上 下
322 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-109 どうにかなるものもあるが、どうにもならないものもかなりある

しおりを挟む
…闘技場とレイドボスの力を活かした、AL稼ぎの計画は結果としては成功を収めたと言えるだろう。
 想定外のド恥ずかしい目にあったとはいえ、それでも何とか稼ぐことはできた。

「だが、計算式を間違っていたがゆえに、赤字が出ていたか…」
「自業自得としか言いようがないけど、そこまででもなかったからまだよかったんじゃないかな?」

 僕らは無事にログアウトして一息をついていたが、最後に機械神がやらかしちゃったことに対して同情もしていた。
 開催するうえで、きちんと黒字になるようにと思ってやっていたはずが…どうも使っていた計算機が壊れていたようで、再計算したところ悲しいことに赤字の結果を叩き出してしまったのだ。

 それでも一応、当初に膨れ上がっていた分と比較すると返しやすい方であり、闘技場でのバトルをもう一度やらなくとも、数日はあれば返済は可能。
 なので、これ以上迷惑をかけるわけにいかないと機械神は言い、解散したのであった。


「それにしても、黒き女神の装備が強制的にバニーにさせられるとは…変態共の欲望のほうがよっぽど得体のしれないレベルだったというか、アビススタイルよりももっとすさまじい深淵のそこへ達しているように思えてしまったなぁ」
「春の、あの黒き女神の姿が一瞬でバニーにされたもんね。正直、観戦していてちょっと笑いたくなったけど…ああいう強制装備変換は恐ろしいね」

 大小がありつつ、それでも装備の性能そのものは変化がなかった強制的な装備の見た目を変更するスキル。
 あの領域に達していそうなのは欲望戦隊たちぐらいだと思いたいのだが、このスキルが出てきたことで、ろくでもない懸念事項が一緒に出てくるだろう。

 実際に、少しネットの掲示板を探ってみれば…どうもあちこちで目撃情報が生じているようなのだ。

「バニーはあの変態共の力だったけど、他にもあるのか、強制的な見た目変換は」
「ウニ、ナス、ひよこ豆とかの野菜とか、マグロ、カツオ、タコなどの海産物などになるようなものもあるようだね…」

 装備の一部が変化するか、全体か。あるいはアバターそのものの容姿が変わるような攻撃やスキルというのが探されたところ、短い間だがいくつもあった。
 普通に全身が何か別の動植物になるのはまだましだが…バニーとかのような、装備品の見た目の身を完全に変える系統でうかつに受けるのは不味いものもある様子。

「鎧武者やメカとかはちょっと興味惹かれるが…水着系とかもあるのは黒き女神状態で受けたくないな」
「そういう時に限って、直撃しそうだけどね」
「やられる前に、即滅殺するよ」

 ぷぷっとミーちゃんが想像して笑ったが、シャレにならないと思う。
 バニーでさえ羞恥心があったのだから、よりやばいのは受けたくない。

…幸いなこととすれば、その手のスキルにはたいてい代償があるし、野生で出てくるモンスターが使ってきてもすぐに爆散するとかあるし、そう連続してやれるようなことはないことぐらいか。

 今回の闘技場バトル…得られたものとしては、世界にはまだまだヤバいものが数多くあるということを、事前に知ることができたということだろう。
 これで何も知らずに、間抜けに直撃したら最悪だった…ある程度の予備動作や仕掛けてくる相手を知ることができれば、いくらでも対策を練ることができる。

「いや、いっそのこと自分自身で強制的に上書きできるようなスキルを身に付けるのもありか?」
「え?そんなことできるっけ?」
「対策として、掲示板にも挙がっているようなんだよね。ド恥ずかしい衣服に代わるぐらいなら、自分で上書きをしてなかったことにしてしまおうという方法もあるみたいだよ」

 強制的な変身をさせられたくなければ、自分自身の力でなかったことにしてしまえばいい。
 目には目をの話と比べるとちょっと違うかもしれないが、事前にある程度の用意ができるのであれば、その手法が一番安全かもしれない。

 ただし、失敗すれば余計にろくでもなさすぎるほどのスキルを得る可能性も秘めているが…そもそも黒き女神の状態になっているときに受けなければいい話…男の状態でバニーとか受けても悲惨だな。
 実際に、ある程度のステータスへの影響をするような状態異常も併発する可能性があるらしくて、ある星では犬が苦手なのにブルドックの姿にされたり、毛虫が苦手なのにアゲハチョウの幼虫のような姿に変わったり、挙句の果てには筋骨隆々の筋肉だるまのような人が、一瞬で逆バニー的な姿に…これ、もしかして父さんが受けたとかないよな?想像したくないけど、絶対に周囲が阿鼻叫喚なことになっていそうだ。


 とにもかくにも、ある程度ALを稼いだりと余裕も出てきたので、今回の闘技場での経験も生かして、少しばかりスキルを増やすなどの活動もやってみようかなと考えるのであった…

「なんかこう、普通の服から変身って叫んで一瞬で変わるようなものも、ちょっと面白そうだしね」
「そうかなー?変身したところで戦隊の衣装が、あの欲望戦隊と似たようなものになったら…」

…それは何とも言えないかもしれない。あ、でも既にバニーのスキルがある時点で、あの欲望戦隊たちがバリュエーションを増やしている可能性もあるかも…絶対に彼らの前に、黒く女神の姿で現れないようにしないといけないな。
 バニーでも嫌だったし、これで次に余計に変態的な格好にされたら…おおぅ、嫌な寒気が…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...