アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-104 賊狩りは称号にあったりするが

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 盗賊、山賊、空賊、宇宙海賊…アルケディア・オンラインが基本的に平和なVRMMOとはいえ、様座な移動手段がある中で仕込まれている、賊による襲撃イベント。
 全てがNPCというわけではなく、モンスターが海賊になっていたり、プレイヤーが賊ギルドを作成してイベントを組んだりしていることもあり、単調な襲撃イベントになることはない。

 賊たち側も欲望に正直だったり、義賊のようなまねごとをしたり、PvPに自信がないから数で相手をしようと様々な事情を持っている。


 そのため、ある程度の狩る側だけではなく狩られる側になるかもしれない覚悟を持っているものもそれなりにいるだろうが…残念ながら、目の前の状況にまでされれば、覚悟も何もぶっ飛ぶだろう。


【フニャァァァゴォォォォ!!化け猫極大肉球爆裂『ミートボンバー』!!】
「ぐべぇぇぇぇ!?柔らかいもちもち感と反発する爆発がぁぁぁ!!」
【シャシャゲェ、『ポイズン・ミスト』】
「おべべべべべ!?体がと、溶けぇぇぇ!!」


「…うわぁ、ぽっけねこさんの玉五郎が相手を叩き潰すたびに、爆発で追加ダメージを与えるって結構えぐいな」
「ハルさんのところのマリーこそ、毒攻撃が強力になっているよね」


 はははと穏やかに話すプレイヤーがいる一方で、蹂躙される賊たち。
 モンスターに襲撃されるのは賊の稼業柄いつでも起こりえることだが、相手が悪すぎる。

「お前ら、全速で戦線を離脱!!こいつらから全力で逃げなければ確実に…」

「逃がすと思っているのかなぁ」
「コユキの雪兵召喚と、ぽっけねこさんのところの猫軍団ですでに取り囲んでいるからね」

 逃亡しようと試みた賊たちであったが、すでに逃げ場は失われていた。

「お、おおおぅ…こ、ここまでか…畜生!」


 この状況に絶望を感じ取り、床を強く叩いて叫ぶ賊…この海域において、かなり高額の賞金首がかかった宇宙海賊ヘブトック。
 高額な賞金首となっている宇宙海賊は、それだけの強さを表す一種のパラメータにもなっていただろう。


 だがしかし、僕らが手を組んで追い詰めたことで、海賊としては終わるのであった…









「…さてと、賞金首としては200万AL…うん、そこそこ?」
「この宇宙海賊船自体も、品質は悪くないよね」

 宇宙海賊を狩り終え、ひとまずの金額確認を行う。

 今回、ぽっけねこさんたちと一緒に僕らは宇宙海賊を狩ってみたが、思いのほかあっさりと片付いた。
 余裕があったので、この際どこまでやれるのかと思ってどんどん賞金額の高い宇宙海賊たちを狙ってみたが、意外にも狩りやすい。

 グレイ号が強いのもあるが、ねこさんたちの魔導船『キャッツァーリー号』の性能が高いのもあるだろう。

 レーダーとはまた別システムの索敵装置を備えているらしく、特殊な隠蔽装置が積載された船であっても、たちどころに見つけ出す。
 おおざっぱな探し方でもすぐに索敵を終え、たちどころに場所を割り出してはすぐさまワープで目の前に現れて一撃を与え…乗り込んでは殲滅する作業になっている。


「うーん、他の人との宇宙海賊狩りなんて事故的なものがあったとき以外は特にやらなかったけど…意外に経験値も高いのか」
「襲撃系の賊は、出来れば相手をしたくないと思うことが多いけど、いざ狩るとなるとそこそこ見返りが大きくなっていたりするように調整されたようだね」
「賊相手の撃退時の褒章などが、バージョンアップで調整されているのかも。それに、資源が不足している現環境で、賊からのドロップアイテムとかも中々おいしいよ」

 狩り終えたところで一息を入れつつ、確認しあってみたが思いのほか得られるものはあるようだ。

 しかも、狩りまくっていたせいか新しい称号も獲得している。

「わー、賊のくくりでカウントされているのか2種類同時にか…」
「『海賊狩り』は予想付いていたけど…『賊喰い』っていう物騒なものもか…」

 称号の効果としては常時発動で、名称が示す通り海賊狩りは海賊相手、賊喰いは賊の名が付くもの全般に対して、それぞれ30%のダメージが上昇するようだ。
 しかも、重複可能なタイプのようで、条件を満たせばさらに大きくダメージを与えることが出来るだろう。

 問題は、そこまで全力で潰したい相手がいるのかどうかになる。
 明かにオーバーキルになりそうな現状、さらに相手をすりつぶしたいのか、この世から消し去りたいのか、そこまでものは求めていない。
 むしろ、こういう「○○狩り」によるダメージアップ系の称号があるのならば、「変態狩り」とかはないのだろうか…誰に使うかは言わないが、いざという時に盛大にぶった蹴るはず。

 あ、でも「変態喰い」は嫌だな…名称がなんとなく別の意味になりそう。



 とにもかくにも、一通り確認し終え、次の賊をどこで狙うのか考えていた…その時だった。


【ウニャ?ウニャァァァゴ!!】
「ん?どうしたのニャンタマリン?」

 うねうねとうごめくタコの下半身を持つ猫がいななきはじめ、ぽっけねこさんが問いかける。

「どうしたの?」
「ニャンタマリンが叫び始めて…何かあるのかも。この子、この面子の中で、一番危機的なものに関しての勘が強いから、索敵関係なく安全確保のために連れてきているけど…」

 にゃごにゃごなく、タコ猫ニャンタマリン。

【ん?…ガウガウガウゥ!!こっちも何か、来るよ!!】

 と、ここでこちらの方も周囲の状況に関して人一倍鋭いリンも鳴き始めた。

 こういう状況下で、危険に聡い者たちが鳴き始めるということは、何かただ事ではないことが起きる可能性がある。

「リン、それはすぐにここに来るものか?」
【多分、でも、どこからかはわからないけど、着実に来る!!】
「なら、ここに居続けるのは不味いか…原因はわからないけど、全員すぐにこの海域から撤退しよう」

 嫌な予感を感じ取ったのであれば、それが的中するよりも早く、逃げればいい。
 これまでの経験を活かし、僕らはワープによって離れ…







…ハルたちがいなくなって十数秒後、その空間はわずかに揺らぐ。
 だが、何もいなくなっていることを瞬時に悟った何かは、何もしなかったのであった。

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