アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-23 混沌と拒絶

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…黒き女神の大技で、一撃で沈んだことを祈りたい。
 だがしかし、そうたやすくいかないのがこの世の中だろうか。

「…あー、うん。駄目だね、こりゃ」

 女神のフィギュアを使用しているが、感覚としてはオンラインの中での女神の操作と同じようなものを感じており、そして同時に今の攻撃が意味をなさなかったことを感じ取った。

「アティ、多分今の攻撃防がれたな。内部のほうの反応が分かるなら回答がすぐ見えると思うけど、どうかな?」
「どれどれ…、ふむ、どうやらそのようじゃな」

 ごそごそとポケットを探り、どこぞやの玉を集めるレーダーっぽい機械を取り出し、確認してそう答えるアティ。
 封印の間の内部の生体反応を捉えるセンサーがあるようで、その結果を表示したようだが、出来ればそうであってほしくなかった回答を示される。

【主ノ攻撃、耐エタノカ】
「うーん、どうやら違うようじゃな。一瞬、反応が弱まったようじゃが、すぐに回復したようじゃ」
「今の攻撃は、かなり強めの技だったけど…そうか、変態神ならあの可能性があるな」

 なんとなく、どうして今の攻撃が効果をなさなかったのか理解してしまう。
 ただ、まだ仮定なので検証を行い、しっかりと見極める。

「カイニス、もう一度だ!!『スローブラックシャイン・十分の一バージョン』!!」
【ヨット、『オーガデストロイ』!!】

 確認のためだけに無駄なエネルギーの消費を避ける目的で、威力を抑えたものを再度打ち込み、中で爆発をさせる。
 反応を確認したところ、確かに直撃の瞬間に反応が弱くなったようで、ダメージを与えているはずだがすぐに元に戻った。

「これは、攻撃を回復の糧にしているのかのぅ?」
「多分、そうだと思う。ダメージを負うことは追うけど、攻撃のエネルギーを回復のために取り込んでいるというか…変態なら、ドMの極みみたいなスキルで痛みを快楽とかに転換して耐えているのかもしれないね」

 普通に自己再生を行って復活しているならばいざ知らず、相手は変態神。
 変態はいろいろな種類があるだろうが、その神の座にいるということは、全ての要素を兼ね備えている可能性があり、その中でも今回は痛みを受けても回復するような要素…ダメージを快楽にするよなドM系統のものを使っているのかもしれない。

 つまり、強烈な攻撃を与えれば与えるだけ、ダメージは確かに与えられるはずなのだが、それと同時に快楽と回復を与えてしまい、意味をなさなくさせてしまう。

「なんというか反則じみた力だな…確か、タンクマン系統の職業に就いた人の中には、受けるダメージの3割ぐらいを回復に回すことが出来るスキルを持つ人がいるってネットで聞いたことがあるけど、回復倍率を更におかしくしたようなものを有しているのかもね」
「チートよりも立ち悪そうな能力じゃよな…」
【変態、恐ルベシ】

 なお、ついでにセンサーで確認できるなら内部の状況もわかるかなと思って探ってもらったところ、どうやら変態戦隊も存命しているらしい。
 同じく攻撃を受けて大ダメージを負いつつもすぐに回復した反応が見られることから、同じようなスキルを…

「…あ、いや、でもここ現実でアルケディア・オンラインのアバターじゃない生身の体のはずだよね?それなのに、同じようなことってできるの?」
「普通はできにはずじゃが…度を越した変態ならば、出来てしまうものじゃないのかのぅ」
「いやいや、流石に普通の人間がそんなことできるはずが…どうしよう、否定できない」
【主、ソコマデ言ワセラレルホドヤバイノカ?】
「「そりゃもう、とんでもなく」」

 カイニスの疑問に対して、アティと意見が一致する。
 変態神もたいがいの変態力を持っているのかもしれないが、変態戦隊ももしかすると同レベルの変態力を持っている可能性があり、同じものになっていてもおかしくはない。
 否定できる要素があるならば何があるのか、教えてほしいぐらいである。

 なお、封印の間に閉じ込めた際に、モンスタードールを使用してマッチョンも一緒にいたはずらしいのだが、そちらの反応はない模様。
 既にやられたのか、オンラインの世界に戻っている可能性があるが…それはつまり、あの戦隊の唯一の箍をかけられる大きな枷が消えたことを意味しており、度を越えた存在になっているのかもしれない。

「このままさ、この封印の間を開けることなく、まとめて深海…いや、宇宙の果てにでも飛ばせないかな?」
「流石に無理なんじゃよなぁ…そもそもあやつら、それで二度と会うことが無くなるようなやつらかのぅ?」
「…無理だね」

 この封印の間に封じている今の状態がある意味奇跡の様なものであり、それ以外の場所へどうにか封じようとしても意味をなさない可能性が大いにある。
 もしかすると僕らは、とんでもない呪物を相手にしているのかもしれない。


 どうにかできないかと、そんなやり取りをしていた…その時だった。

ビシッ!!

「!!」
【何カ出テクルゾ!!】
「攻撃、いや、これは…!!」

 封印の間の扉に、急にひびが入り、光の様なものが漏れ出てくる。
 こちらが仕掛けないならば、やりかえすぞというための攻撃か…違う、この悪寒は、傷つける類のものではない、別のモノ。
 そう、前にもこれと似たようなものを浴びたからこそ、感じ取れる最悪のモノ。


「まさか、人をバニーにする類の光線か!!」

 ドォォォォン!!っと勢いよく音を立て、明らかにヤバそうな色合いをした光線が射出されて僕らのほうに向かってくる。
 この悪寒はどう考えてもその類のものであることが分かるが、どうして変態神がその攻撃ができるのか。

 ああ、変態の神だからこそ、変態がやらかすような攻撃の上級版みたいなものを持っているってこともあるのか。

「だけど、流石に同じ手は二度と喰らうまいと学習しているんだよ!!マリーの毒で毒液精製からの水鏡ならぬ毒鏡へ!!『ポイズンミラー』!!」


 瞬時に猛毒の液体を放出し、すぐに集めて鏡のように反射する水面を形成し、盾とする。
 強制的にバニーに変化させるスキルだったが、アレは一種の光線であり、鏡で反射できるのではないかと思い、いざという時のために使えるようにしておいたもの。

 その考えが見事に功を奏して、正面から受け止め切って反射する。


ズッバァァァァン!!

 鏡に跳ね返された邪悪な光はそのまま打ち出したものの元へと跳ね返り、直撃音が響き渡る。

「どうだ、二度となるまいと誓って生み出した反射技を。まさか現実世界のフィギュアの肉体でやるとは思わなかったけど、うまいこといったな」
「恐ろしい光線を、こうもあっさりとはのぅ…あ、でも、これはこれで不味いのでは?」
「ん?」
「だって今の、バニーにする光線…いや、もっとおぞましい何かの姿に変えさせられるかもしれぬ光じゃろ?それを、変態神が撃ちだしたとして、返したとしたら…変態神が絵面にしてはいけないより醜悪なものになるかもしれぬのでは?」
「…あ」

…しまった、その可能性を失念していた。
 つまり今、直撃したところにはバニーどころかもっとやばい恰好をした変態神が…見た目がさらに変態に振り切ってしまったものが、いるということになる。

 事態はさらに、深刻な状況へと移り変わろうとしていたのであった…


「アティ、今すぐに封印の間の扉治して!!いや、二重三重の替えのモノかあるなら早く!!」
「今ので全部、吹っ飛ばされたんじゃけど!!」
「封印から解き放たれる変態が出る前に、どうにかしないと!!」



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