アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-44 手ごたえとしては、ちょっと違えども

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…いつも通りになって良いのかは微妙なところだが、アルケディア・オンラインの世界で扱っていた黒き女神の力。
 ただ、ここはオンラインの場ではなく、敵対企業のネット内の中であり、スキルが使えたとしてもまともに動くかは怪しいところがある。

「でもまぁ、なれたことには変わらないか。ガンナーとして使っていた銃が浮いてファ〇ネルみたいなことになっているのは気になるけど…具合としては。大体同じ感じだな」

 第一形態は主にテイムモンスターたちの力を借りている部分が大きいのだが、ここではテイムモンスターは使えないので、自力でやれる第二形態のほうになったのだが、選択肢としては正しかっただろう。

「というわけで仮称パクル、行かせてもらうよ!!全弾装填完了からの一斉掃射!!」

 背後で浮かんでいた拳銃が瞬時に分裂し、一斉に銃撃を始める。
 ガトリングとは違って一発一発撃つタイプのために、次弾を撃つまでに少々間があるが、大量に拳銃があれば広範囲を一気にカバーできるだろう。

【オギュアァァァア!!ガードシステム作動!!】

 とはいえそんな単純に事を進めてくれないようで、使用人の技術以外にもほかのつぎはぎをされているせいか、パクルは防御へすぐに移った。
 自身の両手首が切り離されて、ずるりと内部のコードが飛び出し、回転させる。
 ヌンチャクのように扱いつつも回転を盾として扱っているようで、器用に撃ちだされている銃弾をはじき、防ぎまくった。

 その回転する拳の盾を使ってこちらに向き直り、口が開いたその瞬間に嫌な予感を感じ取る。

【ボルスギャノォォォォォォン!!】

 ぼうっと音がしたとたんに、強烈な閃光がほとばしり、まっすぐこちらへ向かってレーザー光線のようなものが撃ちだされる。


「っと、光線ってありかよ!!」

 慌てて身に纏う女神の衣服…バトルクロススタイルによって変形する女神の鎧というべきような着物に意識を向け、刃に変えて光線を左右に切り裂いて防ぐ。

バウバウバウバウバウゥ!!

 連続で撃ちだされてくるが、口から出ると分かっているのであれば軌道が読みやすく対応しやすい。
 次々と来ても刃で切りさき、周囲が光線で熱されて破壊されていくが気にしないでおく。
 というか、この地形自体も考えたら敵企業ネットなんだよな…自社の生み出した化け物によって破壊されまくっていることになるのだが、良いのだろうか?
 いや、想定できていない事態だとは思う。そもそも、データがこうやって敵になって出されること自体、どこの企業が想定した対応策を練れるというのだろうか。


「しかし光線連打はきついな…こちらの銃撃も防がれているし、硬直状態になりかねないか」

 止まぬお互いの攻撃に、動くことがちょっと厳しい。
 さすがにオンライン内とは勝手が違うせいか、第二形態とはいえ本来の黒き女神の出力でもないようだし、パワーダウンしているようだ。
 まぁ、もともと無理やり敵企業のネットの場をサバゲー会場にしている以上、オンラインで扱えるものに相当な制限がかかるだろうが…本来の力であれば確実に仕留めきれそうなのは歯がゆいところだ。

「いや、第二形態自体がそもそも接近戦向きだからな…銃撃でのサバゲー仕様だが、そっちにとらわれないようにしたほうが良いか」

 ガシャンっと腕のほうの衣が変形し、刃へと切り替わる。
 足元のほうにも小型の拳銃が出現し、接近しつつ銃撃も放てるようになる。


「というわけで、近づかせてもらおうか」

 だぁんと地面をけった瞬間、拳銃の火薬が足裏で爆発するような感触を覚え、すさまじい勢いで加速した。
 どうやらサバゲー仕様というのもあって、接近戦のほうにも利用できるものは全部使えるようになっているっぽいな。

ガァァァン!!
【イギョギュイアァァァァ!!】
「接近したら今度は、全身から刃が出てくるのかよ!!厄介すぎることこの上ないなぁ!?」

 まさか全身ぼろぼろのような見た目の状態から、ハリセンボンのごとく大量に刃が飛び出すとは想像できなかった。
 間一髪のところで対応して、バトルクロスのほうでも刃を出してぶつかったので、突撃して串刺しになる惨状は避けられただろう。

「接近戦も危ないのか…だったら距離取って大きな遠距離攻撃だ!!」

 刃で全身串刺しになるわけにもいかないので、再び爆発を起こし、銃撃を行って防がせることでこちらへの意識をそらせる。
 その間に大きな特大の火力を、ちょっと威力はここでは下がるけれども今出せる分なら、これが多分一番良いだろう。

 先日、どこかの神殿へぶち込んだきり撃つ機会に乏しかったが、ちょっと小さくなっている黒い火球のような女神の攻撃を出す!!

「『スローーーーーブラックシャィィィィィン!!』」
 
 前より威力は低いが、それでもドウォッっと勢いよく投げ飛んで、パクルへめがけて突き進む。
 あれならば盾とかあっても防ぎきれないはずだが…


【オグゲゲェェェ、ファイヤウォール作動!!】

 ネット内というのもあってか、定番というべき防壁を発動させ、パクルとの間に本当の炎の壁のようなものが立ちふさがった。
 それに直撃した黒い火球は防ぎきられるかと思ったが…そこは、威力が減退しても女神の力で作り上げた技というのもあってか、止まることはなかった。

 むしろその炎の壁すら着弾後に吸い込み始め、内部へ呑み込んで溶解し、大きくなっていく。
 というか、着弾したら爆散するはずなんだが、やけに様子がおかしいような…あ。もしかしてだけど、敵企業ネット内だからシステムの違いによって周囲の演算データなどが、もしかしてバグったのだろうか?

 一つの火球のような物体は今、徐々に周囲を吸い込み始めるほどのものとなり、攻撃の当初の面影はなくなり、無尽蔵に吸い込むよな穴ができてしまった。
 どうやらブラックホールようなものになったようで、このままいるのは非常にやばそうな気配がする。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「やっちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 爆散するどころか周囲を吸収していき、本格的にやばいブラックホールもどきのようなものが出現してしまった。
 自分で作り上げたせいか、僕自身には影響がないようだが、周囲のデータやそこから生み出された敵がすべて吸い込まれて、飲み込まれていく。


【オグギィアアァァァァァァァ!?】

 パクルのほうもこの結果は予想外だったようで、逃げ出そうとしたのか反転するも時すでに遅く、そもそもちぐはぐに繋がれたデータ自体がもろかったのか、ばらばらになり始めて、あっという間に吸い込まれてしまった。
 残るのはこの会社のネットサーバーだけだが、はっきりと暴走しているあれにどんどん飲まれているというか破壊されまくっているというか、悲惨なことになりつつある。


バシュゥン!!
「っと、女神スキルが切れた!まだ解除していないはずなんだが…もしかして、これ相当やばいことになった?」

 突然、黒き女神のスキルが停止し、通常の状態に戻ったが、時間切れとかそういうわけではない。
 この状況から考えると、女神の状態を保てるだけのものが、もうこの空間にはなくなったのだろう。
 つまり、早い話がこのネット自体が崩壊しかけているというわけで…さっさと逃げないとガチでやばいことになる。

「リタイヤリタイヤ!!あ、でもボタン壊されているんだったぁぁぁ!!敵、敵、誰でもいいからさっさと逃げてぇぇぇ!!」

 リタイヤボタンは破壊されているので、ここで逃げるのに手っ取り早い方法とすれば、どこかの敵キャラの攻撃にやられるのが早い。
 幸い全てが吸い込まれつつあるが各場所にいる敵キャラは踏ん張っていたりするようで、うまくやれば倒してくれそうだが…

【オオオオオオオゥ!!】
【ピギャァァァァス!!】
【モゲェェェン!!】
「なんで目が合った瞬間に全員全力で吸い込まれる方を選ぶんだよ!?あ、さっきの女神での戦いを見て、データだけど相手にしたくないと思っちゃったのか!?」

 まさかの敵前逃亡、全力で自ら死を選ぶというように、敵キャラデータたちは踏ん張りをやめて、吸い込まれに向かった。
 どうやらさっきの戦いのデータがわかっているようで、相手にしたら確実にやばい奴だと周知されてしまい、破棄される道を選んでしまったらしい。

 そのため、どうにかこうにかできないかと東奔西走しつつ、吸い込まれていく巨体の敵に飛び移り、無理やり口を銃でこじ開けた後、その中に飛び込むことで喰われた判定とかそういうものを得て、何とか脱出することに成功したのであった…



「…ガチで死ぬかと思った…」
「なんか最後のほう、おかしくなかったか?空間が一点へ向かって引き寄せられるようなことになっていたんだが」
「見た感じ、明らかに何かやべぇことになっているなと思って、リタイヤしたんだが…何があったんだ?」

…脱出後、そこには社員たちが次々に戻ってきてそう口々に言っていたが、黙秘を貫くことにしたのであった。
 皆さん、すみません。自分がやらかしました…あれ?でも、敵企業のネット、あそこからどうなるんだ?さすがにずっと吸い込まれ続けることはないとは思うが、相当きついダメージが入るような…気にしないでおこうか。




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