アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
359 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-0.2 ミステリートレイン

しおりを挟む
シュウ~~~、ボッボッボッボ…シュ~

 蒸気の音を立てて、目の前で停車している列車は、今回僕らが乗る予定のミステリートレイン。
 電気機関車とかではなく、昔ながらの蒸気機関車が採用されているようで、こうやって目の前で見ると停車しているだけでも力強さがあるだろう。

「番号を見るとC62型…客車が大体10両か」
「結構レトロだけど、ミステリートレインらしいといえばそうかも」

 なお、某銀河鉄道のようなものはないらしいが、この車両自体見た目こそ蒸気機関車の編成に見えて、中身は結構最新のものになっているらしい。
 蒸気は演出用に仕掛けられており、中身としては電気機関車のようなものらしい。それでもここまでの再現度の高さは感嘆に値するだろう。

 
 乗車してみると、こちらも普通の客車っぽい内装だが…

「…うわぉ、すっごいふかふかなんだけど」
「これ、人を駄目にするクッションに近いかも…」

 硬めの椅子になっているのかと思えば、滅茶苦茶沈み込むというか包まれるというか、座り心地が良すぎる。
 ふんわりとする感触で、長時間座り続けても問題なさそうに思えてくる。

「しかも、この車両の椅子部分だけでも一般販売されているようだね」
「納得するけど、お値段もそこそこするよ」

 なお、客車の編成としては4両目が食堂車、6両目が娯楽施設を詰め込んだ娯楽車、9両目にお風呂かあって、最後尾が寝台車で、それ以外が普通の客車風のようなものになっているらしい。
 食堂車や寝台車はまだわかるけど、娯楽施設を詰め込んでいるとかお風呂とか…見た目は全部同じような客車なのに、どうなっているのだろうか。

 ついでにいうのであれば、僕ら以外にも他のミステリートレインに乗車するお客はいるようで、発車までの間にあちこち探索している様子。
 ああいうのもありだけど、僕らはもうちょっと座って落ち着いていたい。

「むしろ、ダメにするクッションのような椅子から離れにくい」
「これは確かに居心地は良いんだけど、離れにくくなるのが大問題なのでは…」

 そのせいで発車時刻になるまで、僕もミーちゃんもその魔性の感触に囚われてしまい、動けないのであった…









【…思ったよりも、早く反応がありましたネ】

 蒸気を上げて出発した揺れで、どうにかこうにか春たちが椅子から立ち上がって車内の探索を楽しもうとしていたそのころ。
 まだ昼間にもかかわらず、薄暗い室内にてロロは確認していた。

【上2、地上3、地下4ですか…ハッキング技術からも怪しんでましたが、ただの相手ではなさそうデス】

 春には分からない、いつの間にか増設された地下室の天井に示される、周辺一帯の状況を表したレーダーの結果を見てそうつぶやく。

 運営が社本社への、データ抜き取りのハッキング。
 幸いなことにコピー程度なために情報を失うことはなかったようだが、抜き取られたデータが問題しかない。
 何しろ、重要なシステム情報とかではなく、神系スキルの持ち主に関しての情報であり、その詳細を記録したデータが狙われていたのだ。

 ロロ自身も詳しくは知らないが、一部には何か秘密があるらしく、その部分に関しての情報が盗られており…その中に、黒き女神に関してのデータもあったのだ。

 近日中に行動される可能性が示唆されていたが、予想通り相手は動いてきたようだ。
 単独の犯人ではなく、複数…いや、おそらくは何か別の組織がバックについているとみておかしくはないだろう。


 オンライン会社も、流石に市場独占ではなく、中には完全に敵対を示すとこともあるのだから。


【その中でも、技術・行動面で動き出せるのは限られますが…こうやって直接来るとは、単純すぎますネ。大体、主様は今は旅行中なので出会うこともないでしょうが…いや、もしや…】

 何かを試みるために、接近してきているのは理解できる。
 ただ、本日は春が外出しており、接触する機会はないと思っていたが…それにしても、タイミングが良すぎるだろう。

 不在なのを前もって、探って狙っていた?違う、それをするにしても情報収集からの時間が短い。
 でも、こうやって都合よく不在な時にとは…このことを予想して、あえてツアーを利用したのではないか?
 最初から、こうなることが分かっていて、本人たちも知らない間に動かすなどとできる人は…可能性としては色々とありえてしまうので、何とも言えないところがある。

【なんにしても、留守を任されましたが…外出先で行動される可能性もありますし、保険を少々かけているので問題はないでしょう】

 今はただ、この平穏な時を邪魔しようとする奴がいるならば排除するのみである。
 そう思い、空陸地下すべてに対抗するために、仕掛けを作動させていくのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...