上 下
552 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.2-134 影響ないと思ったら

しおりを挟む
「へーい、お久しぶりに来ちゃったわ☆」
「…軽い挨拶というべきか…いや、それよりも何故…前妖精女王が来たのですか」

…休日早々、珍しく朝早くからチャイムが鳴った。
 来客の予定とかはなく、本日は一日中ミーちゃんとオンラインで遊ぶ予定だったので迷惑だなと思っていたのだが…その予定が吹っ飛びそうな相手が訪れていた。

 誰であろう。奴である。
 かつて、妖精郷で婚活の沼にはまりまくり、やばい結界を張ったり悪魔と天使を狙っていたりと様々なことをやらかしつつ、最終的にはどこかの星の宇宙人と結婚し、ネアを新妖精女王として一任して、郷から出ていった…前妖精女王。

 今は次代に切り替わり、郷自体も神域となってかなり変わってから見ることもなかったはずなのだが、何故かその女王本人が物凄く久しぶりに、この現実の世界の我が家に来たのだ。

 以前来訪されたときは、夫となっていた宇宙人のゲシュタリアタコン星人がいたはずだが…どうやら本日は都合がつかなかったようで、一人での来訪になったとのこと。
 オンライン上の存在がどうして現実世界に来ているのかはツッコミどころがあるが、ソレに関しては何やら現実世界とつなぐ不思議な列車が存在しているとかいう話を聞いているので、何もコメントする気はない。

 まぁ、現実世界へ出ることに関しては、僕らの方も前にやらかしたからなぁ…気にしたらきりがないのでやめておこう。




 そんなことは地平線の彼方まで全力投球するとして、気になるのはこの来訪の目的である。
 わざわざ、一般人の家に、すでに引退したとはいえ仮にも女王だった人が来るような用事があるのだろうか。

「一般…人?」
「ミーちゃん、気にしたら駄目だよ」

 一般の、一介の、何の変哲もないはずのただの人間であるはず。
 
【【【【一般…人?】】】】

 そこ、ロロも箱庭のマリーたちも同じような声を出さない。
 そろって何を同じ目で見るのだろうか。


「ああ、そうそう、ここに来た理由ね。女王をすでに引退した身とはいえ、郷のことに関しては色々と情報が入ってくるんだけど…特に妖精に関しての情報で、最近あなたが妖精になったって報告を受けて、気になって来ちゃったのよね」
「情報早いな!?」
「妖精ネットワーク、舐めないほうが良いわよ。見える姿になっているときもあるけど、実は普段見えない姿で漂っていることもあって、思いもがけない場所で目撃することもあるからね」

 何ソレ、妖精怖い。


「それにしても、あの世界の中でなのね…うーん、ここでも妖精になっている姿をみたいんだけどな~」
「流石に、妖精化のスキルを得ましたけど現実で妖精になるわけないですって」
「でも、女神の姿にはなれるのよね?」
「その情報も妖精から?」
「そうよ」

 本当に、どこまで把握されているのか。
 過去の記憶としては、暴走婚活モンスターとしての印象のほうが強かったが、だてに女王をしていなかったというべきなのだろうか。


「残念、ここでも妖精になれたらどういう姿なのかすぐに見たいのに…どうしてもなれないの?」
「無理無理、女神はどうしようもなかったけど、妖精化に関しては完全にスキルの方だし、現実世界でなれるわけがないって」

 女神になれること自体がおかしな話だが、不可抗力の末に生まれた特例の様なものなので、問題外の話になる。
 妖精化に関しては、アイテムを使用した完全に後天的な付け加えの様なものになっており、いくらなんでも現実世界で妖精になれるわけがない。

 もしもなることが出来たら、その姿で町内一周をしても良いぐらいだろう。


「うーん、そう思っているのね…なら、こうすれば良いのかしら」

 ふと、そう思っている中で前妖精女王は僕の方に手をかざし…

ぴんっ
「いたっ」

 ぐっと指を曲げ、デコピンをあててきた。

「んーあっちとは違う感覚だけど、うまくいったわね」
「うまくいったって、何が?デコピンで人をどうにかして、」
「前妖精女王だけど、ちょっとした強制はできるはずね。えっと、『妖精にな~れ』」
「いや、話を聞、」

ぼうんっ


「「…は?」」


…勝手に話を進めて、把握しきれない。
 そのため、ツッコミを入れようとしたが言い切る前に煙が発生し…すぐに晴れて出てきたその姿に、僕とミーちゃんは間抜けな声を漏らした。


 無理もないだろう。だってその姿は、現実世界では無理だと思っていたもの。
 しかしながら、相手は引退したとはいえ相当な実力を持っていた妖精女王だったというべきなのか…何をどうしてなのか、身を転じさせられてしまった。


 何に?…むろん、オンラインの世界の妖精の姿である。

「やったわ、成功ね。へぇ、無性のようだけど結構可愛らしいじゃない」

 ニコニコとほほ笑みながらそう口にする前女王に対して、僕らはあっけにとられてしばしの間、何も発することが出来なかったのであった…


…しまった。もしやこれ、先ほどの発言がフラグにでもなった?
 え、でもそうすると、まさか。

「町内一周も、これで出来るわよね」
「何、心を読んでいたうえにやらせようとしているのかなぁぁぁぁぁぁ!?」
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...