アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.1-72 密かにしていて

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…真夜中、この時間帯は誰もが寝静まり、ここに配属されてからしばらくの間、見つけては潰していたのもあって、周辺に怪しい気配はない。
 そう思いつつ、スリープモードに入っていたロロだったが、ふとある気配を感じ取り、少しだけ起動した。

【…気配察知…ミント様、いかがされたのでしょうカ】
「ありゃ?ロロさんを起こしちゃった?ちょっと、のどが渇いてね…」

 流石に従妹とはいえ同室に寝るのはよくないかなと思い、別室で寝ていた彼女。
 どうやらのどが渇いたために水を求めて起きてきたようである。

【まだ真夜中で薄暗いデス。私が水を取って着ましょうカ】
「ああ、できるならお願いしようかな」

 薄暗い中動いて何かに躓いて怪我をされるのは困るので、ロロはすぐに動く。
 ささっと夜間センサーで周辺の状態を確認しながら迷うことなく台所へ向かい、コップに水を注ぎ持ち帰ってきた。

【どうゾ】
「ありがとう」

 ロロから受け取り、水を飲むミント。
 ごくごくと飲み干し、ふぅっと息を吐く。

「のどが潤ったけど…ちょっとだけ目が覚めちゃったかな。かといって、寝床で横になってもすぐに眠れなさそうだし…せっかくの機会だから、ロロさん、眠気が来るまで少し、付き合ってくれないかな?」
【わかりまシタ】

 明かりをつけることもなく、ささっと座りやすい様に座布団も用意し、お互いに腰を下ろす。
 立ちっぱなしでもロロは問題はないが、こういう時は暗くて見にくい状況になっても、同じような体制になっていたほうが話しやすいことを理解しているのだ。







 お互いに腰を下ろして、ゆったりと真夜中の女子会のように穏やかに話し合う。
 たわいもない話、外国に行った時の話や、オンラインによって使用人システムが稼働してからのロロが知る春の話などをして、彼を起こさないようにしながらも静かに盛り上がる。

「ぷくくく…やばい、最初に春に説明されていたけど、女体化から女神になる流れがちょっと面白い…何がどうなって、そうなってんの…」
【そこ、主様気にしているところデス】

「欲望戦隊…あー、もしかしてそれかな?ミノタウロスの迷宮に挑みまくる謎の変態組がいたって話が、一時期あったんだよね」
【何故そこに挑んだのでしょうカ?】
「…ガセネタで、ちょっと流れていたのがあってね。ほら、これ牛の女の子な奴がいるってのがあったの」
【あー、これは確実に引っ掛かりそうな…ン?過去形みたいですガ】
「珍しいミルクが取れるかなって言ったけど、えげつない真実しかなかったかな…まさか、牛のコスプレをした巨漢集団がいたあの光景は…オーク牧場にできそうかなって思ったぐらいだし」
【えげつないスクリーンショットですネ…】

「これはこの間、侵略集団が牧場に来た写真。今は何人か、研修生になったけどね」
【何がどうしてそうなったんでしょうカ】
「マスターコカトリスたちに挑んで、何か武道に目覚めたらしいんだよね」

 色々と話し合いつつ、盛り上がるロロとミント。
 ツッコミどころ溢れる話は春に負けず劣らず持っているようで、確かに彼の従妹だなと謎の安心感と納得感をロロは覚える。

「ふわぁ…っと、そろそろ眠気が出てきたかも」
【では、お開きにしましょうカ】

 ほんの十数分程度で済ませるはずが、ちょっと盛り上がり過ぎて、気が付けば明け方になりかけていた。
 今から寝てもそこまでの睡眠時間は得られないだろうが、寝ないよりはましだろうし、まだ滞在するのであればそこまで気にするようなことはない。
 しいていうのであれば、オンラインがメンテナンス中のためにすぐに遊べないのが残念なことぐらいだが…

「それでも、終われば遊べるし、楽しみだよ。ふふふ、改めてオンラインの世界で、春と遊びたいね」
【ええ、主様と遊ばれるのはよいことだと思いマス。それと、牧場の話は…】
「ええ、絶対に招待するよ」

 がしっとこぶしを交え、ちょっとした女子会で中を深めた二人。
 寝床まで向かおうとミントが立ち上がり、ふと、そこで思い出したかのように声を上げた。

「あ、そういえば、ロロさん。せっかく仲良くなったし、一つだけ秘密を共有しましょうか?」
【秘密?】
「ええ。…実はね、私、彼の従妹だけど…本当はね、血のつながりがないのよね」
【なるほど、血のつながりが無…ン?】

 一瞬、何を言っているのか信じられず、ロロは思わず疑問の声を上げる。
 その様子を見て、ふふっとミントは笑みを浮かべた。

「そう。私、お父さんのほうの連れ子で…血縁者のようで、そうじゃないの。でも、これって都合が良くて…そこはまた、別の話でね」

 ほほえみから、ニヤッと口角を上げてそう告げた後、ミントは寝床へおとなしく戻っていった。
 そして、衝撃的な秘密とその何かたくらむ表情に衝撃を覚え、ロロはその場に立ち尽くす。

【…え、これ、聞いてよかった話なのでしょうカ?主様、そんなことも言っておらず、ただの仲の良い従妹としての認識でしたが…似ている感じも血縁者っぽく…育ちの影響?いや、それでも…】

…眠気が誘われたミントであったが、反対にロロのほうはスリープへ移行できない疑問の数々の処理に追われる羽目になるのであった…
 
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