386 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~
ver.4.3-154 事情があれども、乱すのであれば
しおりを挟む
…サイキック・ゴールデンオーガは水球の中に浮かびながら、自身のテレパシーによって従えているオーガたちの五感を利用し、周辺の状況を探っていた。
【…ゴルルルゥ】
集めた情報によれば、恐らくあの大樹の村とかいうエルフたちの居住地には今、プレイヤーと呼ばれる者たちが集結しつつあるらしい。
自分たちを蹂躙して見せた無茶苦茶なエルフの姿はどうやら小さくなっており、相当力を失っている様子。
つまり、力を失ったからこそ外部の者たちを利用して動いているのだろう。ふざけたような存在とはいえ、あれでも一応、エルフたちの長だけあって守るべきために動けるようだ。
その気持ちはわからなくもない。自分もまた、この群れを保つために使えるものがあれば徹底的に利用すればいい話だ。
だが、相手がそれを利用しきる前にこちらが動くべきだろう。
プレイヤーがどの程度のものなのか、サイキック・ゴールデンオーガは別の場所で知っているのだ。
相手がプレイヤーを利用する前に、こちらの方から先に襲撃を仕掛けるべきか…と考えていた時だった。
ぽつ、ぽつ、ぽぽつつ…
【ゴルァ?】
ふと、水滴が落ちる音がオーガたちから共有されてきたので空のほうに目を向けさせれば、どうやら雨雲が発生しているらしい。
だが、おかしな話だ。先ほどまで晴れ渡るような青空で、雨雲の姿なんぞ見ていなかった。
雨が降ると、火の気の多いオーガたちの活動が鈍りそうだが…問題はないだろう。やろうと思えば、周辺の水をこの水球に集めて阻害するものを奪うことが出来る。
でも、この急激な天候の変化はおかしいだろう。
何が起きたのか、オーガたちの目で探ろうとした…その時だった。
【ゴゲガァ!?】
【ギャグェェェ!!】
急に、雨を浴びたオーガたちが苦しみ始めた。
火を纏っている者だけではなく、把握しているオーガたちの中で雨に打たれた者たちが地面に伏し、痙攣し、中には耐えきれずに爆散したりして失われていく。
サイキック・ゴールデンオーガは自身の水球が守りとなり、下手な毒も混ざらないようにしているために影響を受けていないが、この様子を見ると雨に何か原因があるのだろう。
もしや、雨降らせたふりをして猛毒でも仕込んでいたのだろうか?だが、その方法を取ると雨が降っていく範囲…森自体にも毒が染み込む結果になり、後々自分たちで苦しむ羽目になるはずである。
プレイヤーたちがそんなこともお構いなしに、無差別でやってきたのかと思ったのだが、どうも違う様子だ。
軽く成分を分析してみると、降ってきている雨水は猛毒ではない。
それなのになぜオーガたちが苦しんでいるのか観察すると、口の中に雨水がちょっとでも入ったものばかりが苦しんでいるようだ。
つまり、攻めてきているこの雨水は毒ではなく、相当ヤバいゲテモノの味をした液体。
共有していないが、この苦しみようからは明らかに相当の劇物になっていると予想できる。
要は、物凄く不味い液体の雨が降り注いでおり、濡れていくうちに自分たちの口の中に入って悶え苦しんでいるのだ。
しかも、何かの薬草の成分などが混ざっているせいなのか木々への毒になるようなものにもなっておらず、味覚を持つ生物だけの限定的な殲滅兵器である可能性が高い。
【ゴルルルルルァァァァ!!】
ひとまずネタが分かれば、後は対処がしやすいものだ。
雨として降ってきて全身を濡らしてきても、それを味覚で感じなければいい話。
ゆえに、口を防がせたり手遅れな同族へ味覚を押し付けるなどして被害を食い止め…どうにか、この雨で全滅は免れただろう。
それでも、一気に戦力を奪われたのは変わらない事実。
いったい何を用いて、こんな短時間で劇物の雨を降らせることが出来たのだろうか。
すぐさま襲撃してなかったことにしていきたいのだが、相手の出方が分からない以上、下手にすぐに出るのは不味いだろう。
ゆえに、サイキック・ゴールデンオーガは他の生き残っているオーガたちの中で、偵察向きの者たちをすぐに向かわせて情報を収集し始めるのであった…
【…ゴルルルゥ】
集めた情報によれば、恐らくあの大樹の村とかいうエルフたちの居住地には今、プレイヤーと呼ばれる者たちが集結しつつあるらしい。
自分たちを蹂躙して見せた無茶苦茶なエルフの姿はどうやら小さくなっており、相当力を失っている様子。
つまり、力を失ったからこそ外部の者たちを利用して動いているのだろう。ふざけたような存在とはいえ、あれでも一応、エルフたちの長だけあって守るべきために動けるようだ。
その気持ちはわからなくもない。自分もまた、この群れを保つために使えるものがあれば徹底的に利用すればいい話だ。
だが、相手がそれを利用しきる前にこちらが動くべきだろう。
プレイヤーがどの程度のものなのか、サイキック・ゴールデンオーガは別の場所で知っているのだ。
相手がプレイヤーを利用する前に、こちらの方から先に襲撃を仕掛けるべきか…と考えていた時だった。
ぽつ、ぽつ、ぽぽつつ…
【ゴルァ?】
ふと、水滴が落ちる音がオーガたちから共有されてきたので空のほうに目を向けさせれば、どうやら雨雲が発生しているらしい。
だが、おかしな話だ。先ほどまで晴れ渡るような青空で、雨雲の姿なんぞ見ていなかった。
雨が降ると、火の気の多いオーガたちの活動が鈍りそうだが…問題はないだろう。やろうと思えば、周辺の水をこの水球に集めて阻害するものを奪うことが出来る。
でも、この急激な天候の変化はおかしいだろう。
何が起きたのか、オーガたちの目で探ろうとした…その時だった。
【ゴゲガァ!?】
【ギャグェェェ!!】
急に、雨を浴びたオーガたちが苦しみ始めた。
火を纏っている者だけではなく、把握しているオーガたちの中で雨に打たれた者たちが地面に伏し、痙攣し、中には耐えきれずに爆散したりして失われていく。
サイキック・ゴールデンオーガは自身の水球が守りとなり、下手な毒も混ざらないようにしているために影響を受けていないが、この様子を見ると雨に何か原因があるのだろう。
もしや、雨降らせたふりをして猛毒でも仕込んでいたのだろうか?だが、その方法を取ると雨が降っていく範囲…森自体にも毒が染み込む結果になり、後々自分たちで苦しむ羽目になるはずである。
プレイヤーたちがそんなこともお構いなしに、無差別でやってきたのかと思ったのだが、どうも違う様子だ。
軽く成分を分析してみると、降ってきている雨水は猛毒ではない。
それなのになぜオーガたちが苦しんでいるのか観察すると、口の中に雨水がちょっとでも入ったものばかりが苦しんでいるようだ。
つまり、攻めてきているこの雨水は毒ではなく、相当ヤバいゲテモノの味をした液体。
共有していないが、この苦しみようからは明らかに相当の劇物になっていると予想できる。
要は、物凄く不味い液体の雨が降り注いでおり、濡れていくうちに自分たちの口の中に入って悶え苦しんでいるのだ。
しかも、何かの薬草の成分などが混ざっているせいなのか木々への毒になるようなものにもなっておらず、味覚を持つ生物だけの限定的な殲滅兵器である可能性が高い。
【ゴルルルルルァァァァ!!】
ひとまずネタが分かれば、後は対処がしやすいものだ。
雨として降ってきて全身を濡らしてきても、それを味覚で感じなければいい話。
ゆえに、口を防がせたり手遅れな同族へ味覚を押し付けるなどして被害を食い止め…どうにか、この雨で全滅は免れただろう。
それでも、一気に戦力を奪われたのは変わらない事実。
いったい何を用いて、こんな短時間で劇物の雨を降らせることが出来たのだろうか。
すぐさま襲撃してなかったことにしていきたいのだが、相手の出方が分からない以上、下手にすぐに出るのは不味いだろう。
ゆえに、サイキック・ゴールデンオーガは他の生き残っているオーガたちの中で、偵察向きの者たちをすぐに向かわせて情報を収集し始めるのであった…
11
お気に入りに追加
2,031
あなたにおすすめの小説
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる