上 下
412 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-2 僕ら、常識人ですよ

しおりを挟む
…常識が通用しないと言われている、惑星ファンタズム。
 どのようなものが待ち受けていようとも、言語獲得クエストをやるのであれば挑まないわけがない。


「でも、常識人からすれば大変な星かぁ…そういう話はあったけど」
「確かにこれは厳しいか…?」

 表面が何も見えない、もやもやした感じの惑星だったが…こうやって直接降り立ってみると、どのぐらい常識外れなのかが分かるだろう。

「いやいやいや、出来れば周囲が見やすいように、惑星降り立つ前に太陽の光が届く昼間の部分に来たはずなのに、思いっきり真夜中なのはなんでだよ!!しかも、月が一つとかじゃなくて満月やら三日月やら、色々と多く出ているのはどういうことなの!?」
「光景としてはすごいけど、本当に何でかなぁ…」
【うーん、きちんと計算して降りたはずですが…ああ、駄目になってマスネ】
「というと?」
【計器類、せっかく新しいものへ変えたのですが、全部狂ってマス。電卓なども計算が合わないですし…どうも常識外れなのはその星の中身そのものにもあるようデス】

 確認してみると、どうやら惑星の中に入ってすぐにあちこちの計器類がおかしな数値を叩きだしているらしい。
 ある程度の計算を行って、クエストがある場所へ最短でたどり着くルートだっったはずだが…

「全てが逆になるかと思ったらそうでもなく、中途半端な座標に来ているのか…」

 常識が通用しない…物理演算などの類も同様に通用しなくなっているようで、予測不可能なものが多くなっているそうだ。

【これ以上、グレイ号での航行は危険ですネ。大気圏内から早急に脱したほうが良さそうデス】
「でもそうなると、後は地面を普通に歩いて向かうだけになるけど…この様子だと、まともに行けるのかな?」

 入って早々に滅茶苦茶な状態なので、ここからさらに進むとなると怖いところがある。

「というかそもそも、何でこんな星に言語のクエストが…あ、いや、だからなのか?」
「どうしたの、ハル?」
「今気が付いたけど、もしかすると言語に関しての常識をなくせという理由で、この星に集められているんじゃないかなぁ…」


…常識が通用しない星。それはつまり、今までそれが当たり前だと思っていたものが通用しなくなる場所。
 その当たり前の中には、言語に関しての常識もあるのかもしれないのだ。

「基本的なイメージで…例えば犬はワンワン、猫はニャーニャー鳴くイメージがあるだろ?でも、外国だとまた違った感じになっているから…」
「ああ、なるほど。そう鳴くものだと思っているイメージがあるけど、それがアルケディア・オンラインの中ではモンスターたちの鳴き声も当てはまって…当たり前だと思うイメージで聞こえているような部分があるかもしれないのか」
「そこに、この星で色々と常識を破壊してもらえば…言語の常識も消えて、通じるようになるのかも」

 理由としては、ありえなくもない話。
 でも、そんな理由で常識が消えるのかは…正直言って、わからない。

「でも本当に、大変そうな場所でもあるんだよなぁ。常識人には厳しいか」
「うんうん、私たち常識人と言って良いからねぇ」
【…それ、本気で言ってますでしょうカ】
「「何で?」」

 ロロが珍しく僕らを疑うような声を出したが、色々と周囲に何かしらのことが起きる以外としては、まともな感性を持っていると思いたい。
 とにもかくにも、ここから先は船から降りて自力で進むしかなさそうであった…









…常識人がいたら確実にツッコミがありそうな会話がされていたそのころ。
 惑星ファンタズムの中で、とある施設が崩落を始めていた。

 そこは、既に放棄された研究施設。
 常識が通用しない星だからこそ、常識に縛られない研究が可能として多くの研究者たちが集っていたが、研究が終了…いや、途中でやっていたことが暴かれてしまい、襲撃を受けて何物もいなくなった無人の場所。

 だが、動力にも何も供給されないはずなのに、なぜか設備が稼働し続けており…研究は進んでいた。
 どれだけの年月をかけて、やっていたのかわからない。
 それでもやり続けていたのは、自分たちを生みだした研究者たちの残された意志を引き継ごうとしたからなのだろう。

 けれども、いくら常識が通用しない星だからとはいえ、流石に限度もあり…長い間誰も手入れをしなかった結果、施設の耐久限界を迎えてしまったのである。

 頑丈に作られていても終わりはあり、そのために崩落していく施設。

…けれども、その施設内で行われていた実験に使用されていた実験体は抜け出した。
 崩れて降りかかってくるがれきを粉砕し、五体満足で飛び出す。

【オゴ、オゴァァァァァァ!!】

 実験に使われ続け、自由を奪われていた実験体。
 しかし今、その身を拘束していた設備は崩落し、もはや縛るものはない。

 自身の身に自由の風を感じつつ、実験体は蠢きだす。

 その身がどこへ向かうのかは誰もわからないが…ただ一つ、言えるとすれば縛られていたうっぷんを晴らしたいのだろう。
 どれほどの力をふるって大暴れをできるのか、制限がない状況で知りたいという欲求が生まれ、なんとなくで感じ取った力に対して駆け出していく。


…偶然なのか、その実験体と似たようなものと相手をした者たちに対して。
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...