アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-98  反転攻勢

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『突撃戦法用ゴッデスメタル製ラム』
・グレイ号艦首艦艇部の特殊兵器格納庫ブロック02に格納されている物理攻撃用兵器。
・普通の巨大な衝角ではあるが、表面にビームコーティングが施されているため、光学兵器の類で破壊されにくく、そもそも使用されている金属が超硬度を誇るゴッデスメタルなため…
―――

ドッゴォォォォォン!!

「突っ込んでもへし折れず、むしろ相手をぶち抜くか…無茶苦茶だけど、逃げ切れるか」

 何度も何度も前に出てくる敵艦。
 どれだけ犠牲が増えようとも、ここまでの被害が出た以上確実にグレイ号を仕留めようという気迫が垣間見えており、その執念には驚かされる。

 だがしかし、進行を妨害しようとしても最後まで抵抗しても、前に出てきた時点でグレイ号のラムの餌食となって、無残に轟沈されていく。

 念のためにエネルギーリングによるシールドも張られているようだが心配する意味もなかったようで、相当強烈な貫通力を有しているのか次々と撃破し、突き進む。

『プレイヤーたちが集まっている安全圏まで、あと数分で到達。それまでに敵艦隊もだいぶ沈められそうですけれどネ』
「他の兵装と比べると原始的なのに一番効果的って…」

 いくら発展させていたとしても、原点へ回帰しすぎて物理で殴ればいいの理論で解決して良い話ではないが、実際にできてしまっているのだからしょうがない。
 無茶苦茶すぎるツッコミであったとしても、グレイ号のスペックを見れば十分すぎるほどの実績を現在進行形で積み重ねるとは、何が役に立つかはわからないものだ。


【まぁ、大体の包囲網を突破して、相手の数も減ってきましたし…どうやら戦意を喪失して逃げ始めた船も出てきたようですネ】
「本当にか?」
【ええ、レーダーで一部の敵艦が、現在の海域から逃亡を取り始めたことを確認できていマス】

 こちらを轟沈させようとする敵の執念は凄まじいが、少しでも時間が流れていけば、被害が目に見えすぎるがゆえに、生き延びようとして逃げる手段を取る船が出てきたようだ。
 いまだに徹底抗戦の構えを取る船は多く、逃げたとしても数えるほどしかいないようだが…それでも、こういうものが出てきたのであれば、そろそろイベントの終わりも近い。

 しかしながら、終わったとしても解決にはなっていない。
 途中で干渉してきた何者かの正体は判明していないし、一時的に退けたとはいえ、すぐに持ってくる可能性はあるのだ。

 そのため、可能な限りさっさとここから離れたいが…まだまだ数があるようならば、そううまくいかないだろう。

「とりあえず、ここまで距離を稼げたのならそろそろ…うん、包囲網自体もだいぶ減ったからこそ、後から追いかけてくる船のほうが多くなってきたか」

 レーダーで大体の敵の陣形が見て取れるが、変化してきたのが分かるだろう。
 大勢で取り囲んでいた陣形も、その囲いを突っ走ってきたからこそ後方から追いかけてくる船のほうが多くなる形へと変化しており、かなり後方に集まってきたようだ。



…ならば、勝負を仕掛けるのはここが良い機会か。

「ロロ、グレイ号の特殊兵装に…艦首からの強力な攻撃を放てるやつは装備しているよね?」
【ハイ。改良を施したので連射も可能にしつつ桁違いの威力を持つようになったものが…それを使う気でしょうカ】
「そうだよ。追いかけてくる相手が増えてきたのならば、後方に集中した分一気に殲滅できるチャンスだ」


 囲まれた状況では全方位に向けての攻撃をすれば、どこでも命中して相手に大損害を与えることが出来ただろう。
 だが、それでは相手をすべて倒すには足りず、倒しやすいように形を整えたほうがやりやすい。

 追いかけてきている敵集団へ向けて、一気に最大の火力をぶつけて消し去る。


「グレイ号、勢いそのまま180度転換、艦首決戦兵器の安全弁解除を!!」
『了解いたしまシタ!!慣性の法則そのまま、側面ブースター使用し180度転換!!」

 ぐぐぐぅっと突っ込んでいる勢いをなくさないようにしながら方向を変え、艦首を追いかけてきている敵艦隊へ向ける。

 このままブレーキをかけたほうが安定性をもって狙えそうだが、反動を打ち消すような措置をしなければ、砲撃と共に後方へ下がれるので問題ない。

『安全弁解除完了、エネルギーバイパス接続!!艦首ブロックを解除し、特殊兵器スタンバイ!!』

 ガゴンっと音を立てて、グレイ号の艦首が開き、兵器が出される。

『エネルギーリング前方部へ収束、砲身形成及び固定完了!!非常弁閉鎖及び対閃光防壁展開、トリガー用意』

 カタカタと操作盤を鳴らしつつ、撃つための引き金が出てくる。
 グレイ号自身が狙うようで、モニター上に敵艦隊の迫りくる様子が映し出されつつ、狙いを定めていく。

『発射シークエンス、省略。重力アンカー解除済、総員、砲撃後の反動に備エ!!』

『特殊決戦兵装「存在証明滅亡砲」モードで放出用意…発射ぁ!!』

 引き金が引かれ、それと同時に艦首から莫大なエネルギーが放出される。
 撃ちだすと同時にグレイ号が猛烈な勢いで下がるが、それだけ発射の反動が大きかったということになる。


 砲口自体はそこまで大きなものではないからこそ、撃ちだされてすぐは一直線のレーザーのようにも見えただろう。
 だがしかし、撃ちだす際に拡大するようにと仕掛けが施されていたようで、到達時には後方より追って来ていたはずの敵艦隊のすべてを飲み込むほどまでに広がり、そして消し飛ばす。




―――大きな爆発音が鳴り響くかと思われたが、それはなかった。
 宇宙空間は真空だから音が伝わらないとかいうものもいそうだが、そんなことではない。

 何故ならば、飲み込まれると同時に敵艦隊がいた存在は消されたのだから。
 残すものなどなに一つもなく、あるのはただ何もいなかっただけの光景。

 しかしながらその威力が壮絶なものだったことを示すようで…放った後の宙域には、大きなひび割れがあるように見えた。


「…どう考えても、相当やばいものを撃ったかも」

 あったものを、無かったことにする。
 そこに存在していたはずのものが、存在していなかったものへと切り替わる。

 記憶を消す・改善する類の超常現象の様なものではないが…彼らの存在は今、すべて失われただろう。


 シャレにならないものを放ったという思いはあるが、相手がそもそも何もしなければ起こりえなかったことだと、相手の自業自得だと思うようにするのであった…


「ん?というか、モードって言葉が聞こえたけど…もしかして、他のもあるの?」
【用意してありますネ。撃ち分けできるようにしており、今回はまだ穏やかな方を選んだのデス】

…これで、穏やかな方なの?


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