アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
396 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.3-163 恐怖のズンドコ

しおりを挟む
―――ルーマニアの人里離れた奥地にある、荘厳な屋敷…ではなく、日本の下水道の奥底、密かに作られてた場所に、その人物はたどり着いていた。

「…ブローカの手を借りて、密入国をして、ここまでこれたのはよかったでドュフフフフフフ」

 特徴的な笑い声が出つつ、眷属にしたドブネズミたちを利用して盗んできたカップ麺を開封し、お湯を沸かして注ぐ。

「さて、さしもの真祖様もここに小生がいるとは思わまい。気が付かれれば、場所を移される可能性もあるゆえに、ここで隠れているが…これはこれで薄暗く狭い場所で、悪くはない。臭いや空気は最悪だが…隠れ住む場所として許容するとしよう」

 待っている間に、違法に引いてきたネット回線を接続し、PCを起動させる人物。
 彼の名前は、オデール・ドロボーン…吸血鬼であり、伯爵の名をもつが、それは自称であることは同族たちに見破られている。

 だが、それでも自分たちの生餌にしかならぬ人間どもを支配しようと企む邪悪さはあるのだが…いかんせん、現在の状況としては思わしくないところが多いだろう。

 真祖を狙ってわざわざ密入国を行い、この地下深くを居城にして追いかけてきたのはよい。
 吸血鬼の身であることを活かして裏社会で色々と手に染めまくっていたので、パスポートが発行されずともここまで来るぐらいの道の構築はできていた。
 それに、邪悪な図りごとのために利用できるものは利用できるようにということで、資格を有しておらずともある程度の電気工事や薬品の扱いには長けており、自身の居場所をより良い方向へ改造することぐらいはできたのである。

…その才能をもっと、別の方向に生かせばいいのに、そんなことが出来ないことが、愚物の性根が腐っている証明にもなっているのだろうか。

 とにもかくにも、オデールは今、ある計画を再確認していた。

「ドュフフフフフ…真祖殿の今の住処は、すでに把握した。何やら厄介な機械人形の仕掛けがあるようだが…馬鹿正直に、こちらを攻めに行く必要はあるまい。むしろ、狙いに行ける同族はいないだろう…今時のレベルの低いエクソシストでも有していないような、大昔の名のあるやつらが所持するような聖水の罠とか、どうなっているんだとかは言いたいが…」

 自身の地位向上のため、全ての力を手に入れるため、真祖を狙うオデール。
 だが、現在彼女が住まう場所を襲撃しようとしても、立ち入った瞬間に復活できないほどの攻撃を受けることが理解できたので、まともにやる気はない。
 そもそも、把握できていない部分もあるのだが、他の同族でも進入できないのではないかと思えるほどの異常な防衛力を持つ家をどうやって見つけてそこに住みに至ったのかということが疑問になる。




 それはさておき、居場所が分かっているのであれば、真正面から向かう必要はない。
 あの集会の場での逆恨みのような思いもあるが…あの時は少々のぼせ上ってしまって冷静な判断が失われていたが、まともに相手ができないような状況を作り上げる趣味もないのだ。

「狙うは一つ…何やら、真祖殿が大事にしている人間の男でいいだろう。ドュフフフフフ」

 バカみたいな防衛力を持つ要塞のような家に突撃したり、正面から再度真祖へ求婚をする行為自体が間違っている。
 目的を果たすのであれば、やりやすい方向を探り…的確に狙うことで、無駄な損失を減らす方が良いのだ。

 真祖に対しての情報を収集していたのだが、どうやら今、彼女はある人間の男性に熱を上げているらしい。
 関係性としてはいとことしての戸籍があるようだが、他の人から見ればその関係に収まる気はないのが分かっている。

 たかが、自分たちの食料として、血を奪うだけで良いような人間に対して、それほどまでの心を向ける行為は理解できないが…それでも、はっきりと判明しているのであればありがたい情報でもある。

「ドュフフフフフフフフフフフ、完全無欠、吸血界隈の中に咲き誇る深紅の花にも、ここまでわかりやすい弱点があるとはな…これを利用すれば…良いだけの話だ、ドュフフフフフフフフフフフフフフフ!!」

 不気味な笑い声を響かせ、どのようにして利用していくのか計画を再確認していく。
 同族の面汚しなどと呼ばれるようなものでもあるが、自身の欲望に人一倍正直なだけあって、欲望を満たすための手段を用意することにも慣れており、手際よく進めていく。
 繰り返すようだが、何故その才能を良い方向に生かさなかったのかと思われるが…もしも、彼にその問いを投げかければ、こう答えるだろう。

 何事も、自分さえ良ければそれでいい。
 全ては自分の下であり、使えるものを好きな時に使い、飽きれば捨てれば良いだけのこと。
 それだけのことであり、それ以外に人は自分の才能を扱うのか…と。

【ジュケケケケケ】
【キキゴギキィィ!!】
「おおっと、そうだそうだ、お前たちの餌の時間だったか…吸血鬼の眷属と化しているのに、盗んだ血液パックより、こっちのゴミくずが良いんだったか」

…手駒はしっかり確保して、こちらも有効活用を行う。
 用意すればするほど良いことのはずなのだが、何か別の取り返しのつかないことをしているような気がしなくもないのだが…いや、気のせいなだけで考えなくていいだろう。
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...