上 下
462 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-50 ごり押しだからできたこと

しおりを挟む
…謎の船は見事に爆散し、空間内での襲撃は終了した。
 後でロロに分析できないか確認してもらうために、多少の破片も欲しかったが…

「…ドロップアイテムが出ているな。ということは、あの船、モンスターだったの?」
「見た目からすると、そうかもしれないって思ったけど…通常のモンスターとは違うような気がするんだよね」

 破片も木っ端みじんになり、回収不可かと思われていた。
 だがしかし、何故か確認してみたところアイテムとしてドロップ品が収納されていたのである。

―――
「『無機物合成変異実験体:???ーWR9004』の破片」
???の組織が作り上げた船の一部。
金属と有機物が絡み合ってできた、生物性合金で出来上がっている。
自己修復機能を備えていたが、既に修復不可能となり、復元は困難。
錬金術の素材にすれば、アイテムに10%の確率で自己再生能力が付く可能性がある。
―――

 実験体…あの筒状の船は、何者かが実験のために作り上げた生命体だったのだろうか。
 考えてみれば、襲撃をかけてきたときには歯がたくさん内部に生えそろったが、それ以外の時はシンプルな形状をしており、実験に必要なものだけを使えるように無駄を省いたようなデザインをしていた。
 
 本来の実験目的があのエネルギー波を撃ちだすためだけのものであれば、あの形状で作られていてもおかしくはないのだろう。


「しかも、生物性合金って聞いたことが無いな…ナノマシンなどとはまた違うのかな?」
「うーん、私たちこういうことに関する専門家じゃないからねぇ」

 分かる人が見れば分かるのだろうが、あいにくこの手の分野はど素人である。
 一応、錬金術師の職を持っているせいなのか、素材に関する話題がミーちゃんの方には記載されていないらしい。
 ある程度はゲーム内のアイテムと同じような扱いになっているようだが…あんなもの、どこの誰が生み出したのだろうか。


「まぁ、考えていても仕方がないか。今は、アルケディア・オンラインの通常宇宙へ進路を戻さないとね」
「無茶苦茶に逃げ回ったから、迷ったかと思ったけど…良かった、地図は機能しているみたいだ」

 わき目もふらずに全速力で逃亡したせいで、あまりの無茶の反動が来たのかエンジン出力が80%も落ちていた。
 けれども、それでもゆっくりと航行するぐらいには支障は生じないようで、地図を頼りに元のコースへ戻りつつある。

 ちなみにカイニスは相手の討伐後、ハウス内に収容された。
 制限時間はまだ残っていたために戻る必要はなかったが…また同じような輩が出たときに備えて、ある程度の余裕を持っておきたいと考えたからである。


「グレイ号自体のダメージは、ほぼ逃亡時の無茶による自傷だけど…状態としては、ギリギリセーフだな」
「ここで壊れて動けなくなったら、ロロがスリープしている今、完全に詰んじゃうよね」

 割とシャレにならない状況になってしまうが、動けるのであれば問題ない。
 最悪の事態に陥った場合、最終手段としてカイニスに船をぶん殴りながら無理やり進むという方法があったりするが…あの末路を見ると、調整を間違えたらどうなるのかが分かるので、そんな頼り方をするようなことは絶対にないように願う。

「そもそもここで船が壊れたら…永遠に帰れなくなるよね…」
「でも、ログイン状態のアバターだし、ログアウトすれば現実には戻れるよね?」
「どうなんだろうか、それは…」

 スキルが使用不可になるなど、様々な制約がかかる空間の迷路内で実験する気はないが、やったらどうなるのかという興味もなくはない。
 しかし、それでやらかして二度と戻れなくなるような事態になったら…それこそ、目も当てられないだろう。

「あ、でもそれで永遠にアバターとして生き続けるようなことになったら、それはそれで死後の女神の道も失える…のか?」
「新しくオンラインのどこかの異空間の狭間に住まう謎の女神って感じにされそう:
「…」

 それ、結局は逃れられない運命と言いたいのだろうか。




 そんなことを思いつつも、ゆっくりとした動きで船は進み、予定よりも大幅に遅れたとはいえ、どうやら出口が見えてきたらしい。
 進行方向に空間の迷路の終わりを示すのか輝きが見えてきており、地図で見てもあそこからアルケディア・オンラインの世界に帰還できるのが理解できるだろう。

 色々とあったが、とりあえず何とか無事に帰還できそうなことに喜べばいいかと気持ちを切り替えるのであった…




「…でも、結局あの船に関しては謎が増えたよね。実験体なうえに、番号が振られていたし…他にもいるってことなのかな?」
「あれがまだまだいるのか…遭遇したくないな」

…本当に、どこの大馬鹿野郎が作り上げたものなのだろうか。
 製作者に出会えたら、黒き女神になって眷属のカイニスの力を貰って全力でぶん殴ろう。
 命の保証はしないし、確実にやれるはずである。
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...