アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.0-10 宝石の獣

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『『『ジョルゾゲェェェェェェ!!』』』

 空気が震えるような咆哮みたいだが、実際には頭の中に直接響くような声を上げる、宝石のような外見をもった化け物たち。

 モンスターの鳴き声とはまた異なる異質さがあり、一体だけではなく数多くの姿が確認できる。

 何かしらのイベントなのか、はたまた何かのバグによる異常個体なのか、その真偽はまだわからないが、明らかに敵対しているのは分かるだろう。

「スタッフ!!お客様の安全を第一に、防衛の陣へ!!」
「いえ、こちらこそ守られるだけではなく、この癒しの空間を守るために戦います!!」
「せっかくもぎ取ったこの癒しの時間を、場所を、崩させないためにも!!」
「あのパワハラくそたっれ上司を訴える前の癒しのひと時を邪魔されないためにも!!」

 相手の正体がわからずとも、ここに集っているのは多くのプレイヤーたちであり、このような事態になっても迅速に動き始める。

 よっぽどこの癒しの場所を守りたいのか、即座にフル装備になる人も見られるだろう。

 その気持ち、よーーーーーーーくわかる。

「ミーちゃん、僕らも戦闘態勢を!!」
「ハルとのモフモフ癒し時間、邪魔されたことは万死に値するからね!!」

 言いすぎなような気もしなくは…いや、そうでもないか。
 せっかく延長料金を支払ったりして、まだ物足りないというのに、それを邪魔されたら怒りたくなるのは理解できる。

 なので、僕らも全力で相手をするのもありだろう。

「テイムモンスター総出撃!!ロロ、グレイ号をこちらへ回して、遠距離から全力砲撃を!!」
【了解デス!!】

 未知の相手だし、何か嫌な予感がする。
 そのため、例え過剰戦力の可能性があっても油断せずに動こうと思い…その予感は的中した。



『ジョルゲァァァァア!!』
『ジゲバァァァァ!!』
「うっそだろ!?こういう宝石みたいなのって燃えるかと思ったら、火の耐性があるのかよぉぉぉ!!」
「砕けやすいって話があるはずなのに、打撃が通用しないどころか拳が砕けてダメージがぁぁ!!」

『ボルゲェェェl!!』
「おいおいおいおいおい!?極太レーザーが発射されたぁぁぁ!!」
「ひでぶぅぅぅぅ!?課長の禿げ頭以上の発光に目がぁぁぁ!!」

 阿鼻叫喚の地獄絵図とは、こういうことを言うのだろうか。
 多くのプレイヤーたちが攻撃を与えているのだが、まともにダメージが入った様子もなく、抗戦によって薙ぎ払われたり、吹き飛ばされたり爆破されたりと悲惨なことになっている。


【オォン!!ダメ、火炎放射が通用しない!!】
【毒も効果ないようだシャゲ!!】
【ユッキィィィ!?雪兵たちが、一瞬で蒸発したぁぁぁ!!】
「こっちもだめか!!」
「相手の耐性が、馬鹿みたいに高いんだけど!?」

 他のプレイヤーたちと同じように、僕らも不味い状況になっていた。
 宝石のような見た目からして定番の攻撃やその他状態異常を仕掛けているのだが、効果がほとんど見られない。
 
【ふむ…主様、状況としては非常に不味いデス。あの宝石のような化け物たち…仮称、宝石獣とでも致しましょうカ。彼らの耐性に関して、分析が出来まシタ】
「結果は?」
【通常火力では、まともなダメージは期待できないようデス。あの宝石ボディに何か仕掛けがあるのか、各属性攻撃及び状態異常系に関して、かなり高い耐性を持っていることが確認できまシタ。例えるのであれば…某超絶逃げ足の速いカッチカチのスライムより上の耐性と体力を有しているというべきでしょうカ】

 その例えの時点で、この化け物たち…宝石獣と呼ぶことにした奴らが、どれだけやばいのか理解させられるだろう。
 分析によるとグレイ号の砲撃すらも効果が薄いようで、先ほどから何発か着弾してもらっているのに効いた様子がないのが実証している。

【エネルギー系は、ほぼアウトのようデス。そのため、実弾で試していますが…特殊砲弾が今のところ、何とかダメージを与えられているでしょうカ】
「特殊砲弾?何を使ったの?」
【試作型特殊砲弾298号…確か、暗黒星雲のガスを加工したものデス。強力な腐食性を有したものですが、そんなにないのデス】
「腐食性か…」

 マリーの毒であれば、似たようなものが作れないこともない。
 ただ、それだけでは威力が足りなさそうで、より強力にするのであれば…


「…仕方が無い、このモフの楽園を守るためだ。女神の力を使うか」

 黒き女神の力を使って、より増加させた腐食性の毒液を放射するしかないだろう。
 ただし、まき散らすようなことになれば周辺への被害は避けられず、場合によっては撃退できたとしてもこの地が二度と使い物にならないものになる可能性もある。

 だからこそ、よりピンポイントで相手を狙えるような工夫も必要になるだろう。

「それだけの強力なものを詰め込んで、投げ当てられるようなもののほうが良いか…作り方もそこそこお手軽なものだとすると…ニガ団子に、加えれば良いかな?」


 狂腐食性ニガ団子とでも名付けるべきか。幸いなことに、数多くのプレイヤーたちによって開発されたレシピの中には、求めるようなものに近いニガ団子の作成方法もある。
 なんでそんなものを作った前例があるんだとツッコミを入れたいが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 このモフモフの天国を死守するためにも、相手の数に素早く対応できるようにすぐさまグレイ号の内部にある生産工場設備へと向かうのであった…


「あ、でも流石に強力すぎるものを作ると、グレイ号の設備自体が溶けかねないか?」
【そのあたりの対策は大丈夫デス。濃硫酸の海に突入し、どこからか浸水しても大丈夫なように艦内のコーティングは徹底的にしておりマス】

 そんなシチュエーション、絶対に遭遇したくない。
 むしろ、そういう事態を想定できている時点で、そんな場所もあると示しているようなものなのだが…うん、まぁ、自ら向かうようなことはない…よね?
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