アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-27 夢見るのは誰の自由

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…生き物というのは、眠ると夢を見る時がある。
 それが予知夢だったり未来夢だったりする例外はさておき、大抵の場合はそのモノの中にある経験が原因で形作られていることが多い。
 
 心のありようを反映しているのが夢ともいうが、その夢には知らぬものを出すことはできない。
 知らないからこそ見れないものであり、知っているからこそ夢として親しみを持つというのもあるだろう。

 そんな夢を見るのは様々な心あるものたちだが…



(…ここは…夢か)

 頭がぼうっとする中、ほんわかと浮かぶような浮遊感を感じ取りつつ、何故か今いる状況が夢を見ているのだと春は理解していた。
 夢を、夢だと認識してはっきりと感じ取る明晰夢。
 今見ているのもその一つであり、なんとなくだけど感じ取ることが出来るだろう。

 まぁ、夢を夢と認識しても目覚めるまでは変わらない状態。
 ならばいっそ、そのまま起きるまで夢を楽しむのも良い。

(特に、こういう浮かぶ系の夢は、普段感じることが無い…いや、意外とあるな?)

 アルケディア・オンライン内も基本的には地に足を付けて歩くが、考えたら黒き女神の時の移動はちょっと浮かんだりする時があるので、物凄く珍しいのかと言われればそうでもないだろう。
 珍しい歩き方となると…何があるのだろうか?


 そんなことを考えていても仕方がないと区切りをつけ、夢の中をゆったりと進む。
 気が付けば周囲の景色は星々の瞬く宇宙のようになっており、気分的には宇宙遊泳に近いだろう。

 いや、これもこれで珍しくはないのか…宇宙空間系のフィールドをグレイ号で進んでいるから、見慣れた景色になっているのかもしれない。
 アルケディア・オンライン、現実離れした場所に向かうことが出来るが、こういう時に限ってその多様性が新鮮さを失わせるという仇になっている…うん、深く考えないほうが幸せか。


(ん?)

 余計なことを考えずに、夢の中なら頭を空っぽにして動いていても良いかと思っている中、ふと何か呼ばれたような気がした。
 夢の中に自分しかいないはずなのに、なんとなくだが感覚的に引っ張られたような気がしたのだ。

 何がと思い、気になってその方向へ向かって飛んでみると、その先に一つの大きな湖のようなものが見えてきた。

 宇宙に浮かぶ、水鏡のような場所。
 天動説とかで言われているような、周囲から水が滝のように流れ落ちており、その中央には水が湧きだす噴水の様なものが設置されている。
 こういうのを見ると、トイレが近いとか良くある話であり、ちょっと不味いのかなと思っていたが…その噴水の近くに、あるものを見つけた。

(これは…何だ?)

 噴水のそばにあるのは、この場にはない様な黒い草のじゅうたん。
 そこで寝ているのは…まさかの黒き女神の姿があった・


(…自分の夢なのに、黒き女神の姿の自分がさらに寝ているってどういう状況なの、これ)

 夢の中なのにまだ眠っている者がいるという状況は何なのか。
 ツッコミを入れたいが、夢だからという理由で割り切ったほうが気が楽になる。

「んっ…ああ、良く寝た」

 ツッコミを放棄していると、黒き女神の目が覚めたようで、ぐぐっと腕を伸ばして起床する。

「…ああ、そこにいるのは、僕/私か。ちょうどよかったかも」
(あ、気が付いた。でも、ちょうどよかったって?)

 春の存在に気が付いたようで、手招きをしてくる黒き女神。
 自分自身のはずなのに、自分に招かれている状況というのはどういうことなのか。

 そう思いつつも招かれて向かう間にいつの間にか準備したのか、お茶会のようなセットが用意されていた。

 指を鳴らすだけであっという間に用意するとは、夢の中とはいえ相当無茶苦茶な…あれ、黒き女神の状態だと無理なくできるような気がして、無茶苦茶でもないのか?

「だいぶ私/僕に侵食されてないかな、その感覚」
(否定できないという悲しい現実)

 自分自身ともいえる黒き女神のツッコミ、夢の中だけどだいぶ心にこたえるな…





 そうこうしつつも、せっかく用意してもらったので席に座りつつ、お菓子をいただくことにする。
 夢の中とはいえ、味を感じているようなものがあり、美味しいと言えるだろう。
 
(それにしても、一言も発していないけど、伝わっているの?)
「ここは夢の中で、僕/私自身だからね。思考が同じだから、分かるんだよ」
(なるほど。自分のことは自分が良くわかるか)

 思っていることが筒抜けのようだが、見抜かれて困るようなものはない。
 夢の中だし、相手は自分自身だし、わかっているならば問題もないだろう。

(それにしても、なぜ夢の中でこんなものを用意してくれたの)
「それは、せっかくの機会だからと思ってね…こうやって、ゆっくり僕/私と過ごす時間が欲しくもあったんだよ」
(へぇ、そうなのか)
「だっていつも、私/僕と違うところにいるからね…こうやって、同じ場所にいるということは…うん、だいぶ、近づいてきたのかも」
(近づいてきた?)
「気にする必要はないよ、僕/私は私/僕で、問題はないからね。…あぁ、でも僕/私に関して、見ているのがいるのは、面倒かな」

 そう言いながら黒き女神はすくっとたち、何かを何もない場所に投げつける。

バチンッ!!

(…何の音?)
「気にしなくていいよ、僕/私。ちょっと覗こうとした輩を、潰したからね。…この間のあれといい、ちょっと目を付けられたかも?」

 何を知っているのか、何をやらかしたのかはわからない。
 ただ一つ、言えるとすれば何かを私/僕が感じ取っていることなのか。

 同じ自分のはずなのに、なんだろうなこの感じ…うーん、全体的な性能で見れば、圧勝される未来しか見えないのも物悲しいなぁ。

「この様子だと、またありそうだし…今のうちに、色々としないとね。だから僕/私、ちょっとしばらくの間、気を付けてね」
(何に?)
「見ている者---に、襲われないように…そうね、ミーちゃんにでも相…」


…ぼやっと周囲の景色が薄れ、夢から目が覚めていく感覚が生じる。
 何を言っていたのか、最後まで聞きtれなかったが、自分自身が…私/僕が何かに気を付けるようという警告をしていたことは理解できる。

 黒き女神である身で、何に警戒しているのか。
 そう疑問を思いつつも、これは夢の中の事。

 目が覚めた時には、何かを聞いていたような気分なだけで、内容をすっかり忘れていたのであった…



「…何か、変な夢でも見たかな。妙な夢だったのかな」
「おはようございマス、主様。何か悩みでもありましたカ?」
「いや、夢を見たけどなんだったかなって…そういえば、ミーちゃんは?」

 いつもなら、ミーちゃんのほうが早起きのはずだけど、朝食の場にいないな。

「昨晩、電話でお母様に呼ばれたようデス。出ていかれる際に、また何かの面倒事かと物凄く気を落とされていましたネ」
「ミーちゃんはミーちゃんで苦労しているのか…うーん、その話を聞くと慰めたいな」

…いつも何をしているのか、その詳細は聞けないけど絶対に面倒ごとの類だとなんとなくわかる。
 藪蛇を突かないように、伯母さんの話題はやめておこう…帰ってきたら何か、ごちそうでも用意してあげたほうが良いかなぁ。

「…いっそ、ミーちゃんのことだし、僕の血でも飲ませてあげたほうが良いかも」




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