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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.3-閑話 我らが移動拠点

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…ロブハウスを求めている人は、得た後にどのような改造を施しているのか。
 大樹の村でのクエスト後に、参考にしようと思って探してみると、ちょうどロブハウス展覧会という名のプレイヤーイベントが開かれているところがあったために、見に来てみたが…


「…思った以上に、凄い改造を施している人が多い」

 なんというべきか、家に関する情熱を注ぐ人たちの凝りようがすさまじい。


 ロブスターな外見からログハウスな外見に変えるなどの改造はまだ序の口。
 人によってはある程度似たようなものでも全く別物にも、色々と改造を施せてしまうようだ。


「ハサミの意匠はそのままに、ハサミから連想して陸上の、猛毒を持つサソリハウス…」

 ふっくらとしていた上部の部分を平べったくして、後方のほうに削った部分を回したのか尻尾をはやしており、その先からはサソリ要素を魅せるためかてらてらとした毒液のような液体を垂らして外見を近づけている。
 なお、流石に移動拠点が猛毒を発するのは何かと不味いのもあってなのか、垂れている液体は毒ではなく着色された回復薬のようであり、いざとなれば自身にブスっと刺して強制的な回復を施すらしい。


「こちらは、ハサミつながりで似たような甲殻類のカニに…守りをガッチガチに固めたクラブハウスか」

 一昔かもっと前にはやったらしいアプリの名前にも聞こえるが、こちらは足が滅茶苦茶細長い深海のタカアシガニの外見をしたカニの移動拠点。
 細い足に変えながらもその中身にはかなりの強度を持った金属で覆われているようで、見た目よりもはるかに頑丈な強度を誇っているそうだ。
 足を細長くしたことで高い位置から周囲を見渡せる展望性も持つことになり、索敵から観光までいろいろ役立てるようにしたらしい。


「さらに上には上がいたが…すでにこれ、ハウスなのだろうか」

 人によっては、パーティを組んで色を合わせた移動拠点にしていたりする。
 お揃いにすることで団結力やその見た目の協調を行うのだろうが…


「「「「「超甲殻五体合体!!『ギガントロブスターR』!!」」」」


…どこぞやの変態戦隊顔負けの、立派な戦隊ものの巨大合体ロボットにしてしまう猛者までいたらしい。
 しかも、ちゃんとショベルカーや消防車のような外見にしたロブスターにしており、よくある何かしらの乗りものをモチーフにした合体ロボ風という匠の技を見たような気がする。

「でも、ああいいうのが良いよな…検討するべきだろうか」

 現在進行形で改造待ちをしている、ハルのロブハウス。
 その改造の方向性の参考のためにやってきたが、結構いい収穫を得たようであった…









 そしてハルが神域のほうに戻ってロロに要望を伝えていたそのころ。
 現実世界の家の中では、ミントがある手紙を読んでいた。


「…むぅ、面倒なのが来たかも」

 今や居候のような身の上だが、しっかりと自身の住所をこの家にしているから、様々なミントあての手紙がここに来るようにはなっていた。
 だが、そういった手紙は必ずしもいいものばかりではなく…時々、面倒ごとの種になるようなものも紛れ込んでくることがある。

 諸外国で暮らしていた時も、どうやってか住所を突き止めて送ってくる輩もおり、中身を読むのも嫌なものがある。

 マルチ商法などの怪しい勧誘やラブレターなどはまだ良い。前者はかかる気もないし、後者は潰しているので問題はない。
 だが、そういったものを潜り抜けてのもの…真祖という立場にいるからこそ、様々な面から狙う輩もいるようだ。

「オデール・ドロボーン吸血伯爵…本家本元由緒正しい吸血鬼の家とか、そのまますぎて疑いたくなるかも」
  
 吸血鬼界隈でも色々と派閥があるが、どうやら今回来たこの手紙の主は、吸血鬼の貴族的なものを自称しているらしい。
 正直言って吸血鬼の血統とかどうでも良いところであり、このご時世堂々と名乗ると痛々しい中二病の感じがしており、近寄りがたくなるもの。
 そういった意味では、ある意味またもや行方不明中な中三病あたりが仲良くなれそうな相手なのかもしれないが、よこしてきた内容が非常にキモイ。

「よし、見なかったことにしよう。燃やそうかな」

 届いたけど見なかったことにする。
 あったとしても、もらわなかったことにする。

 どうせ、吸血鬼の上位存在でもある真祖の前に、堂々と偉ぶってやってくるほどの勇気もないだろうし、来たらそれはそれで無謀な馬鹿だとしか言いようがない。

 自身にとってみる価値もないものは灰にしていき、ミントは届いた手紙の整理を続けるのであった…

「…えっと、こっちはあの研究員の論文と、これは仲良かったフロリアンさんの近況報告と、えっと、あ、これハル宛だから私のじゃないけど…ん?ラブレター…ちがう、普通に呪いの手紙だからこれはぽいっと捨ててと」


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