アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-111 色を混ぜすぎると混沌として

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…コスプレ道とは奥が深いらしい。

 まぁ、入り込み過ぎたら戻れなくなりそうなのもあって、ある程度のところで楽しむ方が素人にとっては良いのだろう。

「そもそも、ここまで重装備だったり奇想天外なものができるのは、このオンライン限定というべきか…現実でやれないからこそ、無茶苦茶なものに挑むのかもなぁ」
「あとは普通に、材料費などのコスト面も問題になりそうだよね」
「…現実だと、同じようなものを揃えるだけでもどれぐらいかかるのだろうか」

 色々と思うところはあったが、それでもこのコスプレイベントは今、普通に楽しめている。
 今までのイベントはないかと戦闘が多かった分、今回はプレイヤー主催のイベントということもあってか、平穏な時間を過ごせているだろう。

 余計な邪魔が入らないように、徹底的に裏から手を回しまくったのもあるが…その努力のかいもあってか、今のところは何も起きていないというのは非常にうれしいことだ。



 だがしかし、それでも油断はできないだろう。
 念のために、グレイ号を会場から離れた場所で臨戦態勢で待機させており、何かあり次第遠距離から主砲やミサイルで瞬時に屠るように命じている。
 こういうことが出来るのも、グレイ号が魔改造されて自立して稼働できるようになったというのもあるが…何にしても、本日のこの平穏な時間を邪魔するものがいれば、それは瞬時に塵と化す…いや、塵すらも残らないものになるだろう。
 
 黒き女神の結界もばっちり張り巡らせており、アリの子一匹すら入ることもできないはず。
 悪意ある輩やそうでなくとも面倒事を起こすような可能性がある者たちが入れないように徹底しており、何事もなく過ごせるようになっているはずである。

「空間跳躍してくる可能性も考慮して、一部マリーンズには次元潜航で待機・狙撃許可しているし、黒き女神の使い魔の能力を発揮させてマリーたちにも動けるようにしているし…それでも、ここで気を抜くことはできないな…」

 楽しみつつも、肩の力が少々入る。
 ジョー・キ・オーの内部機能でレーダーもつけてもらい、万が一に備えて動けるようにしているとはいえ、これまでの経験上何事もなく済んだことは無いので、初めての平穏無事に終わる事例を作り上げるために、努力をすることは惜しまないつもりだ。

「ふふふ、こうやって平穏に過ごせる事例を積み重ねて、平和な生活を得るために動くのも悪くは無いな…」
「ハル、ちょっと黒い部分出てないかな?黒き女神のスキルが分離しているのに、黒い部分が見えている気がするんだけど」
「そこはまぁ、スキル関係なく元からというべき…ん?いや、そうなのかな…?」

 本質的なものだと認めて良いことなのだろうか、コレ。
 これまでいろいろあったからこそ、何事もなくできるように経験を活かして動いているだけなのだが、そんな黒い思いはなにも抱いていないはず。
 しいて言うのであれば、備えているとはいえ万が一にでも欲望戦隊とかがほんのわずかにでも出てこようモノならば、見敵必殺サーチ&デストロイ…いや、何も残さず消し飛ばそうとかは思っているぐらいだろうか。



 とにもかくにも、やや思考が物騒な方向になっているようなので切り替えつつ、今は楽しむ方へ意識も集中させる。

 こうやってコスプレをするのも良いが、他の人たちがやっているのも見て楽しむのもこのイベントの醍醐味というべきだろうか。
 自分では思いつかないような工夫で、可能な限り再現を目指す人も感嘆に値するし、色々と別のことに生かせそうなのもあるだろう。

「それにしてもジョー・キ・オー系以外にも他のアニメやら漫画やら、あるいは名のあるプレイヤーのコスプレをする人が多いなぁ…」
「あのあたり、女帝さんのコスプレじゃない?」
「凄いな、三位一体で巨大な恐竜になっている人もいる。あっちはお城にピラミッドに…いや、何あの合体コスプレ?魔改造建築物体のコスプレってコスプレの枠に入るの?」

 一人でなるコスプレには限度がある。
 ならば組体操のごとく一緒になることで、再現度を高めようとする人もいるようだ。
 ロボット系なら合体もお約束かもしれないが、それでもやるだけの努力を積み重ねるのはすごいだろう。

 ちらほらと見れば、思いのほか合体系に挑んでいる人も多いような…ん?


「…見なかったことにしよう」
「何を見て…ああ、なるほど」

 ちらっと見えてしまったその集団を見て僕がつぶやいた言葉に、一瞬疑問を浮かべつつもミーちゃんもすぐに理解したらしい。




 何を見たか。

 コスプレの場所だが、漫画やゲームのものばかりではなく、有名なプレイヤーの姿をまねている人もいるこの会場。

 ある程度の存在の可能性を予想していたとはいえ、それでも実際に目にする分、精神的に来るものがある。


…そう、そこにいた集団とは、黒き女神のコスプレをした集団。
 第一形態や第二形態はもちろんのこと、以前変態共の手によってなっていたバニーの姿や、海の星でなった水着姿、後その他なった覚えのない姿でありつつもコラ画像のように当てはめているようにふるまうコスプレイヤーの集団を、目にしてしまったのだ。


 可能性としてはありえなくもないことだったが…何度もつぶやこう。
 メッチャ、精神に来る、と。



「しかも、無駄に再現度が高い…体を何かの仕掛けで浮かせていたり、蠢く黒布をスライムで変形させたりとか、こだわっているのがこれまた…」

 その似せようとした努力に関しては、多少の敬意と感嘆を抱くべきなのかもしれない。
 しかしながら、その元となった本人からすれば色々と複雑なものもあるだろう。

 平穏無事にイベントを過ごせていたとはいえ、精神的に少々危なげな嵐を垣間見てしまったようであった…












…複雑な気持ちを抱きつつ、目にしなければいいかとハルが気を取り直していたその頃。
 ある宇宙の片隅では…勇者が破れていた。

 女神と対峙し討ち破るほどの実力を持ったもの。
 だがしかし、相手はどうやらさらに上の力を持っていたようで、力及ばなかったのだろう。

【うぐぐぐ…こ、これは…ダメか】

 既に満身創痍であり、剣も何もかも折れている状態。
 このまま戦闘を継続することは不可能と判断し、その場から勇者は去る判断をする。

 持っていた緊急用のアイテムを使用したが…そこから、逃げることはできなかった。

 何故か。
 それは、相手の力が強すぎたというただそれだけの単純な話。

 勇者は破れ、その場に残されたものは―――――――何も、無かった…
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