356 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~
ver.4.2-141 生きている以上、悩みというのはどこにでも出るものなのさぁ
しおりを挟む
【…亡くしたものを思い出し、ひどく苦しくなったが…まさか、この惑星全体を乾燥させられ、かぴかぴに干からびる苦しみのほうが勝るとは…人生ならぬモンスター生というのはよくわからないものだな…】
「あー…本当にすみません。干上がらせっちゃって」
「こちらも、トラウマを刺激してすまなかった…大丈夫だろうか」
【もう、良い。一時、死線をさまよえばどうでもよくなるものだ…】
ぶしゃぶしゃと放水を受け、何とか生き返った惑星ルカドンの話せる部位…色々とややこしいところがあるからルカドンとその名前でくくるが、なんとか乾燥ワカメが水を得たかのように復活してくれて、僕らは安堵していた。
黒き女神の手によって、惑星全土を大乾燥させて海を干上がらせて見つける手段を取ったが、その代償にルカドンの触覚はスルメイカのごとく、干からびてしまっていた。
何とかグレイ号の放水機能によって復活してくれたとはいえ、結構危ない状態だっただろう。
【だが、おかげで二度と会えぬはずであった、我が友の姿を幻の様な姿で再び見ることはできたのは嬉しかった。何故か、干上がった大地のはずなのに水を湛えた美しい花畑と一緒の川の向こうで、滅茶苦茶焦って叫んでいたが…ふふふ、奴の焦る姿を見たのは久しぶりだな】
「それ、臨死体験しているのでは…」
「三途の川を見ちゃったのか…」
何とはともあれ、トラウマによって刺激されて深く沈みこんでいたルカドンだったが、この大乾燥で死線をさまよった結果、二度と会えないはずの友人、ルカドンをかつてテイムした人に幻視のような形とはいえ再び会えたことで、トラウマが多少癒えたらしい。
結果オーライというべきか、良い方向に旨い事転んで行った…大転倒しすぎたような気がしなくもないが、いつの間にか惑星が最終的に爆発する緊急クエストが消え失せていたので、亡くなる道は消えたようだ。
その代わり、ちょっと荒療治すぎたせいなのかクエスト達成ということにもならず、クエストの自然消滅という形になってしまったようで、達成報酬とかも失われていた。
まぁ、女神の力が無茶苦茶すぎたからなぁ…大きすぎる力の代償というべきか、使いどころかが難しすぎたのもあるのだろう。これもまたいい経験として考えるべきか。
とにもかくにも、三途の川を渡りかけるというやばめの体験をやってしまったが、そのおかげで過去に失った友人に再び会うことができて、トラウマは癒された。
いつの間にか空にたくさん浮かんでいた太陽も消え失せたが、あの恐ろしいほどの大嵐は起こることもなく、不思議とどこからともなく海がまた戻ってきて、再び海王惑星は潤った。
【そもそもの話が、我を呼び出したものの宴の中を見て、トラウマを思い出したのが原因だからな…こちらのほうが、すまなかったと思う】
海からひょっこりと出るようにして、着水したグレイ号の甲板へ身を乗り出して乗りかかるルカドン。
既にもう瀕死状態から回復しきったついでに、憑き物が落ちたかのようにすっきりしているようにも見えるだろう。
…もしや、惑星そのものだったからか乾燥が思いもがけない刺激になったのか?
ありとあらゆる星々の海があるルカドンだが、毒の海も当然あり、それが気が付かないうちに惑星自身も侵していたのではないだろうか。
フグや百足は自分の毒に侵されないが…ルカドンは厳密にいえば海のほうではなく、中身の惑星であれば、毒の海があればやられていた可能性も否定できない。
それが今回の大干ばつ状態で、毒素も一緒に蒸発していたのであれば…ありえなくもないだろう。
こっそりとロロに探ってみてもらったのだが、ルカドン全体の海の割合で、改めて探ってみたら毒の海部分の面積が狭まっているらしいし、否定できない話だ。
そう考えると、またしばらく経って毒に侵されて同じようなことになりかねないというのもあるが…そこはもう、今後の話なので今の僕らが同行できる話ではない。
【そうだ、思い出したがそこのもの…ああ、女神のものではないそちらの男。確か、我をテイムしようとしていたな】
「ん?」
「ああ、そういえば中三病さんはそもそもルカドンをテイムしようとしていたんだっけ」
ふと、思い出したかのようにルカドンがそうつぶやき、中三病さんのほうに顔を向けた。
【…残念ながら、テイム条件は満たされていたが、我はもう二度とあの友以外のものと契りを交わす気はない。だから、テイム失敗と言いたいところだが…それだけの条件を揃えて、我が勝手にトラウマを思いだして迷惑をかけた責任はある】
中三病さんにテイムされる気はないらしいが、何か思いついたことがあるようだ。
いったん海の中に引っ込んだかと思えば、すぐに何かを口の中に入れて戻ってきた。
【もぐぼ…ぼべっ】
ズズウゥン!!
「うわっ!!」
「なにこれ、でかい卵!?」
中三病さんの前に吐き出されたのは、かなり巨大な卵。
しかも表面がこう、殻という感じのものではなく、どちらかといえばイカやタコっぽい感じのやつらが生むような卵であり、何やらあちこちに血管が浮き出ており、脈動して生きていることを示していた。
【これは、我が海で産み落とされる命の中で、まともに産まれては生態系が滅茶苦茶になりかねないようなものを、いざという時に使用できないかと思い、保管しているものの一つだ。たしか、宇宙の海を泳ぐ巨大クラゲ…『プラミティブ・スペースジェリーフィッシュ』だったか】
―――――
『プラミティブ・スペースジェリーフィッシュ』
アルケディア・オンラインに実装されているモンスターの中で、特大サイズのモンスターの一つとして数えられる巨大な宇宙クラゲ。
宇宙の海を漂い、気に入った海がある星の卵を産み落とし、旅を続けていく存在。
だが、ただのクラゲのようにふよふよと漂っているわけではなく、サイズによっては星を喰らうこともあるといわれるほどのモンスターである。
―――――
「とんでもないモンスターの卵なんだけど!?」
【うむ、それをやろうというわけだ。我のようなものをテイムしたいという目的があったのであれば、それに近いものであればいいと思ってな…不満か?】
「いえいえいえいえいえ!!とんでもないです!!ありがとうございます!!」
まさかまさかの、テイム失敗からの新しい強力なモンスターの獲得である。
イベントで手に入れるようなものではないので、生まれた瞬間にテイムされているわけではないとは思うのだが、ルカドン自身がなんやかんやの力を行使したらしく、既に卵は中三病さんのテイムモンスター枠に収まっていたようだ。
「とんでもないものを、手に入れることができたね中三病さん」
「ああ、ルカドンをテイムできないのは悔しかったが…それでも、得るものがでかすぎだろ!!」
大きく成長していけば、星を喰らう可能性のあるモンスター。
そんなものをテイムして、扱っていけるのかが不明だが…シアの元となったボディを作成した執念のように、どうにかしてしまうのだろう。
しかし、巨大宇宙クラゲか…そういえば、ティラリアさんって星間国家を樹立させたとかいう噂を聞いたことがあるけど、そう考えると星を食べられるようなやつを仲間にできたのは、大幅すぎる戦力の強化ではなかろうか。
いやっほーいわっふぉーいと喜ぶ中三病さん。
喜びたくなる気持ちは分かるが…結構重量があるので、早めに中三病さんのハウス内のほうにしまってほしい。船が前のほうに傾いているんだけど。
【それとだな…女神のものだったか。あ、いや、この感じは…ふむ、そなたにも何かあったほうが良いか?】
ズンドコと喜びの舞を踊る中三病さんを見ていると、ふと、ルカドンがそう僕に問いかけてきた。
「んー…いや、別に良いかな?僕のほうはルカドンの姿は見て見たいかもと思ったけど、テイムする気はないよ。そもそも、惑星を干上がらせるような真似をしちゃったしね…」
【ううむ…だが、嵐を収めるために、我を干上がらせるほどの行動を見せたのだからな…下手をすればこの星にいるもの全てを巻き込んで無に帰ろうとしていた我を、干し魚のようにさせたようだが、止めるだけの偉業を成しえたのだからな。何もないというのもなんだが…そうだな…ああ、そうだ、ならばこれがいいか】
また何かを思いついたかのように海の中にもぐり、再び口の中に入れて運んできた。
甲板に吐き出してもらうと、中三病さんと違って今度は卵ではない。
「何、これ?」
【かつて、我をあがめていた民たちが使っていた道具の一つ、『ルカドンの大斧』と我が名を付けられている業物だ】
吐き出したのは、かなり大きなバトルアックスの類だが、もってみると見た目ほどの重量はなく、振り回しやすいもの。
基本的に糸使いと錬金術で戦闘するので、扱う機会はそうそうないとは思うのだが…サブウェポンとしては、これはこれで悪くはないか?
「基本ステータス10%上昇と、水属性に対する耐性が30%上昇し、液体に関する属性攻撃なら色々と可能になる…か。へぇ、ルカドンの名が付くだけあって、様々な海の力も扱えるようになるって、すごい武器かも」
その気になれば毒の海を纏って猛毒攻撃に変えたり、癒しの海の力を纏って切りかかった相手を回復させるなど、臨機応変に対応しやすいもののようである。
その便利性ゆえに、一度海の力を切り替えると、次に別の海のものに変えるには20分ほどの長めのクールタイムが存在するようだが、状況によっては重宝するかもしれない。
先日の不死鳥との戦闘時に欲しかったかもなぁ…でもまぁ、過ぎたことだし、今後扱う機会は増えるかもしれない。
「あ、これプレイヤー限定装備じゃなくてテイムモンスターにも装備できるのか」
場合によっては他の皆に手渡して、扱ってもらうのもありだろう。ただ、バトルアックスだし技量とか体格を考えると、セレアとかシア、あるいはコユキの雪兵召喚で呼び出した兵士たちに扱ってもらうって手もあるか。
今後の戦略も増えたし、僕らは無事にルカドンに別れを告げて、去ることができたのであった…
「…あ、しまった。ミーちゃんと改めて楽しめないかと思ったのに、自然と惑星を出て解散してしまった」
【また行けばいいのではないでしょうカ?】
「分かれてすぐに戻るのもなぁ…仕方がない、現実のほうでミステリートレインに誘おうかな」
何のために、あの武闘大会を勝ち抜いたと思うのか。
こういう時に使えるし、今回のルカドンでの騒動は振り返ってみると、そう悪いものではなかったと思えるのであった。
【あ、そういえば主様。これ見ましたカ?】
「え?…おいおいおいおいおいおいおい!?なにこれ、黒き女神奇跡のグラビアって何!?武闘大会会場って一応、撮影禁止エリアとか設けられていたって聞くんだけど!?」
【どうやらすれすれの範囲で潜り込み、撮影した輩がいたようですネ。主様がマントで覆い隠していた部分がありましたが、それでも激しい動きの中で見える部分を根性で撮影した様子がうかがえマス】
「きわどそうな格好になっているのもあるんだが!!こんなわずか数秒レベルでしかないようなポーズで撮られているみたいだし、誰が出したんだこれぇぇぇぇ!!すぐに運営に通報してぇぇぇぇぇぇ!!」
…前言撤回。悪いものしかなかった。
「あー…本当にすみません。干上がらせっちゃって」
「こちらも、トラウマを刺激してすまなかった…大丈夫だろうか」
【もう、良い。一時、死線をさまよえばどうでもよくなるものだ…】
ぶしゃぶしゃと放水を受け、何とか生き返った惑星ルカドンの話せる部位…色々とややこしいところがあるからルカドンとその名前でくくるが、なんとか乾燥ワカメが水を得たかのように復活してくれて、僕らは安堵していた。
黒き女神の手によって、惑星全土を大乾燥させて海を干上がらせて見つける手段を取ったが、その代償にルカドンの触覚はスルメイカのごとく、干からびてしまっていた。
何とかグレイ号の放水機能によって復活してくれたとはいえ、結構危ない状態だっただろう。
【だが、おかげで二度と会えぬはずであった、我が友の姿を幻の様な姿で再び見ることはできたのは嬉しかった。何故か、干上がった大地のはずなのに水を湛えた美しい花畑と一緒の川の向こうで、滅茶苦茶焦って叫んでいたが…ふふふ、奴の焦る姿を見たのは久しぶりだな】
「それ、臨死体験しているのでは…」
「三途の川を見ちゃったのか…」
何とはともあれ、トラウマによって刺激されて深く沈みこんでいたルカドンだったが、この大乾燥で死線をさまよった結果、二度と会えないはずの友人、ルカドンをかつてテイムした人に幻視のような形とはいえ再び会えたことで、トラウマが多少癒えたらしい。
結果オーライというべきか、良い方向に旨い事転んで行った…大転倒しすぎたような気がしなくもないが、いつの間にか惑星が最終的に爆発する緊急クエストが消え失せていたので、亡くなる道は消えたようだ。
その代わり、ちょっと荒療治すぎたせいなのかクエスト達成ということにもならず、クエストの自然消滅という形になってしまったようで、達成報酬とかも失われていた。
まぁ、女神の力が無茶苦茶すぎたからなぁ…大きすぎる力の代償というべきか、使いどころかが難しすぎたのもあるのだろう。これもまたいい経験として考えるべきか。
とにもかくにも、三途の川を渡りかけるというやばめの体験をやってしまったが、そのおかげで過去に失った友人に再び会うことができて、トラウマは癒された。
いつの間にか空にたくさん浮かんでいた太陽も消え失せたが、あの恐ろしいほどの大嵐は起こることもなく、不思議とどこからともなく海がまた戻ってきて、再び海王惑星は潤った。
【そもそもの話が、我を呼び出したものの宴の中を見て、トラウマを思い出したのが原因だからな…こちらのほうが、すまなかったと思う】
海からひょっこりと出るようにして、着水したグレイ号の甲板へ身を乗り出して乗りかかるルカドン。
既にもう瀕死状態から回復しきったついでに、憑き物が落ちたかのようにすっきりしているようにも見えるだろう。
…もしや、惑星そのものだったからか乾燥が思いもがけない刺激になったのか?
ありとあらゆる星々の海があるルカドンだが、毒の海も当然あり、それが気が付かないうちに惑星自身も侵していたのではないだろうか。
フグや百足は自分の毒に侵されないが…ルカドンは厳密にいえば海のほうではなく、中身の惑星であれば、毒の海があればやられていた可能性も否定できない。
それが今回の大干ばつ状態で、毒素も一緒に蒸発していたのであれば…ありえなくもないだろう。
こっそりとロロに探ってみてもらったのだが、ルカドン全体の海の割合で、改めて探ってみたら毒の海部分の面積が狭まっているらしいし、否定できない話だ。
そう考えると、またしばらく経って毒に侵されて同じようなことになりかねないというのもあるが…そこはもう、今後の話なので今の僕らが同行できる話ではない。
【そうだ、思い出したがそこのもの…ああ、女神のものではないそちらの男。確か、我をテイムしようとしていたな】
「ん?」
「ああ、そういえば中三病さんはそもそもルカドンをテイムしようとしていたんだっけ」
ふと、思い出したかのようにルカドンがそうつぶやき、中三病さんのほうに顔を向けた。
【…残念ながら、テイム条件は満たされていたが、我はもう二度とあの友以外のものと契りを交わす気はない。だから、テイム失敗と言いたいところだが…それだけの条件を揃えて、我が勝手にトラウマを思いだして迷惑をかけた責任はある】
中三病さんにテイムされる気はないらしいが、何か思いついたことがあるようだ。
いったん海の中に引っ込んだかと思えば、すぐに何かを口の中に入れて戻ってきた。
【もぐぼ…ぼべっ】
ズズウゥン!!
「うわっ!!」
「なにこれ、でかい卵!?」
中三病さんの前に吐き出されたのは、かなり巨大な卵。
しかも表面がこう、殻という感じのものではなく、どちらかといえばイカやタコっぽい感じのやつらが生むような卵であり、何やらあちこちに血管が浮き出ており、脈動して生きていることを示していた。
【これは、我が海で産み落とされる命の中で、まともに産まれては生態系が滅茶苦茶になりかねないようなものを、いざという時に使用できないかと思い、保管しているものの一つだ。たしか、宇宙の海を泳ぐ巨大クラゲ…『プラミティブ・スペースジェリーフィッシュ』だったか】
―――――
『プラミティブ・スペースジェリーフィッシュ』
アルケディア・オンラインに実装されているモンスターの中で、特大サイズのモンスターの一つとして数えられる巨大な宇宙クラゲ。
宇宙の海を漂い、気に入った海がある星の卵を産み落とし、旅を続けていく存在。
だが、ただのクラゲのようにふよふよと漂っているわけではなく、サイズによっては星を喰らうこともあるといわれるほどのモンスターである。
―――――
「とんでもないモンスターの卵なんだけど!?」
【うむ、それをやろうというわけだ。我のようなものをテイムしたいという目的があったのであれば、それに近いものであればいいと思ってな…不満か?】
「いえいえいえいえいえ!!とんでもないです!!ありがとうございます!!」
まさかまさかの、テイム失敗からの新しい強力なモンスターの獲得である。
イベントで手に入れるようなものではないので、生まれた瞬間にテイムされているわけではないとは思うのだが、ルカドン自身がなんやかんやの力を行使したらしく、既に卵は中三病さんのテイムモンスター枠に収まっていたようだ。
「とんでもないものを、手に入れることができたね中三病さん」
「ああ、ルカドンをテイムできないのは悔しかったが…それでも、得るものがでかすぎだろ!!」
大きく成長していけば、星を喰らう可能性のあるモンスター。
そんなものをテイムして、扱っていけるのかが不明だが…シアの元となったボディを作成した執念のように、どうにかしてしまうのだろう。
しかし、巨大宇宙クラゲか…そういえば、ティラリアさんって星間国家を樹立させたとかいう噂を聞いたことがあるけど、そう考えると星を食べられるようなやつを仲間にできたのは、大幅すぎる戦力の強化ではなかろうか。
いやっほーいわっふぉーいと喜ぶ中三病さん。
喜びたくなる気持ちは分かるが…結構重量があるので、早めに中三病さんのハウス内のほうにしまってほしい。船が前のほうに傾いているんだけど。
【それとだな…女神のものだったか。あ、いや、この感じは…ふむ、そなたにも何かあったほうが良いか?】
ズンドコと喜びの舞を踊る中三病さんを見ていると、ふと、ルカドンがそう僕に問いかけてきた。
「んー…いや、別に良いかな?僕のほうはルカドンの姿は見て見たいかもと思ったけど、テイムする気はないよ。そもそも、惑星を干上がらせるような真似をしちゃったしね…」
【ううむ…だが、嵐を収めるために、我を干上がらせるほどの行動を見せたのだからな…下手をすればこの星にいるもの全てを巻き込んで無に帰ろうとしていた我を、干し魚のようにさせたようだが、止めるだけの偉業を成しえたのだからな。何もないというのもなんだが…そうだな…ああ、そうだ、ならばこれがいいか】
また何かを思いついたかのように海の中にもぐり、再び口の中に入れて運んできた。
甲板に吐き出してもらうと、中三病さんと違って今度は卵ではない。
「何、これ?」
【かつて、我をあがめていた民たちが使っていた道具の一つ、『ルカドンの大斧』と我が名を付けられている業物だ】
吐き出したのは、かなり大きなバトルアックスの類だが、もってみると見た目ほどの重量はなく、振り回しやすいもの。
基本的に糸使いと錬金術で戦闘するので、扱う機会はそうそうないとは思うのだが…サブウェポンとしては、これはこれで悪くはないか?
「基本ステータス10%上昇と、水属性に対する耐性が30%上昇し、液体に関する属性攻撃なら色々と可能になる…か。へぇ、ルカドンの名が付くだけあって、様々な海の力も扱えるようになるって、すごい武器かも」
その気になれば毒の海を纏って猛毒攻撃に変えたり、癒しの海の力を纏って切りかかった相手を回復させるなど、臨機応変に対応しやすいもののようである。
その便利性ゆえに、一度海の力を切り替えると、次に別の海のものに変えるには20分ほどの長めのクールタイムが存在するようだが、状況によっては重宝するかもしれない。
先日の不死鳥との戦闘時に欲しかったかもなぁ…でもまぁ、過ぎたことだし、今後扱う機会は増えるかもしれない。
「あ、これプレイヤー限定装備じゃなくてテイムモンスターにも装備できるのか」
場合によっては他の皆に手渡して、扱ってもらうのもありだろう。ただ、バトルアックスだし技量とか体格を考えると、セレアとかシア、あるいはコユキの雪兵召喚で呼び出した兵士たちに扱ってもらうって手もあるか。
今後の戦略も増えたし、僕らは無事にルカドンに別れを告げて、去ることができたのであった…
「…あ、しまった。ミーちゃんと改めて楽しめないかと思ったのに、自然と惑星を出て解散してしまった」
【また行けばいいのではないでしょうカ?】
「分かれてすぐに戻るのもなぁ…仕方がない、現実のほうでミステリートレインに誘おうかな」
何のために、あの武闘大会を勝ち抜いたと思うのか。
こういう時に使えるし、今回のルカドンでの騒動は振り返ってみると、そう悪いものではなかったと思えるのであった。
【あ、そういえば主様。これ見ましたカ?】
「え?…おいおいおいおいおいおいおい!?なにこれ、黒き女神奇跡のグラビアって何!?武闘大会会場って一応、撮影禁止エリアとか設けられていたって聞くんだけど!?」
【どうやらすれすれの範囲で潜り込み、撮影した輩がいたようですネ。主様がマントで覆い隠していた部分がありましたが、それでも激しい動きの中で見える部分を根性で撮影した様子がうかがえマス】
「きわどそうな格好になっているのもあるんだが!!こんなわずか数秒レベルでしかないようなポーズで撮られているみたいだし、誰が出したんだこれぇぇぇぇ!!すぐに運営に通報してぇぇぇぇぇぇ!!」
…前言撤回。悪いものしかなかった。
1
お気に入りに追加
2,029
あなたにおすすめの小説
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる