481 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~
ver.5.1-68 ■■■の記録
しおりを挟む
―――それは、偶然の出来事だった。
私は、何事にも楽しさを感じられないような…むかしから、感情が欠落しているような人だった。
評判が良い、感動できる、喜劇で腹が痛くなる等々、様々な話を聞く中で実際に見たり聞いたりするものの、どれも私の心を動かす様なものはない。
そんな中で、非常に優れた完成度だという評価を得ているアルケディア・オンラインというゲームを
試してみても、同じような結果になるはずだった。
そう、それは運命の女神が引き合わせてくれたかのような…
「うわぁぁぁぁぁ!!ガチでやめろぉぉぉぉ!!」
「ふはははははは!!待つのデース可愛い弟よー!!」
…とある場所で偶然見かけた、どこにでもありそうな姉弟のじゃれあうような声。
いや、その声色としては片方はそのままだが、逃げている弟らしい人のほうはガチ目の恐怖の声を上げている。
何事かと思い、声の方向をみて…彼女は運命に出会った。
物凄く威圧感のある恐竜に追われて、死に物狂いのような表情で逃げている男性。
死はこのゲーム内だとデスペナルティ扱いであり、本当に亡くなるわけではないのに、捕まったら最後というような絶望感の染まった恐怖の表情。
普通に恐竜に追いかけられたら、そんな顔になっても良いが…この時、何かを感じ取った。
動かなかったはずの心が、ブルりと震えるような不思議な感覚。
そのまま彼らがそばを通り過ぎて行ったが、いなくなっても余韻を残すようなこれは、何なのか。
「…もしかして、これが恋なのかな?」
少女漫画等であるような、一目惚れ。
もしかしたら今、まさにその通りのことが起きてしまったのかもしれない。
パンを咥えて激突したり、助けられたり、惚れ薬を飲まされたりなどの様々な手段があるだろうが、恋に落ちるというのはある日突然来るものなのだろうか。
本当に恋なのか、確かめたく思い、その日から彼女は変わった。
どこにあの姉弟がいるのか調べたところ、割と簡単に見つかった。
どうやら巷では噂になっているらしいプレイヤーのようで、逃げる弟を追いかける姉という光景は見慣れたものになっているらしい。
けれども、何度見てもなぜかその弟の方の…恐怖に泣き叫ぶ顔や、反撃の手を出そうとしても無駄に終わる絶望の顔、用意をして返り討ちにしようとしてことごとく失敗する不幸の表情…その他様々なものを見て、心が踊り狂う。
ああ、これは恋をしているのかもしれない。彼が好きなのだろう。
あの恐怖の、絶望の、悲劇の、救いようのないその顔が。
もしも、それが自分の身に怒れば同じような感情を味わうのかもしれないが…いや、それはそれで、面白いのかもしれない。
ああ、気になる。どうやったら、手に入れられるのだろうか。
何をすれば見ることが出来て、どのようにすれば私も感じ取れるのか。
普通では手に入らないような、何かが欲しくて…気が付けば、こういうオンラインゲームではまずいこともある、現実の世界での彼についても調べていた。
どこに住まい、何をしているのか。
どのようにしてあの姉から逃げる手を模索し、そして無に帰してしまうのか。
希望をもって挑み、絶望を味わい、立ち上がってはさらなる恐怖を植え付けられて…その行動がいとおしく、自分のものにしたい。
気が付けば歯止めが利かなくなっており、写真や動画の容量もかなり圧迫されている。
得るために使った手段は数知れなかったが、幸いなことに資金に関しては問題はない。
なぜなら彼女は■■■で…現実でどのような手段もとれるし、このオンラインの世界でもやろうと思えばできるもの。
そしてある時、せっかく集めたものが彼にばれてしまったが…ああ、秘密がばれてしまうこの感覚は、これはこれで難と気持ちがいいものなのだろうか。
彼は気が付いていないのだろう。私が単純に、物事をさらけ出すわけがないことを。
秘密に見せかけた、私の欲望を満たすだけの道に沿って動いているだけだったというのに、見事に思い通りに動いて物凄く嬉しい、面白い、可愛い、楽しい楽シイタノシイタノシイ…!!
ああ、いつしかこの思いは溢れすぎて、身を堕としてしまっただろう。
けれども、その思いがあるからこそ、私はどのような場所からも迫り、味わうことが出来る。
監獄なんぞ、意味をなさない。そこに彼がいるのであれば、どのようなところであろうとも0距離で迫ることが出来る。
…だからこそ、邪魔するものはご退場を願おうか。
ううん、邪魔をするならそれはそれで、別に良い。
隔てられるからこそ、拒絶の壁が高いからこそ、より得られるものは大きくなる。
たとえ相手が自分とは違った方向性の欲望と変態性を身に秘めていたとしても、それは物事を美味しくするためのスパイスにしかならないだろう。
「さぁ、だからどんどん抵抗して頂戴!!私がより心を躍らせることができるように!!」
心から叫ばせてもらおう。私が私として、動けるこの喜びを。
彼が折角抵抗するために、色々と用意してくれたのだろうけれども、これもまた私の心を震わせ、満たせてくれる。
何やら神なる存在もいるようだが…ええ、問題はないでしょう。
相手が神だろうと悪魔だろうと、障害となるのならばゆっくりと味合わせていただきましょう。
それらは全て、私が持つ愛を、これでもかと燃え上がらせるだけの燃料に過ぎないのだからね…
「ああ、愛って、恋って、素晴らしいものねぇぇぇぇ!!」
私は、何事にも楽しさを感じられないような…むかしから、感情が欠落しているような人だった。
評判が良い、感動できる、喜劇で腹が痛くなる等々、様々な話を聞く中で実際に見たり聞いたりするものの、どれも私の心を動かす様なものはない。
そんな中で、非常に優れた完成度だという評価を得ているアルケディア・オンラインというゲームを
試してみても、同じような結果になるはずだった。
そう、それは運命の女神が引き合わせてくれたかのような…
「うわぁぁぁぁぁ!!ガチでやめろぉぉぉぉ!!」
「ふはははははは!!待つのデース可愛い弟よー!!」
…とある場所で偶然見かけた、どこにでもありそうな姉弟のじゃれあうような声。
いや、その声色としては片方はそのままだが、逃げている弟らしい人のほうはガチ目の恐怖の声を上げている。
何事かと思い、声の方向をみて…彼女は運命に出会った。
物凄く威圧感のある恐竜に追われて、死に物狂いのような表情で逃げている男性。
死はこのゲーム内だとデスペナルティ扱いであり、本当に亡くなるわけではないのに、捕まったら最後というような絶望感の染まった恐怖の表情。
普通に恐竜に追いかけられたら、そんな顔になっても良いが…この時、何かを感じ取った。
動かなかったはずの心が、ブルりと震えるような不思議な感覚。
そのまま彼らがそばを通り過ぎて行ったが、いなくなっても余韻を残すようなこれは、何なのか。
「…もしかして、これが恋なのかな?」
少女漫画等であるような、一目惚れ。
もしかしたら今、まさにその通りのことが起きてしまったのかもしれない。
パンを咥えて激突したり、助けられたり、惚れ薬を飲まされたりなどの様々な手段があるだろうが、恋に落ちるというのはある日突然来るものなのだろうか。
本当に恋なのか、確かめたく思い、その日から彼女は変わった。
どこにあの姉弟がいるのか調べたところ、割と簡単に見つかった。
どうやら巷では噂になっているらしいプレイヤーのようで、逃げる弟を追いかける姉という光景は見慣れたものになっているらしい。
けれども、何度見てもなぜかその弟の方の…恐怖に泣き叫ぶ顔や、反撃の手を出そうとしても無駄に終わる絶望の顔、用意をして返り討ちにしようとしてことごとく失敗する不幸の表情…その他様々なものを見て、心が踊り狂う。
ああ、これは恋をしているのかもしれない。彼が好きなのだろう。
あの恐怖の、絶望の、悲劇の、救いようのないその顔が。
もしも、それが自分の身に怒れば同じような感情を味わうのかもしれないが…いや、それはそれで、面白いのかもしれない。
ああ、気になる。どうやったら、手に入れられるのだろうか。
何をすれば見ることが出来て、どのようにすれば私も感じ取れるのか。
普通では手に入らないような、何かが欲しくて…気が付けば、こういうオンラインゲームではまずいこともある、現実の世界での彼についても調べていた。
どこに住まい、何をしているのか。
どのようにしてあの姉から逃げる手を模索し、そして無に帰してしまうのか。
希望をもって挑み、絶望を味わい、立ち上がってはさらなる恐怖を植え付けられて…その行動がいとおしく、自分のものにしたい。
気が付けば歯止めが利かなくなっており、写真や動画の容量もかなり圧迫されている。
得るために使った手段は数知れなかったが、幸いなことに資金に関しては問題はない。
なぜなら彼女は■■■で…現実でどのような手段もとれるし、このオンラインの世界でもやろうと思えばできるもの。
そしてある時、せっかく集めたものが彼にばれてしまったが…ああ、秘密がばれてしまうこの感覚は、これはこれで難と気持ちがいいものなのだろうか。
彼は気が付いていないのだろう。私が単純に、物事をさらけ出すわけがないことを。
秘密に見せかけた、私の欲望を満たすだけの道に沿って動いているだけだったというのに、見事に思い通りに動いて物凄く嬉しい、面白い、可愛い、楽しい楽シイタノシイタノシイ…!!
ああ、いつしかこの思いは溢れすぎて、身を堕としてしまっただろう。
けれども、その思いがあるからこそ、私はどのような場所からも迫り、味わうことが出来る。
監獄なんぞ、意味をなさない。そこに彼がいるのであれば、どのようなところであろうとも0距離で迫ることが出来る。
…だからこそ、邪魔するものはご退場を願おうか。
ううん、邪魔をするならそれはそれで、別に良い。
隔てられるからこそ、拒絶の壁が高いからこそ、より得られるものは大きくなる。
たとえ相手が自分とは違った方向性の欲望と変態性を身に秘めていたとしても、それは物事を美味しくするためのスパイスにしかならないだろう。
「さぁ、だからどんどん抵抗して頂戴!!私がより心を躍らせることができるように!!」
心から叫ばせてもらおう。私が私として、動けるこの喜びを。
彼が折角抵抗するために、色々と用意してくれたのだろうけれども、これもまた私の心を震わせ、満たせてくれる。
何やら神なる存在もいるようだが…ええ、問題はないでしょう。
相手が神だろうと悪魔だろうと、障害となるのならばゆっくりと味合わせていただきましょう。
それらは全て、私が持つ愛を、これでもかと燃え上がらせるだけの燃料に過ぎないのだからね…
「ああ、愛って、恋って、素晴らしいものねぇぇぇぇ!!」
10
お気に入りに追加
2,048
あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる