アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-113 注文しておいてよかったと、思えた瞬間

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…突如として女神の結界が破壊されて、混沌と化したコスプレイベント会場。
 これがまだ、まともな格好のプレイヤーたちが集う場であれば、普通の混乱した光景が広がっていたことだろう。

 だがしかし、世の中そう都合よくはいかず、コスプレ集団だったために…

「おっぎゃぁぁぁ!!足ふまれたぁぁぁ!!」
「うぉいうぉいうぉい!!剣がガンガンガンガン当たるぅ!!」
「ひげぇぇ!!スライムまき散らしたの誰だぁぁぁ!!」

 コスプレ用の装備品として、各自がオンラインの世界だからこそ、素材からこだわっていたらしい。
 それゆえに、混沌とした状況で逃げ惑う人々の中で、コスプレから剥がれ落ちたものによってさらに場は混乱していくだろう。

「と、とりあえずこの場は危険そうだし、いったん人がいない場所に逃げようか!!」
「でも、この状況でどうやって逃げるの!!人で込み合っているから、厳しいような」
「大丈夫だよ、ミーちゃん。事前にロロに注文しておいた音声認識変形機能を使って…えっと、『モードチェンジ、ロコモーティブ』!!」

 音声認識と同時にガゴンっと着ていたジョー・キ・オーの装備が変形を行い、人型のメカの姿から、劇中で見せる機関車の姿へと変形を行う。
 着用者の肉体も無理やり動かしそうだが、ある程度の余裕を持った変形機構が設計されており、装甲部分と内部スーツの間に特殊な樹脂が蠢いて、姿勢をあまり変えることなく人型サイズの小さな機関者へと変形を完了させた。

「ミーちゃん、操縦席部分に乗って!!このジョー・キ・オー、小型魔導エンジンを搭載しているから、操縦できるよ!!」
「できるの!?って、それだとハルはどうするの?」
「あー…うん、まぁ実はこれ、他人が乗らないと動かせないんだよね…」

 変形の再現性及び着用者の身の安全を両立させようとした結果、残念ながらロコモ―ディブモードとの時は、他者の操縦がなければ身動きできないものになってしまった。
 けれども、ミーちゃんと一緒に今回のイベントに参加するから、撮影等も動く必要性も薄いのでそこまで気にするようなものではなかったのだが、世の中どう動くかわからないものだ。

「えっと、マニュアルだと…機関車の姿だけど操縦方法は車と同じ。小型ジェットで上下移動の飛行能力もあるけど、30分だけしか動けないみたい」

 原作ではより長く動いていたが、コスプレのサイズに合わせてサイズダウンをした分、活動可能時間も減少したらしい。
 コスプレイベントの場において、長時間ロコモーティブで稼働することを考慮していないので当然のことだろうが、それでもこの混とんとした場から少しだけ離れるのには有効なはずだ。

「なら、動かすよ。ジョー・キ・オー、ロコモーティブモード、蒸気出力100%!!」
「「発進!!」」

 ポォォォォォォっと汽笛を鳴らし、車輪が回転し、進み始める。
 それと同時に車体下部からジェットエンジンが噴射し、少しづつ浮き始める。
 
 本当は半重力エンジンとかで浮くらしいが…ロロ曰く、現在のサイズで行うには変形機構と邪魔になる部分があり、代用としてこちらにしたらしい。
 一応、可能といえば可能だが、もしも組み込んだら腰が270度曲がることになったとか…曲がる前にへし折れるな…。





 ある程度人込みから浮き上がり、巻き込まれずに進むと同時に、より周囲を見渡しやすくなったことで、どういう状況になっているのか確認しやすくなっていた。

「見た感じ、空から何か光線が降り注いでいるみたいだよ。かなり強力そうだし、黒き女神の結界も破損するのが分かるね」
「流石にこれだと、きつそうだしなぁ…あれ?でも、なーんかあの攻撃どこかで似たようなのを見たことがあるような…?」

 戦艦の主砲クラスのエネルギーが撃たれているようだが、何故か記憶に引っかかる。
 同じようなヤバいものがここ最近多かったせいで、候補が絞り切れないのだろうが、それでもどこかで見たことがあるような気がする。

 避難しながら思い出そうとしていたその時、ある光景が見えた。


「ぎぇぇぇぇ!!やばいやばいどうするだべぇ!!」
「おほほほほほやばいわねぇ!!やばいわねぇ!!」
「逃げるしかないんだーぜ―――!!」

「…ん?アレは…グランプさんやオハナさん、ギターマンさん!!」

 逃げ惑う人々の中、かき分けるようにするプレイヤーの中で、知り合いを見かけた。
 ぽっけねこさんとの関係でパーティを組んだこともある、前線・攻略組の3人。

「ミーちゃん、あの人たちを回収して!!」
「わかったよ!!」

 大勢までには手が回らないが、目に入った知り合いは助けたい。

 しかし、彼らにまで到達する前に、空からのエネルギーは容赦しなかった。



ズォォォォォォゥ!!

 何度も降り注ぐ光線の一つが、彼らの頭上へ迫りくる。
 慌てて助けようとするも、この距離では間に合わない…そう思った時だった。


ギュンッ!!
「「「ほべっ!?」」」

「え?」
「あ!!」

 何者かが急に彼らへ接近し、何かを巻き付けて引っ張り上げる。
 間一髪のところで回避し、そのままこちらへ向かってくるのは…黒き女神。

「良かったギリギリセーフ!!」
「ナイス、ハルの黒き女神!!」

 通信が取れない状態だったので、どうやって合流するかが悩みの種だったが、ここにきて女神の力が戻るのは非常に助かるところ。
 だが、様子がおかしい。


「ぐっ…!!も、もう限界!!」
バシュンッ!!
「え?」

 彼らを引っ張りながら気が付いたようにこちらへ向かうが、何やら外見が非常にボロボロだった。
 そのまま到着したかと思えば、すぐにその姿が消え失せる。

―――
>御礼分身ランプの破損を確認。
>スキル「黒き女神」へ、重度のダメージを確認。
>ランプの機能停止及びスキル停止へ移行。
>全ステータス。スキルが戻ってきますが、黒き女神の損傷状態が激しく、自己修復が完了するまで使用不可能となります。
―――

 続けて出てきたログにより、何が起きたのか察する。
 どうやら結界の破損か、あるいはあの光線に巻き込まれでもしたのか、相当なダメージを受けており、結構ボロボロになっていたようだ。
 スキルが消え失せるなんてことにはならなかったようだが、女神の力が引き続き使用できないというヤバい事態は続くようであった…



「…女神のスキルがダメージを受けるってことは、確実にやばいだろ、アレ」
「まだまだ降り注いでくるから、今は逃げないと!!」
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