アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-112 ぬるぬる動くのも楽しくあり

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 金属怪鳥アイアンバードゥ、高速柔鋼鉄体メタルゥナァスライム、黒鉄左手サイボーグレフトハンド…道中様々な強化された金属の体や機械の体を兼ね備えたモンスターたちの襲撃を受けつつ、ハルたちはようやくスキルを得られるというエリアにまで到達することができた。

「でも、本気でたどり着けるのかこれって思えるほど、きつかった…硬いし強いし、ガチ勢ならともかくのんびりやる僕らとしては、大変だったかも…」
「私も、牧場経営はしているけど戦闘にのめりこんでいるほどでもないからね…HPがかなりぎりぎりになったよ」

 ぜぇぜぇと、VRMMOなのに疲れて思わずそう口にするハルとミント。
 黒き女神とかで普段忘れそうになるのだが、戦闘面に関しては正面突破よりもわなを仕掛けるなどの状態異常のほうがもともと得意な方であり、この惑星の堂々と表から力づくでやってくるモンスターたちとは、通常の状態では相性が悪かったようである。
 いや、黒き女神の状態でならば蹂躙できるほど楽にできたのではと思えるかもしれないが…先日の闘技場で盛大に目立ちまくったのもあって、しばらくはちょっと使用を控えようとしたのだ。


 とはいえ、そんな事情があってもこの惑星のモンスターたちに事情を知る由もなく、襲い掛かられまくってしまい…マリーたちと一緒に戦闘してどうにかたどり着いたのは良いのだが、色々と削られ過ぎてしまったものがあるだろう。

【オォォン…】
【ピキーッ…】

「うわぁ…アリスとシアだけ何とか残ったけど、他のメンツが全員体力切れになっちゃった」
「私のほうも、念のために牧場から連れてきた子たちが戦闘不能状態になったね」

 テイムモンスターのほとんどが、この惑星メカニカルプラネットの都市トリプルアイアンズにたどり着く前に、体力が尽きてしまった。
 尽きた面子は死亡することはなく、ハウスシステム内に帰還した状態になったようだが、全員のHPがほぼ尽きるほど、ここまでくる道のりが激しかったことを示しているだろう。

 アリスのほうは炎の攻撃で相手を熱しまくって、金属ボディの相手を熱で動けなくしたり、シアのほうはもともとが中三病さんがあの恐竜女帝ティラリアさんを倒すために作り上げたメカメイドのボディをベースにしているので、耐久力が高かったことやこの惑星上の機械系の強化バフのおかげで、他のメンツよりも生き残ったのだろう。
 機械に有効なのを考えると、ルトの電撃とかコユキの吹雪もそうなのだが…どちらも道中でエンカウントしてしまったモンスターとの相性が最悪だったせいで、倒されてしまったのである。
 なんだよ、あの液体金属のモンスター。うねうねと動くボディが、まさか電撃で活性化してさらに素早くなるとか誰が予想できたのか。
 どうにかコユキの雪兵召喚で雪兵たちの尊い犠牲によって凍り付かせて砕いて倒すことに成功したんだけど、その後に出てきたスナイパービーとかいう蜂のモンスターに狙撃されるとはなぁ…



 とにもかくにも、ほぼぼろぼろの状態だが、それでも僕らはこの都市にまでたどり着いた。
 ここが、目的のスキル「MAC」を入手できるという機械都市のようだが…惑星中がかなりやばいモンスターが多めなのもあってか、この都市トリプルアイアンズはドームのようなものに覆われて守られているようで、中身も外とは違う様子。
 一応は金属の土壌…言いかたがおかしいような気がしなくもないが、そんなのがむき出しだった外とは違って、ここの地面はよりつるつるの金属でできている様子だ。

「というか、ただの金属板が張り付けてあるとかじゃないね」
「ふむ…小さな粒のようなものが、道に付けられているようだよ。ほら、説明あるよ」
「『サービスローラーズ』…へぇ、乗るだけで自動的に動かしてくれて、歩かずとも体をちょっと傾けて重心を動かすだけで、その方向に向かって進ませてくれるのか」

 イメージ的には、ベルトコンベアに近い様な…コンベアの上部分の布地とかが金属球になっており、なおかつ決められた方向にだけではなく進みたい方向へ自由自在に動けるようになっているらしい。
 かなり細かい金属球なのもあってか、ぶつぶつした感触とかよりも、少しだけ固めのじゅうたんのような感触になっており、不快感とかは特にない様子。
 集合体恐怖症とかだと苦手な人も出そうと思えるようだが、どうやらプレイヤーへの配慮がされているようで、ちょっとログのほうで設定を変えれば布地だったり光の道になったりと、見え方の変化が可能になっている特殊な地面になっているようだ。

「こりゃ便利かも。ちょっと傾けたりするだけですすすっと横移動ができるよ」
「RPGとかで動かずに移動するNPCとかってあったりするけど、それっぽい気分にもなるね」

 苦労してたどり着いた分、こういう面白味があるのは嬉しいだろう。
 ちょっとばかり滑って楽しみつつ、目的を忘れないようにして、僕らは歩み…いや、滑り出す。

「感覚としては、滑って転ぶ心配のないスケートっぽい感じかな?」
「ふふふ、それが一番合っているかも!!ならこれもできるね!!」

 そう言いながらミーちゃんが勢いよく横滑りしたかと思えば、華麗にジャンプしてトリプルアクセルを決めて見せる。
 転倒防止対策もされているようで、危ない姿勢になってもバランスを崩すこともない。

 これはこれで、新しい競技とかアルケディア・オンラインに生まれるんじゃないかなと、ちょっとばかり現実ではありえないようなスポーツの誕生の予感を感じさせるのであった…



「というか、本当にスケートの万人向けバージョンって感じで、楽しいかも」
「そうだよねー。これならスケート靴を履かなくていいから、あの悲劇とか生み出さなくて済むね」
「あの悲劇…ああ、ガキ大将ヌッタギリ事件か…」

…悲劇というか、喜劇というか。一応、肉体的な支障はなかったが、何がどうなってかミーちゃんが盛大にすっころんで、その先にたまたまいた別の町のガキ大将が氷のリングの上で…思い出さなくてもいいか。
 うん、一応無事といえば無事だったし、赤い花が咲くようなことにはならなかったからね。今は確か、氷が張ることがないであろう赤道直下の南国に永住したって聞くけどな…
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