アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
600 / 718
Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.0-14 +宝石?

しおりを挟む
ばっくんと まるのみされる めがみかな

「って、5・7・5を読んでいる場合か馬鹿やろぉぉぉぉ!!」
「黒き女神様が、一瞬で何かピンクっぽい何かに取り込まれたぞ!!」
「さっきの熊の例を見ると、まさかあれも女神様に寄生する気なのかぁぁぁぁ!?」

 突然の出来事に、黒き女神の動向を見ていたプレイヤーたちがパニックに陥る。
 自分たちのピンチを救ってくれた、他のプレイヤーたちから見て謎が多くとも憧れや崇拝の対処となっていた黒き女神。


 そんな彼女が立った今、どこぞの何ともしれぬ宝石に取り込まれたのを見て、狂乱に陥らないわけが無いだろう。


 いや、そんじょそこいらの一般プレイヤーたちならばともかく…


「は、は、ハルが…え、え」
【【【(唖然)】】】

 ミントやマリーたちの場合、ショックが大きすぎて動けない。
 
 同じく、グレイ号内部の分析室にて状況を確認していたロロもあっけにとられていたが、すぐに再起動した。


【っ、主様の生体反応をすぐさま確認!!取り込まれはしましたがHPは0になっておらず、他ステータスの影響は…いえ、これは…】

 グレイ号に備わっている分析センサーは改良が進められており、今までの得体の知れないものの遭遇率の高さゆえに、特殊な計測器も備え付けられている。
 相手が寄生生物かもしれないということで、その血液から神経、ありとあらゆる部分に侵食していないかなども測定できるのだが…

【…黒き女神内部コードへの接触反応…!!グレイ号、主砲特殊砲弾コード0076装填し、即座に砲撃してくだサイ!!】
『内部にまだいる状態で!?』
【問題ありまセン!!私が主様への害になるような砲弾を使用する許可を与えるわけがないのデス!!これは特殊な分解…説明している暇は無いので、早ク!!】
『りょ、了解!!砲弾争点、弾道計算、即発射!!』

ズドン!!

 エネルギーではなく実体を持った、特殊砲弾が撃ちだされ、黒き女神を取り込んだピンクダイヤ…いや、今は空中で大きなピンク色の塊となった何かにめがけて突き進む。

 ジュエライツベアーであった、潰れた眼球のような状態になった宝石獣たちの集合体も同じ場所へ目指して動き…それらが混ざり合って着弾した。

ズドォォォォォォォォォン!!


 凄まじい大爆発が起き、爆風が吹き荒れる。
 プレイヤーたちの何人かは吹き飛ばされつつ、根性で踏みとどまったと者たちは目撃する。



ボッ!!
『ジョボゲェェェェアアアアアア!!』

「あ、あれはあの眼球…声が、あの変な感じの奴に戻って、スライムの様な巨体となって落ちてきたぞぉぉ!!」


 まず、爆発によって生じた煙から墜ちてきたのは、デロデロになった水に浮く油のような色合いになった宝石獣だったものらしいもの。
 着弾によって生じた爆発に至近距離で巻き込まれたらしく、ずいぶんズタボロの状態だろう。

 そして、続けて落ちてきたのは…黒き女神。


「----ひゅにゅぅ」
「は、ハルっ!!」


 衣装が少々ボロボロになった黒き女神。その姿を見てミントが素早く動く。

ヒュルルルル…
「どっせぇぇい!!」
ガシィ!!

 落下してきた女神をミントが受け止めきる。
 どういう状態になっているか確認すれば、目のあたりがぐるぐるマークのようになっており、見た目通りの状態異常が目に見てとれた。

「あ、あれ、ミーちゃん…ひゅにゅぅ」
「『大酩酊状態』?…少し経てば気が付くけど、この状態は…」

 HPの減少などはないようだが、衣装が少々ボロボロになっている。
 黒き女神として傷つくことはあまりなかったが、何かに酔ったかのような状態になっており、しばらくの間動けないのは間違いない。

 あのダイヤによってダメージを負わされたというわけではないようだが、何か受けてしまったようだ。

 そして、その肝心のダイヤは…


『-----』
「…あれは」

 上を見上げれば煙が晴れ、ピンクダイヤの現状が確認できた。

 特殊砲弾が直撃し、ひび割れた卵のような姿となっており、今にも砕け散りそうだ。
 だが、中身が空っぽとでもいうわけではなく、何かがあるように見える。
 
 もっと、中身を見たかったが…気が付けば次の瞬間、その姿は消えていた。


「消えた…一体、どこに」

 消失したピンクダイヤが気になるが、今はこのハルの状態異常を治す方が先決だろう。

 戦場はマリーたちに任せつつ、ミントは素早く動いてグレイ号の艦内に駆け込む。

「ロロさん、ハルの確認を!!」
【言われなくても、準備できていマス!!医療室へ!!】

 既に状況を把握していたので準備はできており、すぐさまハルは艦内の医療室で治療を受けるのであった…



ドボォォォン!!
『オゴボボボ!?』
「ロロさん、何この液体?前に、冥府の女帝さんに漬け込まれたものに似ているんだけど…」
「近いですネ。こちら、オンライン用の神系スキル所有者に対して効果を高めるための素材として、冥界の湖の一部を使っているのデス」











…女神が治療を受けていたその頃。
 現実世界のある場所…宇宙空間。

 いや、一度はそこに彼/彼女が来たことがあるからなのか、読み寄れたその縁を利用してソレはたどり着いていた。

『…』

 ぼろぼろになったピンクダイヤ。
 けれどもそれはあくまでも表面だけであり、その中身は存在している。

 特殊砲弾の一撃で無理やりはがされたために、損傷を受けたが…それでも、もう充分読み取っていた。


 ほんのわずか、この場所で眠るだけでいい。
 ある程度得た力で回復力を得ており、ガシャンっとその外装が崩れ去ると主に、中から出てきたモノは月の表面に倒れこみ、岩肌に過ぎない大地なのに、まるで沼地に沈むように潜り込んでいく。

『…だいぶ、出来た。でも、まだ…だね』

 たどたどしく口にして、そのまま何もなかったかのように、月の表面から消え失せる。
 
 その光景を見ていたものはおらず、誰も気が付かないのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...