アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-32 湖の主と、平和主義と

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 この惑星ツドスの第3湖にて、アクアレイクドラゴンのズドラーズドから出された特殊クエスト。
 モンスターから直接出されるクエストに関しては、既に今回この惑星を訪れた件でカイザーシルクワームさんの前例があるので、特に驚くようなことはなかった。

 しいていうのであれば、このクエスト発注前に多少の犠牲者欲望戦隊が出たぐらいだが…まぁ、こちらの事情を色々知られては困るような相手でもあったので、いなくなったのはむしろ好都合なのかもしれない。


「そう考えると、いないほうが楽なのか」
「あれはあれで、人海戦術や囮役にも使えるから楽なのじゃが…」
「それでも、こうやって女性陣だけでやるときには、何処かでデスペナルティを受けてすぐに動けない状況になってもらう方が楽なのよね」
「あの、ジェリアさん。女性陣と言いますけど、僕男ですけど」
「ハルさんなら問題ないわよ。黒き女神とか言うスキルで今は女の人に、いえ、女神さまになってますし、その女の子のようなモンスターたちを連れていても、お爺ちゃんたちみたいに暴走しないもの」

 信頼してくれてうれしいような、女性枠にカウントされているのは悲しいような。
 嘆く部分もあるが、前者の方が何とか重点が置かれていると思いつつ、今回出されたクエストの方に意識を向ける。


「戦車から変形して潜水艦にして…湖の底の方にある神殿で、出来るだけ強力な攻撃をぶつけるってそれ大丈夫なのか?」
【ああ、大丈夫だ。…しかし、頼んでおいてなんだが、引っ張り出してきたかと思えば、なんだその乗り物は。ガゴンベゴンッと変形するとは、宇宙にいる人々は奇妙な乗り物を利用しているのだな】
「いや、それハルさんたちだけだと思いますよ?」
「あ、それは違うと思うのぅ。他にも似たようなの居るようじゃからな」
【他にいるのか…】

 アティの言葉に、外の方で湖に一緒に潜っているズドラーズドが複雑そうな声を出す。
 そんなのがいるのかと思うのだが、僕ら以外にも無茶苦茶な事をしている人が他に居てもおかしくはない…いやいやいや、僕らがおかしいと認めるようなことは避けたいな。避けようがないような状態になっているのは否定しないが。



 とにもかくにも、戦車改め潜水艦の状態でズドラーズドの案内により、湖の底へ沈んでいく。
 岩石と巨大な木がそびえたつ星の湖ってどうなっているのかと思っていたが、割と深いようで、場所を変えれば他の湖に繋がる水路も存在しているらしい。


【だが、あの神殿があるのはこの湖にしかない。まともな住人であれば辿りつけぬ場所で、何者の手によって何時作られたのかは不明だが‥‥ほら、見えてきたぞ】
「あれか」

 ぶくぶくとだいぶ沈んできたところで、潜るにつれて暗くなっていた湖の底が、明るくなってきた。
 見れば、湖底に大きな泡の塊のようなものが存在しており、その内部が明るくなっている。
 そして中には、何時ぞやか見たことがあるような形状の神殿が…

「…あれ?あれってもしかして、女神の神殿か?」

 結構前、まだマリーぐらいしか仲間がいなかった時、偶然見つけたことのある隠しエリアの女神の神殿(水)。
 他にも神殿があるという話は聞いており、あちこちに点在しているのかと思っていたが…宇宙が解放されて早々、まさか他の星にも存在していたというのだろうか。


 そう思いつつも、どうやらあの泡の内部は空気が詰まっており、水中ではないようで、このまま突っ込めば落下しかねない。
 その為、ギリギリにまで接近し、潜水艦の出入り口と接続して降り立つことにした。


「よっと…潜水艦の横出入り口に付けても、まだ少々下まで距離があるし、縄梯子を降ろすか」
「そんなもの、積んでいたの」
「ああ、元々ここ第三艦橋の部分だからね。空中で停船する際に、ここからでも降りられるように備え付けているんだよ」
 
 ちゃんと目的があって備え付けられているが、第三艦橋という言葉の時点でちょっと怖いような気もする。
 万が一があれば、こういう縄梯子も役に立たないような状態になりかねないからな…某宇宙戦艦だと爆破されたり溶け落ちたりと散々な目にしか合っていない。

 一応、今は独立稼働しているからギリギリ第三艦橋枠から外れていると思いたい。


「とりあえず、アレに黒き女神の状態で攻撃…して良い代物なのかな?女神の神殿っぽいものにやらかすの、相当罰当たりになりそうな気がするんだけど」
【問題ない。あれは神無き神殿だからな。以前までは何かしらの神のエネルギーがあったようだが、そこまで無かったようで、ここ最近の間に失われてしまった。ゆえに、何か別の神のエネルギーでも注げば問題ないだろう】
「本当に大丈夫なのか?」
【ちなみにだが、あの神殿はこの惑星にとって重要な代物でな、エネルギーが失われたから、崩壊する可能性もある。だからこそ、注がないといつ惑星崩壊してもおかしくはない】
「よっぽどやばい代物じゃん!?」

 そんなことを言われたら、流石にやらざるを得ないだろう。
 でも、そういう事ならば攻撃よりもっとこう、神のエネルギーを注げるような…いや、それってどういう方法なのかいまいちわからんし、攻撃による強制的な注入の方が手っ取り早いのか。

「そう考えると、一番良い攻撃方法としては物理よりも、エネルギー的なものかな?なら、なら、一発やってみようか」



 神殿の入り口から奥まで注げるように、軌道を決めて狙いを定める。
 第2形態になるのも手だが、注ぎ過ぎて大爆発とかも困るし、ここは普通に黒き女神の第1形態のままやってみることにする。

 RMPで攻撃方法を借りて、他の能力とかをテイムモンスターたちから得て‥エネルギーを注ぐのであれば、それっぽい攻撃を用意する。

「湖の中でもあるから電撃は不味そうだし、ここはひとつ、大きな火球でもぶち込む!!アリスの黒い焔を圧縮して、マリーの毒ガスで爆発力を高め、コユキの氷で固めつつ何層にも重ねてっと…」


 色々と混ぜ合わせ、それに黒き女神の力を注ぎ、一つの大きな火球を生み出す。
 湖そのものを蒸発させるような威力もありそうな気がするが、全部あの神殿内で吸収されることを願えば良いだけだ。


「おおお、なんか凄い真っ黒な、太陽のような火球!!」
「太陽があれじゃったら、世界真っ暗にならぬかのぅ?」

 そんな外野の声はさておき、気にしないで神殿へめがけて投げつける。

「黒き女神の…『スローブラックシャイン』!!」

 煮えたぎるような音を立て、真っ暗に燃える太陽が投げられて、神殿内に入り込む。
 そのまま内部で爆発し、次の瞬間に轟音が鳴り響く。


ズッドォォォォォォォォォォォォォォン!!

 神殿そのものが崩壊することはなく、無事に全部吸収したらしい。
 
―――――
>黒き女神の力が、『女神の神殿(空っぽ)』に投擲され、吸収されました。
>失われていた力を吸収し、黒き女神の力が注ぎ込まれました。
>神殿が改修されました。『黒き女神の神殿(惑星ツドス)』へ切り替わりました。
―――――

【おお、無事に神殿に神の力が注入されたか…ふむ、これで当分の間、大丈夫だろう】

 ズドラーズドが女神の神殿を確認し、無事に力が注ぎ込まれたことを確認した。
 ログの方にも表示されており、力がきちんと入り込んだことが分かるようだ。

【頼みを聞いてくれて、感謝する。他の神に連なる者よ】

―――――
>ズドラーズドにより、クエスト達成が承認されました。
―――――

「あ、クエストクリアしたけど…これでいいのか?」
【問題ない。これで当分の間…そうだな、注がれた量を見る限り、千年以上は確実に持つだろう。千年後にまたどうなるのかは不明だが、今はこれで十分すぎるほどだ。‥‥だからこそお礼をどうぞ、受け取ってほしい】

 そう言われ、何かを僕らに渡すズドラーズド。
 渡されたのは、ズドラーズドのような大きな竜の絵が描かれた紙のようだ。

―――――
>ズドラーズドより、クエスト報酬が配布されました。
>特殊アイテム『召喚札:ドラゴンタイプ』を獲得!!

『召喚札』
一度だけ、使用者に合わせたテイムモンスターを呼びだすことが出来るアイテム。
何が来るのかは不明だが、これで呼びだされたモンスターはテイムの過程をふっ飛ばし、いきなりテイムモンスターとして使役することが可能になる。
なお、召喚される側のモンスターは、きちんと相性がいい相手が選ばれるため、不幸な召喚になることはない。…とプロトタイプの札で生じたことのある事件をもとに改良が施されている。
なお、呼びだせるモンスターは札によって系統が異なり、今回のものはドラゴンに連なるものが呼びだされるようになっている。
―――――

「おお…なんかすごいの、貰っちゃった」
「あれ?ハルさんだけならまだしも…私も、貰ったんだけど」

 驚くべきアイテムを貰う中、どうやらジェリアさんも貰っていたらしい。

【む?そなたも彼等の仲間であれば当然のことだろう。ただ、そちらは少々指定できぬようにランダムになっておる。また、そこのちっこいものは‥‥対象外になるようだな】
「あ、本当だ。ハルさんのが系統指定だけど、私のはその注意書きが無いね」
「むぅ、一応完全なプレイヤー限定かのぅ…惜しい」

 アティはもらえなかったようだが、とりあえず良いものを貰えたので、今回のクエストを受けて良かったかもしれない。
 あとはこの星でやることは、石材集めの方だけだが、その後にでもこの召喚札を使用してみようかな?
 丁度、メンバー的に足りない部分を補えるようなものが欲しいとは思っていたし、機会に恵まれただろう。

 そう考えると、今回のクエスト結果としては中々良いものだと思えるのであった‥‥


「…というか、こういうのをあの欲望戦隊も欲しがりそうだよな」
「あー、お爺ちゃんたちなら、これでもしかすると可愛い子が出るかもと、血で争うことになるかも」
【いや、それは呼びだす者の資質によって変わるからな…あの者達、瞬時に消し飛ばしてしまったが、器を見る限り、その札を使っても出すことはできないだろう】
「そんなものなのですか?」
【間違いない。そう考えると、仮にあの者たちが得たのであれば‥‥ふむ、ハリセンモンスター『ギガセンボン』あたりでも出るか。全身の棘がハリセンに変わったモンスターが、ふさわしいであろう】

‥‥‥いるのか、そんなモンスター。でも千本のハリセンでも、ツッコミ足りるのかな?

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