落ちるのだろうか。
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