上 下
493 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-79 解放・逃亡・捕縛

しおりを挟む
…先日のストーカー事件を経て、中三病さんの境遇は変化した。
 追われ続ける逃亡生活に終わりを告げ、平和を取り戻した。


「というか、流れで姉からの解放もあったのか…」

 フレンドメールで送られてきた中三病からの、近況に関するメール。
 ストーカー被害を終えても、まだあの恐竜女帝がいる時点で真の平和は訪れることは無いだろうと思ってはいた。


 だがしかし、意外なことに本件を経て、執拗だった恐竜女帝の攻めがここにきて緩み、確保されることはなかったらしい。

 理由を聞くと、どうやらストーカー被害に関して思うところがあったらしく、いったん追いかけるような真似はしないという連絡を貰ったそうだ。
 まぁ、あの女帝…ティラリアさんも、似たり寄ったりなことをやらかしているから、冷静に他者の行動を見て、己を省みたのだろう。中三病さんに平和が訪れたとなれば、それはそれで喜ばしいことなのかもしれない。




 そんな平和が訪れる中で、ハルたちは今、別件で動いていた。
 
 先日の騒動以来、修理・改造・大改装作業中の魔導船グレイ号。
 だいぶ進んできたようだが、騒動時と同じようなことが起きてもおかしくはなく、それに対応できるだけの能力を得られるようにということで、ロロからグレイ号用のクエストを受注しているのである。

「特殊鉱石アルデスヨン…こういう時のクエストの場合、アダマンタイトやミスリル、オリハルコンとかが定番なのに、何でこんな名前の鉱石を…」
「たまにあるよね、妙な類のもの。こっちだって牧場を経営する中で、普通なら卵ってつくものが何故かタマゴリアンってものが出来たりしたから、よーくわかるよ」

 本日もミーちゃんと一緒にプレイしているわけなのだが、彼女の方も似たような経験があるらしい。
 このアルケディア・オンライン。大抵のものは現実世界にあるものと同じようなものが多いはずなのに、時たま意味不明な類のものがでることもある。
 

 その中で今回は、グレイ号を大幅にパワーアップさせることが出来るということで、その鉱石を求めて…久しぶりに、ダンジョンを進んでいた。


 結構前にドラメタルという鉱石を求めてダンジョンにもぐったことがあったが、今飽きのアルデスヨンも同じような方法でしか得られないらしい。
 宇宙フィールドは広いのだから、どこかの惑星で得られそうなものなのだが、こういうダンジョン限定のものもあるため、あちこちで情報を集めなければたどり着くのが難しそうだ。

 
「でも、今更こういうダンジョン自体は楽勝だ…と思っていたけど、そう考えていた自分を全力でぶん殴りたいな」
「まさか、ダンジョン判定で強力なスキルが使用不可にされるとは…」

 黒き女神等のスキルがあるので、大丈夫だと思っていた。
 だがしかし、世の中そう甘くはなかったようで、しっかりと対策としてなのかスキルを使用できなくするダンジョンが用意されており、今回僕らが入ったのはそれに該当するものだったらしい。

 おかげで現在、かなりやばい状況というか…


ズンゴロドゴロゴロゴロ!!
「古典的な岩に追いかけられるトラップなんて最悪だぁぁぁぁ!!」

 しかも、ただの岩ならまだしも、どうやらかなりぬめっているようで、表面にテカリがある岩。
 根性で押さえつけて止めることが出来ないように、油がたっぷりと塗られているようであり、迂闊に止めに行くことが出来ない。

 こういうトラップの回避方法の定番としては、床や天井にくぼみを作ってそこに入って回避するというのがあるだろうが、どうもガッチガチの金属製のダンジョンのようで、破壊するだけの時間もない。

 そのため現在、全力で駆け抜けるしかない状況であった…









 ハルたちがダンジョン内で追い回されていたその頃。
 宇宙フィールドのとある宙域にて、艦隊が集結しつつあった。

 プレイヤーが作り出した、艦隊ではなく…これは、運営が自ら用意した鎮圧用の強力な魔導戦艦による艦隊。
 通常プレイを行っているプレイヤーたちならば遭遇することはほとんどないのだが、今はあることが観測されたために、その場所に集められていた。

 その理由とは、あるターゲットがその宙域に現れる予測がされたこと。
 囮かもしれないが、その可能性を徹底的に排除した結果辿り着いた場所であり…どの予測でも、そこに出現することは間違いない。

 艦隊を派遣するのは過剰戦力ではないかという指摘がありそうだが、過剰ではない。
 何しろ相手は、それだけの戦力を超えるかもしれない、悪意あるもの。

 油断せず、静かに数を揃えていくのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...