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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~
ver.4.2-108 深淵と地獄の光
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…黒き女神の第三形態「アビススタイル」。
第一形態が自身の力と配下のモンスターの力を集約し混ぜ合わせた混沌の力で、、第二形態で自身の力をより強化して戦闘向けの霊装として身に纏って強化するのであれば、第三形態は何を行うのか。
形態が変わることはただの変身にあらず…例えるのならば、原石を磨き上げてさらなる宝石へ進化させるようなもの。
まだ見ぬ力を、隠された力を引き出し、今までにないものを生み出す…いや、生み出すというよりも、根源的な…その女神の力があふれ出る場所から、より力を増幅させて放出し、その身に注ぐことで存在そのものを次の段階へ進めていくが故の副産物が、実体を得てこの世界へ顕現させるもの。
その生みだす場所はどこにあるのか、見えぬ場所に、その光が届かぬ深淵の奥底からあふれ出しているはずだが、存在を目にすることは不可能に近い。
だが、その不可能に近い深淵の顕現を疑似的に身に宿して女神としての力を引き上げてより美しい宝石へと磨き上げる…それが、このアビススタイルなのだ。
とはいえ、「アビス」という意味は何も『深淵』の意味だけを持つのではない。
その言葉の別の意味として『地獄』というものも持っており、捉えようによってはその身をもって、深淵ではなく地獄をこの世界に顕現させるようなものになるため…レイドバトルの残り時間が少ないこの闘技場内は今、その地獄が姿を現していた。
「ぎゃあああああああああ!!槍が雨のように襲い掛かってくるぅうううう!!」
「空中にポンっと穴が出たと思ったらそこからぶん殴られたぁぁ!!」
「蹴りだけで衝撃波がぁぁぁ!!いやこれはこれでありがとうございますぅ!!」
「さっきよりも強化されすぎだぁぁぁぁぁ!!」
参加しているプレイヤーたちの阿鼻叫喚が響く中、空中に浮く黒き女神は微笑を浮かべ、その攻撃の手を緩めない。
レイドバトルの時間も残り少なくなっており、変身したとはいえマッチョンのあの攻撃を受けてHPもかなり減っているはずなのに、その最後を削りきれるような隙が目に見えないのだ。
宙に浮かぶ輝く槍はまるで自分の意志を持っているかのように蠢いて襲い掛かり、何もない場所へ攻撃を飛ばしたり、あるいはその身に纏う力をふるうだけで嵐のようにして襲い掛からせることができるなど、第二形態の時よりもさらに強化されている攻撃のせいで、プレイヤーたちにとっては逃れられない理不尽な力で地獄を浴びせかけてくる女神。
この数分前に、ようやく機械神のほうのHPを削りきって沈黙し、女神のほうになんとか戦力を集中できるようになったわけだが…それでも、最後の一撃が入れられない状態。
いや、残りのHPが少なくなったからこそ、最後の攻撃がより激しくなったのもあるだろう。
このまま時間をかけて倒すことができなくとも、参加した証はもらえるわけだが…それでも、プレイヤーたちとしては最後のボスまで確実に倒しきりたい。
この機会を逃せば、次に黒き女神と戦えるのはいつなのか。
逃してしまえばめぐり合うまでにまた時間がかかるだろうし…ゆえに、プレイヤーたちはかなわないかもしれないと思いつつも、挑み続ける。
最後の一撃、それさえ決めればどうにか倒せるかもしれない。
しかし、そのとどめを刺すための攻撃を与えるには、あの攻撃の中をかいくぐらなければいけない。
第三形態の、深淵から力を沸き上がらせて地獄を生み出すような女神に、果たして誰が叶うのか…その絶望のような中で、一つの光が輝き始める。
【ブモモモ…!!】
「さ、最後のHPがぎりぎりだけど…それでも、何とかこの戦闘の中で、進化の選択が出たぞ…」
女神の一撃をかばい、この地獄の猛攻の中で必死になって攻撃から生き延び、その欲望の強さには生命に関する欲望もあったのか、タローンとマッチョンが死屍累々なプレイヤーたちの中で立ち上がる。
ミートン、スッケン、アティは既に撃沈してしまったが、それでも彼らの遺志を残すようにして、最後の希望の光、テイムモンスターの進化にかける。
条件は既に、整っている。
進化に必要な経験などは既に積み重なっており、上の段階へ進むための力はある。
いつでも上の存在になることは容易かった。
その才能ゆえに、その環境ゆえに、その生きざまのおかげで通常のオークの道から外れ、より上位の存在としてなりあがることはできただろう。
だが、今はこれで十分であり、その先を目指すのはより強大な相手が出たらということで保留していたわけだが…そこに、先ほど手に入れた称号「女神に挑みし勇者」としての力が加わり、マッチョンの進化先に新しいものが追加されていた。
「オークエンペラー、デーモンキングオーク、グレイトロードオーク…それらが既に先に出ていたが、まだ選ぶことはしていなかった…」
【ブモモゥ】
「その選択のおかげで、この状況で手に入れた道の進化先を得た。だからこそ、その進化の果てに手に入れてくれ…マッチョン!!」
【ブモォオオオオオオオオオオ!!】
―――
>4『???(特殊進化)』を選択しますか?
>受理いたしました!!
>これより、テイムモンスター『マッチョン』の進化が始まります!!
―――
選択肢を選び抜き、この状況の中で生まれた未知の進化先を選択し、マッチョンの体が光り輝く。
その変化は一瞬でありつつも、大きな力がマッチョンに生み出され…その進化した姿を見せる。
【ブモォオオオオオアァァァァァァァァァ!!】
―――
>マッチョンの進化が完了いたしました!!
>オークでは得られなかったはずの、奇跡の進化!!『真・ブレイバーオーク』になりました!!
『真・ブレイバーオーク』
普通のオークでは至れぬ、勇気あるものとして覚醒した異例の進化をたどったモンスター。
勇者といえば剣やハンマーなどの武器を装備しているイメージがあるが、この真・ブレイバーオークは武器を装備することができない。
その代わりに、その手にはオークとしてはありえないほどの勇気の力が宿っている。
―――
ばさぁっといつの間にか装備されていた勇者としての鎧に着いたマントが風になびき、マッチョンの拳が光り輝く。
残りのレイドバトル時間としてももう間もなく終了間近であり、この地獄の中で女神に一撃を与えるのはいかにパワーアップしていても至難の業だろう。
けれども、それであきらめるようなものであればそれは勇者ではない。
あきらめることなく、抗い続ける…その勇気が心に宿る限り、その隙を狙う。
『…ん?…なるほど、これが最後の一撃と思って、来る気か』
マッチョンの勇ましい雰囲気の変化に、地獄を生みだしていた黒き女神が気が付く。
先ほどのぶつかり合いでは、お互いの攻撃が不本意気味にぶつかり合うことがなかったので正直消化不良だった部分があるのだが…このわずかな残り時間となって、再び挑んでくるようだ。
女神と勇者がぶつかるのは、何か間違っているような気がしなくもない。
だけど、その挑む相手が何も強大な悪や魔王に限った話ではないだろう。
あきらめないからこそ、勇ましく挑むからこそ、勇者がいるのだから。
【ブモブモブモモモモモモモモモモモモモ!!】
だんっと蹴り上げ、輝くこぶしを突き上げ、地獄の中をマッチョンが突き進み始める。
そうたやすく来させるわけにはいかないと、黒き女神の攻撃が襲い掛かるも、その一撃一撃をぎりぎりで読み切ろうとするも流石にまだ進化したでて慣れておらず、回避しきれずにダメージを負ってしまうが、それでも勇気ある進撃は、豚の彗星は止まることを知らない。
【ブモモモモブモォォオオオオオオオオオオオオオ!!(豚勇者の彗星拳!!)】
もはや足裏からジェットが噴射しているような勢いで、一直線に突き進むマッチョンの拳の光が流れ、一筋の希望の星が流れゆく。
この一撃だけでいい。お互いに残りの体力はないのだから。
押し負けてもいいから…自分を守ってくれたあのろくでなしどものためにも一矢報いるために、マッチョンは全力を拳に捧げる。
むしろ、ろくでなしどもよりもド変態どもよりも、この観客席で今も見ている妻と子供に父親として、輝く姿を見せてあげたい。
【ブモオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】
その思いだけで猛攻をかいくぐり…そして、地獄の中をかいくぐり、その星の一撃は届く。
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
その轟音は、闘技場中に鳴り響く。
勇気ある一撃が女神とぶつかり合って大爆発を起こし…大きな土煙を上げる。
結果はどうなったのか、観客席にいる者たちも、かろうじて戦いに生き残っていたプレイヤーたちもかたずをのむ中…煙が晴れ、その結果をありありと映し出した。
【ブ…ブモォォオオオオオオオオオオ!!】
勝利の雄たけびを上げるのは、女神ではない。
ただの豚だったはずの、一匹の勇ましいモンスターの声が鳴り響く。
『レイドバトル、時間終了ぉおおおおおおおおお!!だけど、時間切れで終わったわけではなく…残り3秒のところで、女神のHPが0になったことを確認!!』
『機械神、沈黙!!黒き女神、消失!!両レイドボス共にHPが完全に削りきられたということはぁぁっぁぁぁ!!』
『挑戦したプレイヤーたちの勝利だぁぁあああああああああああああああああああああ!!』
「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」
司会者の告げる結果に対して、その場に集っていた者たちは大歓声をあげる。
理不尽なレイドボスとしての力。
明らかに圧倒的過ぎる、神の力。
その全てに対して押しつぶされそうになっていたが、今ここに最後の一撃が決まり…彼らは手に入れることができたのだ。
神に打ち勝つという、恐るべき偉業を。
「「「「マーッチョン!!マーッチョンン!!マーッチョンン!!」」」」
そしてこの勝負の中で、最後の一撃を、女神に対してひるむことなく挑み切ったモンスターの名を皆で祝して叫び、レイドイベントは無事に終幕を終えるのであった…
「…あーあ、第四形態も用意していたけど、流石に負けちゃったか。まぁ、そこまで出す意味もなかったけど…目的としては、稼げたからいいか」
「大盛況、大繁盛、ALがっぽり…これで無事に、乗り切れる!!」
「ところで機械神、それで足りるの?」
「延滞したAL、これで返済しきれるけど、何か問題が?」
「いや、このイベントのために量産型とか用意しまくっていたけど、壊れた機械の修理とか含めるとバランスが取れていたのかなって」
「大丈夫、しっかり考えて、バランスよくなって…アレ?これ、計算機のねじ…げ」
…計算する際に、間違えないように何度も確認を行うのは当然のこと。
アナログな方法も正確にできるが、不安ならば機械のほうでやるほうが正確だという人もいるだろう。
だが、アナログな方法でも少しミスをしてしまい、さらに、もしも機械が気が付かないうちに実は壊れていたのに、偶然の一致が起きていたとしたら…どうなのだろうか?
第一形態が自身の力と配下のモンスターの力を集約し混ぜ合わせた混沌の力で、、第二形態で自身の力をより強化して戦闘向けの霊装として身に纏って強化するのであれば、第三形態は何を行うのか。
形態が変わることはただの変身にあらず…例えるのならば、原石を磨き上げてさらなる宝石へ進化させるようなもの。
まだ見ぬ力を、隠された力を引き出し、今までにないものを生み出す…いや、生み出すというよりも、根源的な…その女神の力があふれ出る場所から、より力を増幅させて放出し、その身に注ぐことで存在そのものを次の段階へ進めていくが故の副産物が、実体を得てこの世界へ顕現させるもの。
その生みだす場所はどこにあるのか、見えぬ場所に、その光が届かぬ深淵の奥底からあふれ出しているはずだが、存在を目にすることは不可能に近い。
だが、その不可能に近い深淵の顕現を疑似的に身に宿して女神としての力を引き上げてより美しい宝石へと磨き上げる…それが、このアビススタイルなのだ。
とはいえ、「アビス」という意味は何も『深淵』の意味だけを持つのではない。
その言葉の別の意味として『地獄』というものも持っており、捉えようによってはその身をもって、深淵ではなく地獄をこの世界に顕現させるようなものになるため…レイドバトルの残り時間が少ないこの闘技場内は今、その地獄が姿を現していた。
「ぎゃあああああああああ!!槍が雨のように襲い掛かってくるぅうううう!!」
「空中にポンっと穴が出たと思ったらそこからぶん殴られたぁぁ!!」
「蹴りだけで衝撃波がぁぁぁ!!いやこれはこれでありがとうございますぅ!!」
「さっきよりも強化されすぎだぁぁぁぁぁ!!」
参加しているプレイヤーたちの阿鼻叫喚が響く中、空中に浮く黒き女神は微笑を浮かべ、その攻撃の手を緩めない。
レイドバトルの時間も残り少なくなっており、変身したとはいえマッチョンのあの攻撃を受けてHPもかなり減っているはずなのに、その最後を削りきれるような隙が目に見えないのだ。
宙に浮かぶ輝く槍はまるで自分の意志を持っているかのように蠢いて襲い掛かり、何もない場所へ攻撃を飛ばしたり、あるいはその身に纏う力をふるうだけで嵐のようにして襲い掛からせることができるなど、第二形態の時よりもさらに強化されている攻撃のせいで、プレイヤーたちにとっては逃れられない理不尽な力で地獄を浴びせかけてくる女神。
この数分前に、ようやく機械神のほうのHPを削りきって沈黙し、女神のほうになんとか戦力を集中できるようになったわけだが…それでも、最後の一撃が入れられない状態。
いや、残りのHPが少なくなったからこそ、最後の攻撃がより激しくなったのもあるだろう。
このまま時間をかけて倒すことができなくとも、参加した証はもらえるわけだが…それでも、プレイヤーたちとしては最後のボスまで確実に倒しきりたい。
この機会を逃せば、次に黒き女神と戦えるのはいつなのか。
逃してしまえばめぐり合うまでにまた時間がかかるだろうし…ゆえに、プレイヤーたちはかなわないかもしれないと思いつつも、挑み続ける。
最後の一撃、それさえ決めればどうにか倒せるかもしれない。
しかし、そのとどめを刺すための攻撃を与えるには、あの攻撃の中をかいくぐらなければいけない。
第三形態の、深淵から力を沸き上がらせて地獄を生み出すような女神に、果たして誰が叶うのか…その絶望のような中で、一つの光が輝き始める。
【ブモモモ…!!】
「さ、最後のHPがぎりぎりだけど…それでも、何とかこの戦闘の中で、進化の選択が出たぞ…」
女神の一撃をかばい、この地獄の猛攻の中で必死になって攻撃から生き延び、その欲望の強さには生命に関する欲望もあったのか、タローンとマッチョンが死屍累々なプレイヤーたちの中で立ち上がる。
ミートン、スッケン、アティは既に撃沈してしまったが、それでも彼らの遺志を残すようにして、最後の希望の光、テイムモンスターの進化にかける。
条件は既に、整っている。
進化に必要な経験などは既に積み重なっており、上の段階へ進むための力はある。
いつでも上の存在になることは容易かった。
その才能ゆえに、その環境ゆえに、その生きざまのおかげで通常のオークの道から外れ、より上位の存在としてなりあがることはできただろう。
だが、今はこれで十分であり、その先を目指すのはより強大な相手が出たらということで保留していたわけだが…そこに、先ほど手に入れた称号「女神に挑みし勇者」としての力が加わり、マッチョンの進化先に新しいものが追加されていた。
「オークエンペラー、デーモンキングオーク、グレイトロードオーク…それらが既に先に出ていたが、まだ選ぶことはしていなかった…」
【ブモモゥ】
「その選択のおかげで、この状況で手に入れた道の進化先を得た。だからこそ、その進化の果てに手に入れてくれ…マッチョン!!」
【ブモォオオオオオオオオオオ!!】
―――
>4『???(特殊進化)』を選択しますか?
>受理いたしました!!
>これより、テイムモンスター『マッチョン』の進化が始まります!!
―――
選択肢を選び抜き、この状況の中で生まれた未知の進化先を選択し、マッチョンの体が光り輝く。
その変化は一瞬でありつつも、大きな力がマッチョンに生み出され…その進化した姿を見せる。
【ブモォオオオオオアァァァァァァァァァ!!】
―――
>マッチョンの進化が完了いたしました!!
>オークでは得られなかったはずの、奇跡の進化!!『真・ブレイバーオーク』になりました!!
『真・ブレイバーオーク』
普通のオークでは至れぬ、勇気あるものとして覚醒した異例の進化をたどったモンスター。
勇者といえば剣やハンマーなどの武器を装備しているイメージがあるが、この真・ブレイバーオークは武器を装備することができない。
その代わりに、その手にはオークとしてはありえないほどの勇気の力が宿っている。
―――
ばさぁっといつの間にか装備されていた勇者としての鎧に着いたマントが風になびき、マッチョンの拳が光り輝く。
残りのレイドバトル時間としてももう間もなく終了間近であり、この地獄の中で女神に一撃を与えるのはいかにパワーアップしていても至難の業だろう。
けれども、それであきらめるようなものであればそれは勇者ではない。
あきらめることなく、抗い続ける…その勇気が心に宿る限り、その隙を狙う。
『…ん?…なるほど、これが最後の一撃と思って、来る気か』
マッチョンの勇ましい雰囲気の変化に、地獄を生みだしていた黒き女神が気が付く。
先ほどのぶつかり合いでは、お互いの攻撃が不本意気味にぶつかり合うことがなかったので正直消化不良だった部分があるのだが…このわずかな残り時間となって、再び挑んでくるようだ。
女神と勇者がぶつかるのは、何か間違っているような気がしなくもない。
だけど、その挑む相手が何も強大な悪や魔王に限った話ではないだろう。
あきらめないからこそ、勇ましく挑むからこそ、勇者がいるのだから。
【ブモブモブモモモモモモモモモモモモモ!!】
だんっと蹴り上げ、輝くこぶしを突き上げ、地獄の中をマッチョンが突き進み始める。
そうたやすく来させるわけにはいかないと、黒き女神の攻撃が襲い掛かるも、その一撃一撃をぎりぎりで読み切ろうとするも流石にまだ進化したでて慣れておらず、回避しきれずにダメージを負ってしまうが、それでも勇気ある進撃は、豚の彗星は止まることを知らない。
【ブモモモモブモォォオオオオオオオオオオオオオ!!(豚勇者の彗星拳!!)】
もはや足裏からジェットが噴射しているような勢いで、一直線に突き進むマッチョンの拳の光が流れ、一筋の希望の星が流れゆく。
この一撃だけでいい。お互いに残りの体力はないのだから。
押し負けてもいいから…自分を守ってくれたあのろくでなしどものためにも一矢報いるために、マッチョンは全力を拳に捧げる。
むしろ、ろくでなしどもよりもド変態どもよりも、この観客席で今も見ている妻と子供に父親として、輝く姿を見せてあげたい。
【ブモオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】
その思いだけで猛攻をかいくぐり…そして、地獄の中をかいくぐり、その星の一撃は届く。
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
その轟音は、闘技場中に鳴り響く。
勇気ある一撃が女神とぶつかり合って大爆発を起こし…大きな土煙を上げる。
結果はどうなったのか、観客席にいる者たちも、かろうじて戦いに生き残っていたプレイヤーたちもかたずをのむ中…煙が晴れ、その結果をありありと映し出した。
【ブ…ブモォォオオオオオオオオオオ!!】
勝利の雄たけびを上げるのは、女神ではない。
ただの豚だったはずの、一匹の勇ましいモンスターの声が鳴り響く。
『レイドバトル、時間終了ぉおおおおおおおおお!!だけど、時間切れで終わったわけではなく…残り3秒のところで、女神のHPが0になったことを確認!!』
『機械神、沈黙!!黒き女神、消失!!両レイドボス共にHPが完全に削りきられたということはぁぁっぁぁぁ!!』
『挑戦したプレイヤーたちの勝利だぁぁあああああああああああああああああああああ!!』
「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」
司会者の告げる結果に対して、その場に集っていた者たちは大歓声をあげる。
理不尽なレイドボスとしての力。
明らかに圧倒的過ぎる、神の力。
その全てに対して押しつぶされそうになっていたが、今ここに最後の一撃が決まり…彼らは手に入れることができたのだ。
神に打ち勝つという、恐るべき偉業を。
「「「「マーッチョン!!マーッチョンン!!マーッチョンン!!」」」」
そしてこの勝負の中で、最後の一撃を、女神に対してひるむことなく挑み切ったモンスターの名を皆で祝して叫び、レイドイベントは無事に終幕を終えるのであった…
「…あーあ、第四形態も用意していたけど、流石に負けちゃったか。まぁ、そこまで出す意味もなかったけど…目的としては、稼げたからいいか」
「大盛況、大繁盛、ALがっぽり…これで無事に、乗り切れる!!」
「ところで機械神、それで足りるの?」
「延滞したAL、これで返済しきれるけど、何か問題が?」
「いや、このイベントのために量産型とか用意しまくっていたけど、壊れた機械の修理とか含めるとバランスが取れていたのかなって」
「大丈夫、しっかり考えて、バランスよくなって…アレ?これ、計算機のねじ…げ」
…計算する際に、間違えないように何度も確認を行うのは当然のこと。
アナログな方法も正確にできるが、不安ならば機械のほうでやるほうが正確だという人もいるだろう。
だが、アナログな方法でも少しミスをしてしまい、さらに、もしも機械が気が付かないうちに実は壊れていたのに、偶然の一致が起きていたとしたら…どうなのだろうか?
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