上 下
536 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-閑話 観察者

しおりを挟む
―――アルケディア・オンライン。
 その世界では・・・・・・VRMMOとして認識されており、日々多くのプレイヤーたちがログインして入り込み、日夜楽しんでいるものである。

 オンラインゲームだからこそ、世界中の様々な国で親しまれて、中にはオンライン内で他国との交流を深めるなど、現実世界でやろうとすればそれなりの費用が掛かることだとしても、ある程度削減して済ませるなどの活用を行う人もいるだろう。


 先日のコスプレイベントがその最たるもので、現実ならばコスプレ衣装、移動費等の様々な費用も、ゲーム内であればゲーム内の通貨で抑えたり、現実では厳しいコスプレも難なく着こなすことが出来るなど、ゲーム内ならではの利点を活かしていた。

 それと同様のことを、例えジャンルが異なろうとも、現実では得られないこの仮想現実の中で数多くのイベントを他のプレイヤーたちも行い始めた。

 普通ならできない。でも、ここならばできる。
 アルケディア・オンラインが稼働した当初は料理のほうに目が向いていた人も多かったようだが…時間も経ち、アップデートされて様々な要素が盛り込まれれば、それだけ対応した人たちがより適した形で行えるようにと動くのは当然のことだったかもしれない。

 その分、数多くのデータが出てくるのは、運営側からもプレイヤー側からしても、現実ではどうなるのかという経験に活かしやすく、積極的な活動を行うのは両者にとってありがたいことであった。





…そう、それが例え、他の立場にいる者たちから見てもだ。
 直接的な影響がなくとも、人がそれに捧げる情熱があるのならば、それは自然と伝播していく。

 分かり合える者たちがいるからこそ、国を生まれを問わずして、垣根を越えてしまうのだ。





 だが、逆に言えば分かり合えない者たちも同時に存在しており、超えてきた者に対しては排除に姿勢を取るか、あるいは都合の良い様に変えようと動き…



「…だからこそ、良からぬ輩も出てくるのか」

 ごうごうと目の前でブレスで焼き払われているものを見ながら、彼はそうつぶやく。


 世界の垣根を超えるのは、別に妨害する意味もなく、勝手にして良いだろう。
 けれども、その掛値を超える中で迷惑を…それも世界を揺るがしかねないような輩が出た場合は、こうやって潰さなければならなくなる。


「よいしょっと…おーい、大丈夫か、そこのオーク」
【ブブモモ…手間を、かけさせたようでかたじけない…】

 燃えさかるものの中、がごんっと掘り起こした玉。
 その中には、この輩によって囚われていたというオーク…世界広しと言えども、珍しく高潔な魂を持つオークは答える。

【どこのどなたかは知らぬが、助かった…。危うく、世界を滅ぼす兵士たちを生み出す糧にされるところであった】
「正直言って、オークの大群で世界が滅びるなら、様々な異世界がヤバそうだけど…うーん、ここの者に限っては、何とも言えないなぁ」

 何にしても、悪しき企みはついえただろう。
 違うな、これは企みというよりも、実験に近いものがある。

「…どちらかといえば、手を出せるかそうでないかの、確認のためにやってみたことか」

 滅ぼしたりするのはこのオークを利用した者にとって、ついでにやれないかという興味で引き起こされたものの様な気がする。
 実験し、手を出せるついでに証拠隠滅も兼ねて考えていたのだろうが、何とも迷惑な話だろうか。

 まぁ、既にその行動は抑えられているが。
 オークを利用したコピー施設は崩壊しており、その大本の元凶は現在、位置を捕らえられている。
 あとは後片付けのために関係者が向かうだけであり、ここでの目的は果たしたと言えるだろう。


「良ければ、そちらの主の元まで送り届けようか?」
【ブモ、いや、別にそこまではいらぬ。解放されれば、すぐに送還できるからな】

 最後まで手を貸す必要もないようで、問題もなさそうだ。
 見た感じ、本当に珍しいタイプの魂の持ち主であり…だからこそ、変態共の世話役に回っているのはもったいない気がするのだが、制御できねばアレはアレで世界に大迷惑をかけかねないものだという情報はもらっているので、止めることもない。

「時間が空いたし…そうだな、せっかくここへ来たんだ。少しばかり暇つぶしのために、ここの星々をめぐってみるか…」



 面倒ごとの種は潰し、しばらくは平穏になったと言えるだろう。
 ならば、帰る前にちょっとばかり、ここで遊ぶのも悪くはない。

「それに、気になることもあるし…そちらにも、顔を出してみようかなぁ…」

 オークの方から感じ取れた、ある神の類の気配。
 眷属ではなく、激突した形跡があるようだが、悪意をもってぶつかり合ったものではなく、真剣勝負で残されていたものが感じ取れていた。
 その気配が少々気になり、彼は翼を広げ、辿ってみることにしたのであった…

しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...