アルケディア・オンライン ～のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです～

Ver.6.0 ～揺らぎと蕩けと混ざる世界～

ver.6.0-7 胃痛は人を巻き込んでしまえと叫び

…何気のない、いたって普通の朝になるはずだった。
　朝食をとって、適当にだらだらと過ごし、昼頃には返ってくるミーちゃんと一緒にアルケディア・オンラインにログインして楽しむだけの、何の変哲がなくとも楽しい休日になるはずだった。

　だがしかし、そういう普遍的な日常の一コマのようなものは、別の要素が入ってくることであっけなく崩れることもある。

　そう、今まさに目の前にある物体が全力疾走で叩きつけてきたかのように…


「…わーお、本当に実態があるというか、本物だ、これ。重みや感触がしっかりとある…って、何でこれがここにあるんだよ！？」
【残念ながら、私の分析ではわかりませんでシタ】

　しゅんっと落ち込みつつ、そう答えるロロ。
　彼女が答えようがないのであれば、その理由を探るのは難しいだろう。




　朝になって目覚めて早々、物凄く申し訳そうな顔をしていたロロ。
　普段何かと冷静な表情を見せている彼女がそんな顔をするのが珍しく、何事かと思って声をかけようとして…その前に置かれていたものを見て、どういうことなのか嫌でも理解させられた。

「何をどうやって、このピンクダイヤモンドがこの現実世界に出てきているの…」

　そこにあったのは、昨晩入手したはずのピンクダイヤモンド。
　オンライン内の世界で保管しており、ミーちゃんが帰ってきたら見せようと思っていたのに、何故かこの現実世界に存在しているのである。

　幻とか立体映像、その類だと思い込みたかったのだが…残念ながら、堂々とここに存在していることは変えられない事実らしい。

「何か、運営のほうでバグでも起きたとかそういうことじゃないよね？」
【その様子は無いようデス。急遽確認したのですが、原因不明で…現在、調査中となりマス】

　僕が起床する前にロロがこの事態に気が付き、素早く解決しようと動いたようだが、かなり難航しているようである。


　彼女が頑張っても、不明なダイヤ出現に関する情報…絶対に何かしらの面倒ごとの予感しかしない。
　ミーちゃんにはスクリーンショットで見せて、早々に売却するという手段を使えばよかったと思うが、後悔するのが遅い。
　いや、むしろ手元から無くしても、ここに出てきた可能性は十分あったかもしれない。




　とりあえず、ここでああだこうだと後悔していても仕方が無い。
　今はただ、目の前の厄介事をこれ以上増大させないように動かなければいけない。

　こんなもの、まともに人の目に触れるようなところに置いたら、どうなるか…貴重なことを考慮すると、想像するのが容易い。

「ロロ、金庫か何かないかな？先にこれ、どこかにしまって隠しておかないと」
【金庫なら、ここの壁にありマス】

　ここんっと壁を叩けば、そこから出てきたのは隠し金庫。
　何でこんな仕掛けがあるんだとツッコミを入れたいが、ダイヤよりはまだマシか。

「ここに入れて…暗証番号もセットされているのか？」
【番号ではなく、生体反応感知式デス。偽装されにくいもので、防犯対策としてはそこそこ有用なものにしておりマス】
「そこそこなのか」
【そこそこなのデス。残念ながら、どのような防犯手段を開発しても、後からそれを破る人が出てきて来ますからネ】

　いたちごっこになる話はともかく、一応この金庫であればそう簡単に誰かが盗みだすこともできないらしい。

　しばらくの間はここにダイヤをしまっておくとして…あとは、どうするかが問題である。

【ひとまず、私のほうで現実からオンラインの世界へ戻す手続きを行いますネ】

　既に列車が行き来している以上、戻せないわけがない。
　とはいえ、個人的に使うには色々とあるようで、今回は特例の様なものなのですぐに許可が下りるだろうが、再びここに出てくる可能性がある以上、対策も同時に行う必要もあるため、その準備に少々時間がかかるようだ。



　突然物理的に転がってきた面倒ごとの種だったが、どうにかこうにか大きくなる前に押し込めたようだと、安堵の息を吐くのであった…


「…この金庫以外にも、他にも隠し○○のようなものってあるの？」
【それは…まぁ、色々とデス】

…こっちはこっちで、どうにかしないといけない気がする。いつの間に、増やしているんだよ…