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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~
ver.6.0-34 貴方は知らない、けれども貴女は知っている
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―――深夜、ゆっくりと心と体を休めてハルたちは眠っていた。
夜更かしをしたい時もあるが、そうでないときは明日に備えてしっかりと休息をとる。
明日は仕事がある日だからこそ、体力をしっかりと養うためにも睡眠というのはかなり重要なのだが…
「…これは、かなり久しぶりな明晰夢というか…自分自身の夢というべきかな?」
『そうだね、そう言って良いと思うよ、私/僕』
夢の中だという自覚がある、フワフワとした空間。
そして目の前には、黒き女神(第一形態)の姿をした自分がいた。
ただし、その姿は少し、これまでと違っていた。
黒い靄のようなものを纏うのはそのままだが、全体的に色が薄く…違う、姿そのものが、透けて見えるのだ。
「透けているのは、一体なぜ…」
『それは、私/僕がもうほぼ、統合されてきているからだよ』
疑問を口にだすと、そう答える黒き女神。
どうやらほぼ女神の力は一つにまとまってきているらしく、目の前の自分…女神そのものの意識と言える自分は消えるようだ。
消えるというのは少し違うらしいが…まぁ、これまで異なっていた色水が、女神の力を使い続けてきたことによって混ざっていき、一つの液体になるみたいである。
「もう一つに溶け合って、会わなくなるからその前に自分自身だけど、お別れを言いにきたのか?」
『ふふふ、それはちょっとあるけど、そうじゃないよ』
僕の問いかけに対して、答える黒き女神。
自分自身へのお別れを言うのも変な話だが、間違ってはいないらしい。
ただし、それとは別のものもあるようで、今回出てきたようだ。
『私/僕自身になるのは別に良い。消えたとしても、女神としての自分が変わるわけじゃない。…でも、そう言うことだけなら黙って消えても問題なかったんだけど…ちょっと、私/僕に言いたいことがあったから、最後に言いに来たんだ』
「言いたいこと?」
『そうだよ、私/僕。女神の身を持つからこそ、気が付き、そして知ることが出来ること』
『女神だからこそ、気が付ける。人じゃない身…人ならざる者の中でも、神であるからこそ、外れることが出来た者』
ゆっくりと近づきながら、黒き女神はそうつぶやく。
『私/僕はわかっている。人間の僕/私では気が付けなかったこと』
『でも、どっちも私/僕自身だから、その気が付きは共有される』
『ねぇ、ここ最近少し、不思議に思わなかったかな?アルケディア・オンラインの世界に関しての、ちょっとした違和感を感じ取らなかったかな?』
「オンラインの、違和感?」
『そう、VRMMOという名のゲームの世界なのに、現実のこの世界とのつながる違和感。プログラミングに過ぎないはずの、本当には無いはずの本物の感覚。そして少しづつ、慣らされていた…不思議とは思えなくなる、当たり前のことの数々を』
『ああ、この感覚は悪いものではないよ。悪意もなく、何もなく…単純に、そこにあろうとするもの、いや、創られるものとして、もう間もなく完成に至ろうとするものだからね』
「完成に?アルケディア・オンラインの一体何が」
『それを今、私/僕は教えようとしているんだよ。本当は、ロロにでも尋ねれば分かるかもしれないけど、残念ながら彼女は僕/私の使用人だとしても、運営側だ。そう簡単に口を開かないのは、十分理解しているからね』
ニコッと笑いつつ、黒き女神はそっと僕を抱きしめる。
自分を自分が抱きしめるのはおかしな感覚だが、ただ抱きしめられているわけではなかった。
薄く、透明になっていた女神の体が淡く光り、泡のように分かれて僕の中へ溶け込んでいく。
それと同時に、女神が何を考え、何を思っていたのか、その中身を自然と理解していく。
どうやら、これで本当に女神の力が一つになったようで…女神の姿が全て消え、その夢の中は僕/私だけになった。
これ以上、ここに一人でいる意味はない。あとは目を覚ませば良いだけの話。
でも、単純にそれで済めば良かったのに…最後の最後で、あの私/僕は情報という名の置き土産を残していった。
「な、な、な…何を残して消えているんだあの私/僕はぁぁぁぁ!!いや、消えたんじゃなくて一つになったからちょっと違うけど、こんな情報を残すなぁぁぁぁぁ!!」
我が身のことながら、全力疾走してバックドロップをかましてでも止めればよかった。
しかし、残念なことにその相手は既におらず、受け取ってしまった以上戻すこともできない。
いや、ランプでの分離をすればオンラインでの自分自身へのバックドロップはできなくも…一体化した以上、精神的な分離はできなさそうな気もするので、実質不可能に近い。
気が付いたら目が覚めており、いつの間にが現実の肉体の方も黒き女神になってベッドから勢いよくぶっ飛んでしまったようで、雲の上に浮かんでいたのであった…
「…あ、しまった。勢いでベッドから飛び起きたかもしれないけど、これってもしかして、屋根に穴が開いてないか…?」
家に戻るのが、少し怖い…絶対に、ミーちゃんやロロに怒られる…おのれ、黒き女神め…自分自身を恨むのは何か間違っているけど、どうしようもないんだよ!!
夜更かしをしたい時もあるが、そうでないときは明日に備えてしっかりと休息をとる。
明日は仕事がある日だからこそ、体力をしっかりと養うためにも睡眠というのはかなり重要なのだが…
「…これは、かなり久しぶりな明晰夢というか…自分自身の夢というべきかな?」
『そうだね、そう言って良いと思うよ、私/僕』
夢の中だという自覚がある、フワフワとした空間。
そして目の前には、黒き女神(第一形態)の姿をした自分がいた。
ただし、その姿は少し、これまでと違っていた。
黒い靄のようなものを纏うのはそのままだが、全体的に色が薄く…違う、姿そのものが、透けて見えるのだ。
「透けているのは、一体なぜ…」
『それは、私/僕がもうほぼ、統合されてきているからだよ』
疑問を口にだすと、そう答える黒き女神。
どうやらほぼ女神の力は一つにまとまってきているらしく、目の前の自分…女神そのものの意識と言える自分は消えるようだ。
消えるというのは少し違うらしいが…まぁ、これまで異なっていた色水が、女神の力を使い続けてきたことによって混ざっていき、一つの液体になるみたいである。
「もう一つに溶け合って、会わなくなるからその前に自分自身だけど、お別れを言いにきたのか?」
『ふふふ、それはちょっとあるけど、そうじゃないよ』
僕の問いかけに対して、答える黒き女神。
自分自身へのお別れを言うのも変な話だが、間違ってはいないらしい。
ただし、それとは別のものもあるようで、今回出てきたようだ。
『私/僕自身になるのは別に良い。消えたとしても、女神としての自分が変わるわけじゃない。…でも、そう言うことだけなら黙って消えても問題なかったんだけど…ちょっと、私/僕に言いたいことがあったから、最後に言いに来たんだ』
「言いたいこと?」
『そうだよ、私/僕。女神の身を持つからこそ、気が付き、そして知ることが出来ること』
『女神だからこそ、気が付ける。人じゃない身…人ならざる者の中でも、神であるからこそ、外れることが出来た者』
ゆっくりと近づきながら、黒き女神はそうつぶやく。
『私/僕はわかっている。人間の僕/私では気が付けなかったこと』
『でも、どっちも私/僕自身だから、その気が付きは共有される』
『ねぇ、ここ最近少し、不思議に思わなかったかな?アルケディア・オンラインの世界に関しての、ちょっとした違和感を感じ取らなかったかな?』
「オンラインの、違和感?」
『そう、VRMMOという名のゲームの世界なのに、現実のこの世界とのつながる違和感。プログラミングに過ぎないはずの、本当には無いはずの本物の感覚。そして少しづつ、慣らされていた…不思議とは思えなくなる、当たり前のことの数々を』
『ああ、この感覚は悪いものではないよ。悪意もなく、何もなく…単純に、そこにあろうとするもの、いや、創られるものとして、もう間もなく完成に至ろうとするものだからね』
「完成に?アルケディア・オンラインの一体何が」
『それを今、私/僕は教えようとしているんだよ。本当は、ロロにでも尋ねれば分かるかもしれないけど、残念ながら彼女は僕/私の使用人だとしても、運営側だ。そう簡単に口を開かないのは、十分理解しているからね』
ニコッと笑いつつ、黒き女神はそっと僕を抱きしめる。
自分を自分が抱きしめるのはおかしな感覚だが、ただ抱きしめられているわけではなかった。
薄く、透明になっていた女神の体が淡く光り、泡のように分かれて僕の中へ溶け込んでいく。
それと同時に、女神が何を考え、何を思っていたのか、その中身を自然と理解していく。
どうやら、これで本当に女神の力が一つになったようで…女神の姿が全て消え、その夢の中は僕/私だけになった。
これ以上、ここに一人でいる意味はない。あとは目を覚ませば良いだけの話。
でも、単純にそれで済めば良かったのに…最後の最後で、あの私/僕は情報という名の置き土産を残していった。
「な、な、な…何を残して消えているんだあの私/僕はぁぁぁぁ!!いや、消えたんじゃなくて一つになったからちょっと違うけど、こんな情報を残すなぁぁぁぁぁ!!」
我が身のことながら、全力疾走してバックドロップをかましてでも止めればよかった。
しかし、残念なことにその相手は既におらず、受け取ってしまった以上戻すこともできない。
いや、ランプでの分離をすればオンラインでの自分自身へのバックドロップはできなくも…一体化した以上、精神的な分離はできなさそうな気もするので、実質不可能に近い。
気が付いたら目が覚めており、いつの間にが現実の肉体の方も黒き女神になってベッドから勢いよくぶっ飛んでしまったようで、雲の上に浮かんでいたのであった…
「…あ、しまった。勢いでベッドから飛び起きたかもしれないけど、これってもしかして、屋根に穴が開いてないか…?」
家に戻るのが、少し怖い…絶対に、ミーちゃんやロロに怒られる…おのれ、黒き女神め…自分自身を恨むのは何か間違っているけど、どうしようもないんだよ!!
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