アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-126 その名を有している以上、ふさわしいものもあるようで

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『ほっほっほっほ、全員無事で何よりだ。そして…お久しぶりですな、火の神アグトス様』
『おうおう、久しぶりだなねじの爺さん!!今回はあの緊急用の玉で呼び出されたぜ!!』

…溶岩から無事に逃げ切り、噴火も収まったアイギス火山。
 ひとまずは呼び出した火の神アグトスによって助かり、ハルたちは火山にある山小屋にまで戻ることができていた。

 緊急時用の呼び出し玉だったはずだが、危険が去ってもなぜか火の神の姿は消えることなく、むしろハルたちを再び山小屋まで戻るようにと言ってきたので、助けてもらったこともあって素直に戻ってきたのだが…どうやらここの管理人であるボルナックさんとは面識があったらしい。

『それにしても、火山が噴火しそうだから、念のために火山をふさぐためのギガボディの機体を動かそうと思ったが…アグトス様が降臨されたのであれば、もう大丈夫ですな』
『ああ、間違いないぜ。お前のあのウルトラビッグなやつを使うと経費がかなりかさむのは知っているからな。ちょうどよかっただろ!』

 何やら火山噴火時用にどうにかするための対策方法はあったらしいが、火の神が噴火を止めたことによって行う必要はなくなったらしい。
 ウルトラギガボディとかビックとか、これはこれで気になる言葉は出たが…うん、それはまた後でどういうものなのか聞けばいいだろう。

『それよりも、ここへ戻るように言った目的だが…お前たち全員が、あのでかぶつを倒したのだろう?』
「でかぶつというと…あのエンプレスのシャドウフェニックスですか?」
「というか、呼び出したのは討伐後で、見ていなかったと思うのですが…」
『ふははは、我を誰だと心得る?神であり、なおかつアイギス火山内は我が神域!!自身の神域で起きていることを全く把握できぬのは半人前の神であるぞ!!』
(…なんだろう、ちょっとざくっと来た感じは)

 一応、黒き女神のスキルがあるし、妖精郷が神域になっているのだが…そこをロロの魔改造が行われていることが把握しきれていなかった身からすると、なんかこう刺さるものがある気がする。
 
 そんなことはさておき、どうやらこの手のひらサイズの火の神様は僕らがシャドウフェニックスを討伐したことをすでに把握しているようだ。


『思い返せばかなり大昔に、巻き込まれたのを見て哀れに思い、我の加護を授けて眷属にしたのだが…どうもここ最近は、あのでかぶつがだいぶ力を持っていたようでな。いまだに神域としては強かったのだが、いささか邪な念が強すぎた。流石にこれは見過ごせないと思い、加護を剥奪しておこうかと思ったが…お主らが駆逐してくれたおかげで、無駄な作業をせずに済んだのだ。礼を言おう』
「つまり、あのでかいボスはかなり邪魔だったんですか」
『そういうことだ。シャドウフェニックス自体、我が神域の影の中で生れ落ちいつでも復活はできるが、剥奪してからの殲滅は少々面倒でな。その作業の手間を省けたのは喜ばしいことだ』

 そういいながら火の神はふよふよっと体を浮かせ、ボルナックさんの頭の上のほうに移動した。


『おい、お前たち。あの山でフェニックスを狙っていたということは、特殊クエスト「参上!炎上!!即退場!!豪炎影の鳥の謎」を受けていたんだろ。その達成は本来、トリプルアイアンズの酒場で達成報告となるが…その達成を確認できた。よって、火の神アグトスの名をもってここで宣言しよう!!お前たちのクエストは達成されたとな!!』

―――――
>火の神アグトスによる、クエスト達成許可が発生しました!!
>この場において、特殊クエストの達成を確認・受理いたしました!!
>情報・目撃・討伐、そして隠されたシャドウフェニックスたちの女帝の大討伐が確認され、依頼報酬が渡されます!!
―――――

『ボルナック、こいつらへ特別報酬を渡せ』
『はっ』

 クエストの達成としてログの表示やアイテムをもらっていく中、火の神の命令によってボルナックさんはどこからともなく小さな箱のようなものを僕らへ渡してきた。

「これは?」
『特別報酬…火の神にとって煩わしかった奴を、代わりにぶっ飛ばしてくれた例でもある。開けてみろよ』

 言われるがままに、僕らがその箱の中を開けるとそれぞれ真っ赤に燃える火の玉のようなものが入っていた。
 それがすうっと体の中へ溶け込むように勝手に動き…何が起きたのか、ログですぐに確認ができた。

―――――
>火の神アグトスによる特別報酬をうけました!!
>スキル『炎上心』を獲得!!
『炎上心』
燃え上がる心があるときにだけ、使用可能になる特殊スキル。
火の神アグトスがつかさどるのは火山であり、火山の持つ噴火のパワーを拳に宿して瞬間的にぶつけることができるようになる。
ただし、噴火の規模は毎回ランダムであり、スキル使用後は3時間のクールタイムが必要になる。
―――――

『爆弾とかで似たようなことができると聞くが、我が噴火の力はそんなものとは比較にはならねぇぜ!!何しろ、最大であれば山の形さえも変えてしまうほどの強力な爆発力を生むからな!!本来はこの山小屋の管理人しか受け継げないが…お前たちは特例だ!!火の神がここに許そう!!』

 攻撃に使えそうなスキルだが、扱うにはちょっと注意が必要なほどかなりの威力を秘めているらしい。
 全員、攻撃手段は色々と持っているが…爆発力を活かした攻撃が可能になると、その戦略の幅は広がるだろう。

 いや、場合によっては攻撃に転じずとも、真下にうってその反動で真上に吹っ飛ぶとか、あるいは通れない場所を無理やり通れるように吹っ飛ばすとか、使い道によってより可能性が広がりそうである。

「おー、これはこれで良いな」
「火の神アグトスによる加護っぽい感じか…検証が必要そうだけど、面白いかも」

 ぽっけねこさんたちもこのスキルを確認して、色々と使えそうなので今から試すのが楽しそうな顔色になっているだろう。

「ふむ、噴火とくればそれだけ強力な…はっ、もしやこれで婆さんや孫娘に勝てるのではなかろうか!!」
「ああ、その可能性は高いかもしれない!!PvPを挑んでも勝てなかったけど、このスキルがあれば大逆転できるかもしれないぞ!!」

「おいおい、またやる気かのぅ。確か加入してからこれまで見てきたが…234回ほどやって1勝もできていなかったと思うがのぅ」
【ブモモゥ】

 一方で欲望戦隊は、この攻撃手段に何かしらの希望の光を見出したようだが、アティやマッチョンが呆れたような目で見ているところを見ると、ろくでもないような結果になりそうな気がする。


 なんにしてもこれで無事にクエストも達成したし、そもそも僕やミーちゃんの目的であったMACのスキルも得たから、これで十分かなと思い、各々が解散しようとしていた…その時だった。

『ああ、そうだ。おい、そこの男、我を呼び寄せたそいつだけ、ちょっと残ってくれ』
「え?僕ですか?」
「ああ、他の奴らは勝手に解散していいが…呼び出してくれたお前にだけ、少し話がある」






…ぽっけねこさんたちは何があるのか気になったようだが、代わりに火の神から火に関するモンスターの情報を少しもらい、さっさと情報を公開するために去っていった。
 欲望戦隊はぽっけねこさんたちから何やら秘密の情報とやらをもらったようで、こちらもすぐに去ってしまい、ミーちゃんと一緒に僕らはこの場に残された。

 ボルナックさんも何やら山小屋の外で、火山噴火が起こりかけたことから確認を行うと言って出て行ってしまい、いるのは目の前の火の神だけだろう。

『本音を言えば、そこの女もいなくてよかったが…まぁ、様子を見る限りこいつの事情を色々と知っているようだから別にいいか』
「…その口ぶりだと、ハルに関することで話そうとしているのかな?情報の中で…黒き女神に関してかな?」
『お、正解だぜ。あっさり理解してくれるとはな』

 ミーちゃんの言葉に対して、そう答ハル火の神。

『お前さん…いや、あの神域の中に干渉されたものから既に分かっているぜ。闇や光の姉貴たちが目を付けつつもやらかしあった末に闇の女神が目を付けて妹分にしようと企み中のやつだな?』
「…前半はまだ心当たりがあるけど、後半は聞いたこともないんだけど」

 白黒の塔でのやらかしあいは確かに覚えているけど、妹分にしようという計画はなんだ?
 いや、でもよく考えたら…

「妹…もしかして、黒き女神のことか?あのスキルに何か、あるのか?」
『正解だな。感覚的に初対面とはいえ、わかるものだ。お前さんが、その女神の力…黒き女神としての力を持っているということにな』

 少々ふざけているようなそぶりを見せつつも、こちらに対して向ける目はどこか真剣なものを感じる。
 もしかして、人の神域に勝手にガンガン女神の力で攻撃しまくったことを怒っているのだろうか。

『ああ、思っていても言わなくてもわかるぜ。お前さんのあの長距離攻撃で、あのでかぶつを倒すためとはいえ我が神域に打ち込んだことに関して怒っているんじゃないかってことだろ?神の目の前では嘘もつけないし、心はさらけ出される。…だが、それは不正解だ。別に、暴れまくっても文句はないぜ』
「なら、何か別のことが?」
『その通り。お前さんの攻撃を直接目にせずとも、神域で干渉された分を確認すればどのようなものだったのか十分理解できるんだが…黒き女神、少し異質・・だな』
「異質?」

 火の神がそう口にして、疑問に思った。
 そんなことを言われても、何がどう異質なのか…女体化させたり何形態もあったり無茶苦茶な強さを持っていたり…考えれば考えるだけ、色々とあるようだ。

『違う、そうじゃねぇ。お前さんはプレイヤーという奴であり、それがベースになっている以上、生まれたときから神だったかもしくは神の座を譲られた奴らからしてみれば、お前さんが浮かべる異質かもしれないと思うようなものは全部、まだまだひよっこすぎるほどの弱いもんだぞ』
「あれだけ無茶苦茶して、本職にひょっこと言われるレベルなのか…」
「逆に本家本元がどれだけものか、ちょっと怖いかも」
『そんな力をふるう機会はそうそうないがな。今回だって、お前さんに呼び出されはしたが、制限はあるぞ?今こうやっているが、もうすぐで元の場所に戻ることになるが…その前に、ちょっと感じたんだ』

 そう言いながら火の神はふよふよと浮かびながら、僕のおでこのほうに手を向けた。

『…なるほど。大体わかったぜ。こりゃ、我にはどうしようもないな』
「え、何かありましたか?」
『あったというか、なんというか…うーん、このぐらいならばまだ平気なのか』

 何か気になるようなことがあったのか、手を顎に当てて悩むそぶりを見せる火の神。

『なんにせよ、今はまだ話すべき時ではなさそうだな。だが、何もせずに見ているだけなのもなんかこう癪に来るというか…そうだ』

 考え着いたことがあったのか、火の神が何もない空間に手を突っ込んだ。
 そこから何かを探るように手をごそごそと動かし…少し時間をかけて、何かを取り出した。

『あったあった、このランプだ』
「シンプルだけど…こう、手で擦ったら魔人とかが出て願いを叶えそうな感じのランプ?」
『あっているようだけど、違うぜ。魔人なんてもん入れてねぇし、中身はそもそも空っぽだ』

 ぱかっと蓋を開け、中身が空っぽなのを確認する。
 確かに空っぽのようだが、こんなランプをどうして渡してくるのか。

『空っぽだが…ふむ、数日間ほど身に付けてくれ。そうすれば、自然と何なのかわかるだろうし…おっと、もう時間切れか』

 何のランプなのか説明もないまま、火の神の体が透け始めた。
 どうやら呼び寄せ玉での時間が切れたようで、元居た場所に戻るらしい。

『そのランプ、身に付けておけよ!!時間はかかるが確実にお前さんのためになると思うぜ!!』

 良い笑顔でサムズアップして、消えてしまった火の神アグトス。
 そして残されたのは、渡されたランプだけであった…



「…これを渡しておいて、何かあるのかな?というか、異質ってなんだ?」
「さぁ?でも、一応神のいうことなら従っておいたほうが良いのかな?」

…もうちょっと詳しく説明してほしかったなぁ。でもまぁ、時間切れなら仕方がないか。

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