アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
469 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-56 理解したくないものほど、恐ろしいものになる

しおりを挟む
…ベッドの下に隠されていた部屋。
 そのなかで何を見たのか、そこまで中三病さんは語らなかった。
 
 いや、思い出したくはないのだろう。相当衝撃的なものを、目にしたらしい。

「…とりえあえず、見てしまった後、すぐにその部屋から出て入った痕跡を極力消した。ばれたら確実に不味いことになるのが、目に見えるからな」
「中三病さん、逃げる時の痕跡消しはきちんとやったの?指紋とか、髪の毛とか、隠したつもりとかでも割と残るよ」
「そこもしっかりと、掃除しておいた。姉から逃げる時に、追跡できないようにするための痕跡消し技術力ならば嫌でも磨かれているからな」

 そんな経験があったからこそ、確実に入ったことはバレないはずだった。
 その後に恋人…だった人はすぐに帰ってきて、平静を装って対応し、その後は家に戻った。

 だが、後で平静な対応を取ろうとしても…見てしまった室内の光景のせいで、今後できるかはわからない。
 いっそのこと、記憶をどうにか地平線の彼方にやったり消せないかと思ったが…残念ながら、その対応を取る前に、事は動いてしまった。


「つまり、バレたと」
「ああ、完全に消し去ったつもりだったが…わずかな温度変化で、侵入したこと自体を悟られたらしい」
「そんなことで!?」

 どう考えてもあり得ないようなことなのだが、出来てしまったのだから仕方がない。
 考えてみれば、この中三病さん周辺の人もまぁまぁな割合でツッコミどころ満載ながらも凄まじい人が集まるといえばそうだし、恋人だった人も該当しておかしくないだろう。


 とにもかくにも、バレたらすぐに全力土下座からの、室内の光景に関して得た情報をもとに、別れられないかと交渉し…どうにか、別れることには成功した。

 相手も中々引き下がらなかったようだが、見られたくなかったらしい部屋を見られたのが答えたのか、案外あっさりとした幕引きだったらしい。




 このまま何事もなく、終わってくれればよかったのだが、世の中単純に動かない。

「それから数日後に…何者かに付けられていたりすることが分かって、調べた結果、その元恋人にストーカーされていることに気が付いたんだ」
「え?交渉して別れたのに、なんで?」
「引き下がったけど、諦めが悪くてやっぱりついてきたとか?」
「そういう単純な理由だったら、良かったんだよなぁ…」

 行動原理が、単なる諦めの悪さだけであったら理解できる。
 しかしながら、世の中理解できないことというのは存在してた。


「…どうもな、変な扉を開いちゃったらしい。自分の隠していた秘密を見られて恥ずかしいと思っていたようだが、バレたらそれはそれで妙な快楽を得ちゃったようで…」
「…要は、新種の変態戦隊予備軍みたいなのが生まれたと」
「そういうことだ」

 どうやらその元恋人、自分の秘密がばれたことに対して何やら開いてはいけない扉を開いたというか、未知の快感を得てしまったらしく、何度も得るために再び同じようなことをできないかと、中三病さんに交渉し始めたらしい。
 要はドMの特殊型みたいなものになってしまったようで、断ったものの執拗に付きまとい、警察のご厄介にもなったそうだがそれでも出てきては繰り返し、次第に重度のストーカーへと変貌していったようだ。

「え、捕まっているのに出てくるの?」
「脱獄だとさ。留置所、刑務所、監獄と移っていったのに…どこに入っても、気が付いたらそばにいるようなことになっているんだぞ!!単純に自分の趣味嗜好の欲望を満たすためだけにそこまでやるって、どうなっているんだよ!!」
「さらっとやばいところにも突っ込んでいるね…」

 既にこのストーカー行為に関しても元恋人は快楽を得てしまったようで、やめろと言ってもやめてくれない。
 警察沙汰、裁判沙汰になってもうんともすんともこたえることもなく、自身の欲望を満たすためだけに付きまといまくっているらしい。
 そのうち罪を積み重ねてより厳重な処分が下されて行っているというのに、それすらも快楽へと転換してしまい、もはや何のためにストーカーしているのかという目的もあやふやになって、いまだにしつこく付きまとっているそうだ。

「なんというか…ご愁傷様だね。うん、中三病さん、何か憑かれていそうなんだけど、お払いとかは?」
「すでにあちこちでお払いも、お地蔵様神様神社大仏世界の聖地…その他諸々めぐって頼み込んでも、どうしようもないんだよ…」

 恐るべきというべきだろうか、それとも悍ましいというべきなのか。
 もはや目的すらもあやふやになりつつあるのに、ストーカーに付きまとわれまくっているのは相当精神に来るだろう。

 恐竜女帝の方でのメンタルへの圧力は強かっただろうが、そこにさらにストーカーの霊圧が加わってより大きな負担となって中三病さんの精神に負荷をかけている。


「今もだ、このオンラインゲームに入っている中でも、奴はプレイヤーとして活動しており…運営に通報しても、すぐに舞い戻ってくるんだよぉぉぉぉぉぉ!!」
【ン?それ、おかしいですネ】
「っと、ロロいつの間に」

 心からの叫びを中三病さんが叫ぶ中で、いつの間にか話を聞いていたらしいロロがそばにいた。


【中三病さん、運営にそのプレイヤーを何度も通報しましたカ?】
「ああ、間違いない。何度も執拗になって、この間はアカウントBANまで行ったと思ったのに…しれっと復活していたんだ」
【ふーむ、そうなるとやはりおかしいですネ。迷惑行為をするプレイヤーに対して、アカウントBAN…要は入れないように永遠の出禁もいたのに、普通にいるのは妙デス】
「新しいアバターやアカウントを作って、ログインしたんじゃないの?」
【いえ、それは不可能なはずデス】

 ロロの説明曰く、アルケディア・オンラインのプレイヤー情報は厳重に管理されているわけだが、こうやってVRMMOとして遊ぶ都合上、プレイヤーの生体情報などもちょっと取っているらしくて、同一人物か否かは簡単に判別できるらしい。
 そのおかげで、ブラックリストに載っているような類のプレイヤー情報も有しており、利用して別の機体やアバター、アカウントを利用しても二度と入れなくなるようになっているそうだ。

【それなのに、ログインできているのは変な話なのデス】
「なるほど…そんな仕組みがあるのか」
【ハイ。中三病さんとは別件で、一度消去した方が、再び別の方法で入ってきて迷惑行為を繰り返すというのは、オンラインというシステム上世界中のどこかで起きたりしましたからネ。防止策として、そんなプレイヤーは二度と利用できないように仕組みが作られているのですが…それを抜けているのがどうなっているのでしょうカ】

 運営も馬鹿ではない。
 むしろ、そんな犯罪行為をアルケディア・オンラインの中で起こされては困るので、何重にも対策を練っているはずなのである。
 だがしかし、何故かログイン出来ているという中三病さんの元恋人もといストーカーも同じ扱いになるはずなのに、入ってきているのは奇妙な話だ。


【…何かこう、その元恋人さんにきな臭い何かがありそうですネ。調べたいので、情報を少々いただけないでしょうカ】
「ああ、解決できそうなカギになるなら、ぜひとも頼む…!!」

 おかしなことには何か理由があるのは当然のことで、その理由をロロが探ってくれるようだ。
 彼女に任せてできなかったことなどあまりないので、今回も何かしらの解決策が出ないか、期待するのであった…


「こういう時に限って、どうしようもできないことになったりして」
「そんなフラグっぽい言葉を言わないでくれ!!」

…流石に、どうにかできるとは思うぞ?最終手段としてはフロンおば、お姉ちゃんに頼るってこともできるし、中三病さんの境遇を考えると、どうにかしてあげたいなと思うからなぁ…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...