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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-91 悪は割としぶとい理由がある

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 星の裏側のほうにやってきたのは、一隻の船。
 だが、それはただの魔導船ではなく…


「おーっほっほっほっほっほ!!ここが噂の牧場の星というところざますね!!」
「へぇ、姉御、その通りでやんす!!」
「情報を何とか集めた結果、一致率は80%オーバー、確実にここが目的の星で間違いないでふぅ!!」
「珍しいモンスターが多くいるという星…まさに宝の星ざますねー!!」


「…すごいな、アルケディア・オンラインの世界だけど、ザマス口調のすさまじくけばけばしいおばちゃんなんて初めて見たかも」
「私も初めて…じゃないな。確か、ある国でザマスカーニバルってのが開催されているのを見たことあるからね」
「何そのうるさそうな奇祭」

…あちこちつぎはぎだらけのぼろぼろな船だったが、そこから降りてきた何やら色々と濃いような三人組を、僕らは木陰に隠れながら観察していた。
 なんというか、一昔前のアニメとかで出てきそうな三人組というような組み合わせだが、おばちゃんおっさん×2とちょっとばかり平均年齢が高そうだ。

「しゃべっている内容からして、どう考えても密猟者だよな…」
「でも、プレイヤーじゃないね。あれはたぶんNPCだけど…あった、賞金首リストに載っていたよ」

 あんなザマス口調をリアルで言うようなプレイヤーがいるのだろうかと思いつつ、ミーちゃんはこんなこともあろうかと持ってきていた密猟者に関する様々な資料を開いて、相手の正体を既に突き止めていた。

―――
『ザマスリア一味』
リーダー『ザマスリア』、その他二名の組み合わせの密猟者。
ありとあらゆる星々で、貴重なモンスターを狩りまくり、そのドロップアイテムを超高額で裏ルートで回しまくっている賞金首。
モンスターを狩るだけならまだギリギリセーフな部分もあるが、彼らが狩ったモンスターの中には許されないものもいくつか存在していたがゆえに、高額の賞金首として登録された。
―――

 見た目も口調も濃いが、中身としてはあっさりとした紹介で済む悪党のようである。
 というか、あのものすごいおばちゃんがおそらくザマスリアという名があるのに、他がそんなあっさりとした感じって…あ、今3代目ぐらいになっている組み合わせなのか。毎回仲間を犠牲にして逃亡をどうにかできていて、あのその他二名は最近更新された奴らなのか。

「何にしても、悪党なら容赦する必要もないかな」
「私の星に対して、何かしでかされる前に潰した方がよさそうだね」

 ミーちゃんと意見が一致し、あの一味をここで討伐することを決める。
 せっかくのミーちゃんの作ったミルルン牧場を、どこかの密猟者に荒らされたくないからね。



「「というわけで、先手必勝!!」」
「なんざます!?」
「「うおぉぉぉっと!?」」

 ばっとお互いに息を合わせて勢いよく木陰から飛び出せば、僕らの姿に気が付いて、ザマスリア一味は驚いた様子。
 わざわざ名乗るようなこともないし、やるのであればさっさと叩き潰した方が楽だ。


「デスイータ―の職業のちょっと変わった進化職業!!『グランドプロ―』で扱える鍬の『ダイヤモンドクラッシャー』!!」

 ミーちゃんがどこからともなく大きなダイヤの光を放つ鍬を取り出し、勢いよく振り下ろす。

「こっちもRMPでルトの電撃を使うよ!!」

 バリバリと電撃を放ち、ミーちゃんの鍬の一撃と共に相手に落ちるが…残念ながら、相手ただの賞金首ではなかったようだ。

ガギィン!!
バシィッ!!
「「!!」」
「うぉぉぃ、危うく喰らうところでやったでやんす」
「不意を突かれたとはいえ、このぐらいならばなんとか耐えられたでふぅ!!」
「危ないねぇ危ないねぇ。まさか強襲されるとは思わなかったざます!!」

 他二名が大きな盾を取り出し、僕らの攻撃を防いだようで、後方にさがって距離を取る。
 どうやら容易くいくような相手ではなかったようだ。


「わーお、思った以上に効いてないかも」
「おーっほっほっほっほ!!あたくしたちが何の用意もなく、強さもなくしてモンスターを狩りまくっていたとでも思うざますか?この星にいるところを見ると、そっちの鍬もちがおそらく牧場主のミルルン…もう片方の電撃を放った少年は知らぬざますが、ご友人のようざますねぇ」

 ミーちゃんの言葉に対して、高らかに笑いながらそう口にするザマスリア。
 一見、ただの子悪党三人組にも見えるものたちだが、考えてみればあちこちで密猟を…モンスターを狩っていたということで、倒した時の経験値を得て強くなっている可能性があっただろう。

 できれば楽に倒せたら良かったが、簡単に行かないようで残念である。


「不意の襲撃は見事と言えるざますな。だが、その程度ではあたくしの頼れるウスグラーノとブタンズラの防御を突破できないざますよ」
「あ、ちゃんと名前あったのか。その他二名って情報しかなかったから、ないのかと…」
「そこは同意するざます。あたくしら自身の賞金首情報は広がっているからわかっているざますが、何故かいつも他二名って紹介なんざますよねえ」
「ひどい話でやんすよ!!あっしら、姉御の頼れる盾として代々仕えているのでやんすのに!!」
「なぜか、姉御ばかりがピックアップされて、我々の名前が広がらないでふぅ!!」

 どうやら彼らは彼らなりに思うところもあるらしい。なんかこう、不憫としか言いようがないだろう。


「だけど、それでもあたくしらを襲ってきたということは、襲うだけの覚悟はあったようざますね。あたくしらの賞金首を狙う輩は星の数ほどいるざますが…なるほど、その眼付や気配、ただ者ではないざますねぇ。牧場主のほうは事前に調べていてわかっているところもあるざますが、ご友人も強者のようざます」

 だてに裏社会に入っていないというように、僕らを見てそう口にするザマスリア。
 数ではテイムモンスターをまだ出していない状態だと相手のほうが勝っているとは思うが、それでも油断せずにこちらを警戒しているようだ。

「でもでもでもぉ、それでもあたくしらはそうたやすくやられないどころか、返り討ちにしてこの星もろとも全て奪って見せるざます!!ウスグラーノ、ブタンズラ!!最初から油断せずに、ここに来る前に用意したアレを使うざますよ!!」
「「了解姉御ぉぉ!!」」

 いうがはやいが、ザマスリア一味はこのまま襲ってくるのかと思いきや、くるりと向きを翻して乗ってきたらしいぼろぼろな船に乗り込んだ。
 見た目が物凄くぼろい船なのだが、何をする気なのだろうか?

『おーっほっほっほっほっほ!!外部スピーカーテスト完了ざますぅ!!さっそく偽装解除ざます!!』

 船外に響き渡るような声が出たと思えば、次の瞬間、そのつぎはぎだらけだった船の外壁がぼろぼろと零れ落ち、何かが立ち上がった。

 それはまるで巨大な人型のような…いや、なんというべきだろうか。
 なんというかこう、ゴリラの肉体にニンニクのような頭が乗っているような不気味なモンスターへと変貌した。

【ウホニクホォォォォォォォォン!!】

 雄たけびを上げると、ぶわっとすさまじい風があたり一帯に吹き抜ける。
 それと同時に何かが鼻を刺激し…すさまじい臭気が漂った。

「「くくく、くっさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」

『どうざますか!事前情報を収集し、用意しておいた対牧場主用モンスター改造兵器『キンニクニンニクニクニクコング』、長いので省略して『キンニンコング』の常時発生させるおぞましい臭気はかなりえげつないざます!!』
「牧場主相手になんでそんなものかはともかく、においを感じ取れる生物全般への生体兵器になっているんだけど!!というか、ミーちゃん大丈夫?」
「ー--無理」
「メッチャ効いていたぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 動くたびにニンニクと汗と獣臭さが煮詰められたような風が吹き荒れ、濃厚すぎる臭気が襲い掛かる。
 まさかの頭のねじが吹っ飛んで作ったのかと言いたいような生体兵器だが、どうやらあまりにも臭すぎてしっかり効いてしまったらしい。混ざりまくって気絶したくなるようなおぞましい匂いに成り果てているのだから無理もないだろう。

 とにもかくにも、この臭気ではまともに戦うことも難しい。

「まずはこの場から離れないと…ああ、ファイオがすでに気絶しているか」

 犬の嗅覚は人より優れているというが、モンスターであっても当てはまっていたらしい。
 とっくの前に気絶しており、ジェットエンジンでの離脱はかなわない様子。

 かといって、船を呼ぶにも距離があるし、マリーたちを出そうにもこの臭気ではまともに相手にできなさそうだし、どうにかするには…

「----『黒き女神』第二形態!!」

…ひとまずこの場から全速力で行けそうなのは、これしかないと思い、黒き女神のスキルを発動させるのであった。
 


 
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