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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~
ver.4.3-154 事情があれども、乱すのであれば
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…サイキック・ゴールデンオーガは水球の中に浮かびながら、自身のテレパシーによって従えているオーガたちの五感を利用し、周辺の状況を探っていた。
【…ゴルルルゥ】
集めた情報によれば、恐らくあの大樹の村とかいうエルフたちの居住地には今、プレイヤーと呼ばれる者たちが集結しつつあるらしい。
自分たちを蹂躙して見せた無茶苦茶なエルフの姿はどうやら小さくなっており、相当力を失っている様子。
つまり、力を失ったからこそ外部の者たちを利用して動いているのだろう。ふざけたような存在とはいえ、あれでも一応、エルフたちの長だけあって守るべきために動けるようだ。
その気持ちはわからなくもない。自分もまた、この群れを保つために使えるものがあれば徹底的に利用すればいい話だ。
だが、相手がそれを利用しきる前にこちらが動くべきだろう。
プレイヤーがどの程度のものなのか、サイキック・ゴールデンオーガは別の場所で知っているのだ。
相手がプレイヤーを利用する前に、こちらの方から先に襲撃を仕掛けるべきか…と考えていた時だった。
ぽつ、ぽつ、ぽぽつつ…
【ゴルァ?】
ふと、水滴が落ちる音がオーガたちから共有されてきたので空のほうに目を向けさせれば、どうやら雨雲が発生しているらしい。
だが、おかしな話だ。先ほどまで晴れ渡るような青空で、雨雲の姿なんぞ見ていなかった。
雨が降ると、火の気の多いオーガたちの活動が鈍りそうだが…問題はないだろう。やろうと思えば、周辺の水をこの水球に集めて阻害するものを奪うことが出来る。
でも、この急激な天候の変化はおかしいだろう。
何が起きたのか、オーガたちの目で探ろうとした…その時だった。
【ゴゲガァ!?】
【ギャグェェェ!!】
急に、雨を浴びたオーガたちが苦しみ始めた。
火を纏っている者だけではなく、把握しているオーガたちの中で雨に打たれた者たちが地面に伏し、痙攣し、中には耐えきれずに爆散したりして失われていく。
サイキック・ゴールデンオーガは自身の水球が守りとなり、下手な毒も混ざらないようにしているために影響を受けていないが、この様子を見ると雨に何か原因があるのだろう。
もしや、雨降らせたふりをして猛毒でも仕込んでいたのだろうか?だが、その方法を取ると雨が降っていく範囲…森自体にも毒が染み込む結果になり、後々自分たちで苦しむ羽目になるはずである。
プレイヤーたちがそんなこともお構いなしに、無差別でやってきたのかと思ったのだが、どうも違う様子だ。
軽く成分を分析してみると、降ってきている雨水は猛毒ではない。
それなのになぜオーガたちが苦しんでいるのか観察すると、口の中に雨水がちょっとでも入ったものばかりが苦しんでいるようだ。
つまり、攻めてきているこの雨水は毒ではなく、相当ヤバいゲテモノの味をした液体。
共有していないが、この苦しみようからは明らかに相当の劇物になっていると予想できる。
要は、物凄く不味い液体の雨が降り注いでおり、濡れていくうちに自分たちの口の中に入って悶え苦しんでいるのだ。
しかも、何かの薬草の成分などが混ざっているせいなのか木々への毒になるようなものにもなっておらず、味覚を持つ生物だけの限定的な殲滅兵器である可能性が高い。
【ゴルルルルルァァァァ!!】
ひとまずネタが分かれば、後は対処がしやすいものだ。
雨として降ってきて全身を濡らしてきても、それを味覚で感じなければいい話。
ゆえに、口を防がせたり手遅れな同族へ味覚を押し付けるなどして被害を食い止め…どうにか、この雨で全滅は免れただろう。
それでも、一気に戦力を奪われたのは変わらない事実。
いったい何を用いて、こんな短時間で劇物の雨を降らせることが出来たのだろうか。
すぐさま襲撃してなかったことにしていきたいのだが、相手の出方が分からない以上、下手にすぐに出るのは不味いだろう。
ゆえに、サイキック・ゴールデンオーガは他の生き残っているオーガたちの中で、偵察向きの者たちをすぐに向かわせて情報を収集し始めるのであった…
【…ゴルルルゥ】
集めた情報によれば、恐らくあの大樹の村とかいうエルフたちの居住地には今、プレイヤーと呼ばれる者たちが集結しつつあるらしい。
自分たちを蹂躙して見せた無茶苦茶なエルフの姿はどうやら小さくなっており、相当力を失っている様子。
つまり、力を失ったからこそ外部の者たちを利用して動いているのだろう。ふざけたような存在とはいえ、あれでも一応、エルフたちの長だけあって守るべきために動けるようだ。
その気持ちはわからなくもない。自分もまた、この群れを保つために使えるものがあれば徹底的に利用すればいい話だ。
だが、相手がそれを利用しきる前にこちらが動くべきだろう。
プレイヤーがどの程度のものなのか、サイキック・ゴールデンオーガは別の場所で知っているのだ。
相手がプレイヤーを利用する前に、こちらの方から先に襲撃を仕掛けるべきか…と考えていた時だった。
ぽつ、ぽつ、ぽぽつつ…
【ゴルァ?】
ふと、水滴が落ちる音がオーガたちから共有されてきたので空のほうに目を向けさせれば、どうやら雨雲が発生しているらしい。
だが、おかしな話だ。先ほどまで晴れ渡るような青空で、雨雲の姿なんぞ見ていなかった。
雨が降ると、火の気の多いオーガたちの活動が鈍りそうだが…問題はないだろう。やろうと思えば、周辺の水をこの水球に集めて阻害するものを奪うことが出来る。
でも、この急激な天候の変化はおかしいだろう。
何が起きたのか、オーガたちの目で探ろうとした…その時だった。
【ゴゲガァ!?】
【ギャグェェェ!!】
急に、雨を浴びたオーガたちが苦しみ始めた。
火を纏っている者だけではなく、把握しているオーガたちの中で雨に打たれた者たちが地面に伏し、痙攣し、中には耐えきれずに爆散したりして失われていく。
サイキック・ゴールデンオーガは自身の水球が守りとなり、下手な毒も混ざらないようにしているために影響を受けていないが、この様子を見ると雨に何か原因があるのだろう。
もしや、雨降らせたふりをして猛毒でも仕込んでいたのだろうか?だが、その方法を取ると雨が降っていく範囲…森自体にも毒が染み込む結果になり、後々自分たちで苦しむ羽目になるはずである。
プレイヤーたちがそんなこともお構いなしに、無差別でやってきたのかと思ったのだが、どうも違う様子だ。
軽く成分を分析してみると、降ってきている雨水は猛毒ではない。
それなのになぜオーガたちが苦しんでいるのか観察すると、口の中に雨水がちょっとでも入ったものばかりが苦しんでいるようだ。
つまり、攻めてきているこの雨水は毒ではなく、相当ヤバいゲテモノの味をした液体。
共有していないが、この苦しみようからは明らかに相当の劇物になっていると予想できる。
要は、物凄く不味い液体の雨が降り注いでおり、濡れていくうちに自分たちの口の中に入って悶え苦しんでいるのだ。
しかも、何かの薬草の成分などが混ざっているせいなのか木々への毒になるようなものにもなっておらず、味覚を持つ生物だけの限定的な殲滅兵器である可能性が高い。
【ゴルルルルルァァァァ!!】
ひとまずネタが分かれば、後は対処がしやすいものだ。
雨として降ってきて全身を濡らしてきても、それを味覚で感じなければいい話。
ゆえに、口を防がせたり手遅れな同族へ味覚を押し付けるなどして被害を食い止め…どうにか、この雨で全滅は免れただろう。
それでも、一気に戦力を奪われたのは変わらない事実。
いったい何を用いて、こんな短時間で劇物の雨を降らせることが出来たのだろうか。
すぐさま襲撃してなかったことにしていきたいのだが、相手の出方が分からない以上、下手にすぐに出るのは不味いだろう。
ゆえに、サイキック・ゴールデンオーガは他の生き残っているオーガたちの中で、偵察向きの者たちをすぐに向かわせて情報を収集し始めるのであった…
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