アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.3-166 愚者は想定外なことをやらかす

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…世の中には、予想外なことが起きることがある。
 それは何の偶然か、やらかした結果がしっかり跳ね返ってくるだけだったりするのだが、中にはとんでもない方向へぶち抜いてくることもある。

【キキゴォォ!!】
【ゴゲゴゴォォォ!!】
 
 その例が今、この下水道の中で起きようとしていた。

 オデール吸血伯爵が、この地に来てから作り上げた眷属たち。
 下水道の中でも蠢いて探り、働けるような者たちを狙って次々との手中に収め、彼にはもったいないほどの逸材が多かったのだが…この行為が、良からぬ方向へ導いてしまっていた。

 通常、吸血鬼が眷属を作るときは、その両者の間で契約を交わして、主のほうが自身の血を飲ませることで作り上げることが出来る。
 オデールがいくら愚物でも、流石にその作るための慣習は手を抜くことが出来なかったようで、まじめにやってはじわりじわりとその数を増やしていた。


…だが、吸血鬼の眷属というのは、ただ血を与えられて出来上がった生物なわけではない。
 主の力を微量ながらも受け継ぎ、普通の生物の枠組みから外れたものになる。
 そして、その体内では吸血鬼の血がわずかにだけど残り続ける。


 そう、ほんのわずかであれば問題はないのだが…この世の中には恐ろしいことに、生物濃縮という言葉がある。
 元々は、害のある物質をほんのわずかだけでも食べていても、食物連鎖の頂点に行くまでに大量に捕食し、微量だったものが大量になるもの。

 それが、この吸血鬼の眷属にも起こりえる可能性があり…いや、もうすでに起きてしまったことになるだろう。

【ヂュウウウウウウウ!!】
【ブブブブ~~~ン!?】

 何が起きたのか、その場所から逃げ惑う眷属たちが混乱して叫ぶが、その間にもどんどんどの数を減らしていく。

 彼らは今、主である吸血鬼のものからいったん離れて、目的の真祖のそばにいる男に関しての情報を集めるために動いたのだが…そこに襲撃をかけられたのである。

 誰であろう、彼らを捕食できる生物たちによって。
 いくら眷属として吸血鬼の力を手に入れていたとしても、彼らの天敵には微々たる力でしかなく、次々と喰われていく。
 これが何の変哲もないただの良きものであれば問題がなかったのだが…彼らの中にある吸血鬼の血が大問題となっていた。

 喰われていく、飲み込まれていく、失われていく。
 それなのに、彼らの中にあったものが捕食者の体内へ集まっていき、濃縮されてその影響を与えていき、生物の枠組みから外れていく。

【ブブブ、ブブブブ!!(緊急事態緊急事態!!)】
【ヂュヂュヂュヂュゥ!!(オデール様へ連絡を急げ!!あれは、血を得ても我らの仲間でもなく、オデール様の眷属にもなっていない!!)
【ピプ~~~~プーン!!(不味い、このままじゃこの下水道界隈のピンチだぁぁぁ!!)

 慌てふためく眷属たち。
 急いで連絡するもの、抗戦を試みるものと別れて動くが、捕食者からすれば一つにしか見えず、全てを喰らい、そして己の血肉へとして言った結果、身を転じさせていく。

 愚か者が生み出したのは有能なものだったかもしれないのだが…今、その能力がすべて喰らいつくされていき、新たな、よりおぞましい怪物として出来上がっていく。

 眷属たちの必死の抵抗もむなしく、化け物が徐々に出来上がって…






「…え?下水道の工事のお知らせ?」
【はい。回覧板で回ってきたのですが、どうやら災害対策のための地下空洞を作るために、改修工事が施されるようですネ】

 本日の業務も終わり、アルケディア・オンラインへのログイン前に夕食をとっていると、ふと思い出したかのようにロロから回覧板を渡された。

 そこに書いてあったのは、近年の自然災害対策として、洪水を防げるかもしれない地下空洞建設計画。
 川の増水に伴って発生する氾濫や洪水を防ぐために、あらかじめしっかりとした水の逃げ場を作ろうということで、計画が立案されて近々実行されるらしい。

「へぇ、それはそれで助かる命が増えるなら良いけど…工事の音とか大丈夫かな?」
「計画が書いてあるけど…うん、大丈夫そうだよ。地下空洞作成のための掘削音とかの考慮も兼ねて静かにやるようにして、洪水以外での平常時での活用方法として、小さな地下露店見たいなものもできるようになっているって」

 単純に大きな空洞を作るだけだと、災害がない平常時には意味がないだろう。
 だからこそ、そんなときでも活用できるようにということで、様々な案も同時に進行しているらしく、祭りやライブ会場などの方向で動くようだ。
 
「これはこれで面白そうかな?工事は…来週からか」
「おお、春、地下空洞計画の中には、モンスタードールを利用したモンスターカフェなんてものもできるみたい!!犬や猫、鳥カフェなどあるけど、こういう形のも面白そうかも!」
「良いな、それ。むしろ地下でやらずに、地上ででっかいのを一つやってくれた方がよさそうだけどなぁ」

 まぁ、計画というからには何かしらの採算を考えてやっているのだろうから、細かくは言えないだろう。
 とにもかくにも、ここ最近の面倒ごとの中で舞い込んできた面白味のあるニュースに、ちょっとだけ心が軽くなるのであった…


「ふふふ、色々と見て回れるならそれはそれでいいデートに…ん?」
「どうしたの、ミーちゃん?」
「いや、今なんか…ううん、気のせい…かな?」

…何か今、凄い嫌な予感がしたけど…あの馬鹿が、とんでもないことをしでかしたわけじゃないよね?
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