アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-45 被害は甚大すぎた

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…空想実現ラボラトリー会社『ユニコーンX』では今、会社設立してから未曽有の災害に見舞われていた。

「社内ネットデータ損失率60%!!予定していたプロジェクトや、苦労して盗んだ技術などがどんどん喪失していきます!!」
「大変です!!警視庁のほうからサイバー犯罪担当の方が!!」
「こちらは国際裁判所から、情報搾取や盗難に関する問い合わせなどがきております!!」
「「「いったい何がどうなっているんだぁぁぁぁぁ!!」」」

 あわただしすぎる忙しさに目を回してそう叫ぶ社員たちだが、その詳細は彼らでさえも理解できない。
 突然社内のネット内で警報が鳴ったかと思えば。どんどん自社のデータが破壊されたりなどしてしまう事態が発生し、慌てて対応しているのだが追い付かないのだ。

 何か変なウイルスでも入ったのかと思って、ウイルスバスターやその他セキュリティシステムを使って対応してみようと試みるも、ことごとく効力を発揮せずに打ち破られている。
 それでも何とか収められそうなほど穏やかになって、終わりがようやく見えそうだなと一息付けそうなところで、まさかの別の終わりが見えてきそうになったのだ。

「重要機密サーバ内、突然データ完全消失!!破壊、いや、何かもっと違う大穴に吸い込まれているかのような消失がどんどん発生しています!!」
「いそげ、そこを切り離せ!!」
「流失や損失を防ぐんだ!!そこに大事なデータがあろうとも、他のものを失うのは不味い!!」
「ダメです!!応答せず、どんどん被害拡大!!社内システムの90%が崩壊していきます!!」

 騒動の終わりではなく、会社としての終わり。
 それが目に見えてきて社員たちは死ぬ気で対応しようとするのだが、どうしてもうまくはいかない。
 被害拡大を防ぐためにシステムから切り離しても、吸い寄せられるように再接続されて、どんどん重要なデータが奪われていく。
 どこかに盗まれるのならまだしも、確認してみればどこかへ存在そのものが消えるかのような不気味さがあり、手を出していると現実の世界にいるはずなのに、まるで自分たちもネット内のデータと一緒に持っていかれそうな喪失感を感じてしまい、次第に手が震えてまともに対応できなくなってくる。

「終われ、終わってくれこの大喪失!!」
「これ以上やめてくれえぇぇ!!長年ためてきた、他社の重要データが!!」
「ひぃこらいいながら、必死になってきたのにぃぃぃぃ!!」

 ろくでもないことばかりだったが、それでも自分たちがかき集めてきたものがすべて無に帰っていくというのは耐え難いものがある。
 神にすがるように叫ぶのだが…残念ながら、それはやらかした女神に聞こえることもなく、どんどん失われていく。
 そして最後には…ぽんっと軽快な音を立てて消失が止まったのだが、それは外部へ消失現象が広がろうとしていた寸前であり、会社中のすべての情報が失われていたのであった……










『ニュースです。本日、空想実現ラボラトリー会社として名をはせていたユニコーンX社が、倒産を発表しました。情報によればすべてを失ったという供述が社員たちから出ており、どういうことなのかはっきりしないところがあるそうです』
『また、同社は他企業より情報盗難などの被害で訴えられており、どういうわけか証拠が次々に送られているらしく…』


「…うわぁ、思った以上に大事になったというか、終わったのか」
「朝からニュースになってますネ」

 社内イベントの翌日、あの後どうなったのかなと思ってニュースを入れたところ、一番にあの企業の末路に関しての報道がされていた。
 色々とヤバいものをやっていたうわさが絶えなかったところだけに、マスコミがここぞとばかりに盛大に探りまくっており、出てきた内容をどんどん公開しまくっているようだ。
 不思議とどうしてこうなったのかということに関して部分はぼやかされており、原因がうちの会社に…特に一番やらかしたであろう黒き女神の攻撃などはバレていないようなのは良いだろう。

「しかし、出てくるのろくでもないことばかりしかないなぁ…」

 全国で被害にあった企業からどんどん訴えられているようだし、国を超えて国際裁判所とかとんでもないところからもやられているようだし、この様子では社会的な復帰は望めないだろう。
 なんというか、やることをやらかしていたからこその結末を迎えた企業で自業自得とも言えなくもないのだが、ここまでぼろくそに暴かれて死にかけているのを見ると、哀れに思えなくもない。

『また、違法なMODなども計画していたようで、今話題のアルケディア・オンラインの使用人の奴隷化やテイムモンスターを人から奪って自分のものにしたりできるようなものなどの開発も行っていらしく…』

「同情の余地、まったくなかった。潰れてよかった」
「そうですネ。あ、朝ご飯できましタ」

 一瞬同情しかけたが、その余地すら瞬時に奪い去られてしまったようである。
 なんにしてもこの日、たった一つの企業がデータどころかその全てを失ってしまうのであった…

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