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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-35 チャイム音は、いじられるらしい

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…石材も渡し、本日開店したカイザーシルクワームさんの相談屋。
 場所はシルクワームさんの家の近くにあった手頃な森の中にあるようで、ついてみればしっかりとあのドタバタしていた騒動の中でもなんとか入手した石材が、立派な看板として備え付けられており、周囲の環境に負けずにびしっと決まっているだろう。

「ログハウスみたいにしつつ、庭のほうも多少開けて石でできたテーブルやいすもあって、ちょっとした室外喫茶とかもできそうですよね」
【うむ。四六時中同じ店というわけではなく、時間帯によって変えるようにしている。まぁ、開店して2~3週間ほどは相談の予約がすでに埋まっているので、解消してから調整する必要があるがな】
「え?予約?」
【飛び込みも可能だが、予約制もちょっと試してな…思った以上に反響があったようなのだ】

 シルクワームさんのところに訪れ、店の説明を聞いていたが、どうやらこの店に入るために予約することも可能らしい。
 NPCやプレイヤーなども関係なく、誰でも訪れやすいようにということで、いろいろと分けているそうだ。
 ワームさんだけじゃなくて、店で働くスタッフなんかも既に雇えているようで、中には現実のほうでわざわざカウンセリングの資格を有している人なんかもバイト感覚で働けるようにもしているらしい。

【相談事を請け負いやすかったが、しっかりと対応できるプロの方々もいたほうがより幅広く悩みの解消に役立つと思い、各種専門家の方々にも連絡し協力の約束も取り付けてある。建築、美容、職場、恋愛から住む場所まで、ありとあらゆることを想定したうえで、解決まで素早く動くことができるだろう】
「想像以上に本格的過ぎなんだけど!?」

 見た目がのほほんとした緩やかな森の中の相談所という感じなのに、やる内容が思った以上に本格的過ぎるレベルである。
 もともとそういう相談事に対していっそやってみようかという形で取り組み始めたとか聞いてはいたのだが…まさかこうもガッチガチにやるとは思いもしなかった。

【ちなみにこの相談所の構成、いろいろと意見を詰め込んだからこうなったのもある。よくある苦労人話とか、実は相談所を開いていたことがある悪魔とか、ほかのところで増殖する苦労人話とか…苦労話が多い人だとレパートリーもその分多くてな…だからこそ、幅広く対応できるようにしたのだ】
「苦労人2回出てないか?」





 そんなことはさておき、内装なども見せてもらったあと、ついでに本格的な運用のときに使用する予約サイトなども利用させてもらい、せっかくなのでちょっと予約を入れておいた。
 相談事がないと利用できないだろうって?いや、僕だって普通に悩み事とか相談したいことはあるよ。仕事とか人間関係とかバランスとか…悩みのある人にこりゃ需要あるだろうなぁこの相談所。

 そう思っているなか、ふとロロのほうから通信が入った。

ペケポッペェン♪
【ん?何の音だ】
「あ、すみません。着信音です。ちょっと今日は現実のほうで作業をしているらしいロロからですが…あ、お客が来たって?」

 何やらチャイムが鳴らされたようで、お客が訪ねてきたらしい。

「おかしいな?今日はだれか来る予定とかもなかったはずだけど」
【それなら怪しい人の可能性があるのではないか?強盗とか客を装って入ってきたりすると聞くのだが】
「ああ、それなら大丈夫ですよ。使用人に関しては防犯機能も付いているようで、センサーとかいろいろと使って、ダメな人物かそうでないか判別できるようにしているらしく、彼女たちを導入したところでは押し込み強盗なんかは入れなくなっているそうです」

 使用人に関しては現実のほうで動けるように様々なグッズやドールなどが販売されているのだが、共通して使用人を雇った特典として、現実のほうでの防犯システムも導入されるらしい、
 VRMMOをプレイしている人は無防備になりやすくもあり、多少の防犯は施されているそうだがそれをさらに拡張し、現実で直接対応できるようにしているのだ。
 そのおかげで、アルケディア・オンライン内で使用人が実装されて現実でも使えるようになってから、強盗や空き巣などの被害が激減したという。

…まぁ、欠点としては一部過激派みたいになる使用人も混ざっているようで、うっかり過剰防衛をすることもあると聞くぐらいだろうか。どこかのお宅では、コソ泥が発見されて、何かしらあって交番に全裸で泣きつきながら助けを求めてきたこともあったらしい。


「なので、問題が何かあるような客が来たというわけではないと思うのですが…確認のために、ログアウトして現実で確かめますね。ここでしても大丈夫でしょうか」
【ああ、問題ない。いつでも戻ってきていいぞ】

 カイザーシルクワームさんに問いかけると、快く返答をしてくれた。
 そのため特にためらうこともなくログアウトをして、現実のほうに意識を浮上させる。


「っと、ロロ。お客は?」
「玄関のドア前で待っておりマス。主様と直接話をしたいようデス」
「わかったよ」

 どういう客なのかは不明だが、彼女が特に何もせずに通すのであれば、問題あるような相手ではないだろう。
 インターホンとかのカメラでチェックはできたのだが…このとき、詳細を確認することをつい怠っていた。



「すみません、お待たせしまし…た?」

 機器を片付けてすぐに外に出ても大丈夫なように身だしなみを整え、がちゃっと扉を開けて出て相手の姿を確認した瞬間、少しだけ思考が停止した。


ーーー確かに、問題のある客というわけではないだろう。
 ある意味知り合いのようなものでもあり、問題ある姿は見たことがあったが、今は解消されているはずの相手。
 けれども、それはこの現実の世界・・・・・では、出会うことがないはずの…


「すみませんねぇ、ちょっと近くに寄ったので、次代…いえ、今はもう名実ともに現在の妖精女王になった方の主のもとへ見てみようと思って、来てしまいました」
「わたしのほうとは血のつながりはないが、娘のようなものの主が現実でどういう方なのか見てみたくてね。すまないが、寄らせていただいたよ」

「…せ、先代妖精女王とその夫のゲシュタリアタコン星人さん!?ななな、なんでこの現実の世界にいるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

…まさかのVRMMOの宇宙空間で現在進行形の形で新婚旅行をしていたはずの、ゲームの中の住人だったはずの彼らの姿。
 それが目の前にいることに、思わず驚愕の叫び声をあげてしまうのであった……
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