アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
231 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-22 知らぬ間に、なんとやら

しおりを挟む
‥‥‥宇宙で姉弟の素敵なドラマ極悪非道物語から離れ、船は惑星から離れて元の星へと帰還していた。
 宇宙空間をこのまま進むのもありだが、流石に連続航行も疲れるものもある。
 そのため昨日、ログアウトをする前にロロに尋ね、自動操縦で勝手に寝ている間に航行して適当な港に戻るという話は聞いていた。

「なら、着くまで後は勝手にして欲しいかな。明日ログインするまで、自由にしていていいから頼むよ」
【了解デス。自由に過ごしていますネ】

 そうつぶやき、返答した後現実へログアウトして、翌日普通に会社に出社し、仕事を終えていた。
 社内では他国に移籍した太郎丸さんへ向けた恒例のサバトっぽいものを目撃しつつも、何の変哲もないただの一日であったはずである。
 そして業務を終え、ゆっくりとプレイしようと思い、ログインしたわけなのだが‥‥‥


「…なんじゃ、こりゃ」
 本日のログインでは、港に降り立っていたはずなのだが…その行先を、もうちょっと良く設定しておけばよかったと、後悔していた。

「‥‥‥なぁ、ロロ。ここ、港なのか?」
【ハイ】
「自動操縦で勝手に帰還するはずだったが…ここ、来たことがないのだが」
【いいえ、主様はここに何度も訪れているはずですヨ。まぁ、少々変わった程度ですガ】

 そう言われても、信じがたい光景が広がっているので信じることができない。
 元の星の港町というのは、普通の船舶やら他のプレイヤーが借りている船などが行き交っており、あちこちで普通に賑わう光景が見られていたはずである。
 だがしかし、この場所はその光景からは掛け離れていた。

 モノレールとか、何やらオートで動くバスみたいなものとか、こう色々と詰め込んでいるというか、基本的に宇宙港を除く場所では中世~現代風な港ばかりしかなかったというのに、まるでSFのような光景になっているのは何なのか。

「ログで確認したら…『神域指定大妖精郷:新開拓港エリア』となっているんだけど、もしかして妖精郷?」
【ハイ】
「‥‥‥妖精郷に確か港が無かったはずだが‥どこから持ってきた?」
【勘のいい、主様ですネ。ええ、確かに港は先日まで、ありませんでシタ】

 ニヤリと笑みを浮かべるが、その顔はどう見ても悪だくみしたことが大成功というような顔をしている。
 その後ろでは同じように、ここの妖精女王の立場もあるブラックフェアリークイーンのネアが笑みを浮かべており、どう考えてもこの二人がしでかしたのだと理解できるだろう。

【ピギャピ】
【ふふふ…主様、ログアウト中でも、私達はこの世界で普通に過ごしており、時間をかけて勝手に動くこともできマス。現実の方に干渉して出てくることも可能でしたが、せっかくなので先日神域に設定されたことを生かし、より快適に過ごせるように、改造しておいたのデス!!】

 ばっと言うが早いが、ロロは懐から何やら大きな設計図を取り出した。

【そう、実は前々からちょっと考えてましたが、やって見たかった大改造をしておいたのですヨ!!妖精郷をただ単純に神域のままで生かすのは、もったいないと思ってまして、主様たちがダンジョン攻略中に、私は一人素材を集めており、この計画を進めていたのデス!!あ、ちゃんと妖精郷の女王であるネアには許可をもらってますので、大丈夫と言えば大丈夫デス】
「一応、此処神域だから、僕の方の許可も取ってほしかったんだが!?」

 ツッコミどころが多すぎて、どこからどういえば良いのかわからない。
 そう思って何とか言えそうな部分を叫ぶが、仮に止めようとしても本来のここの持ち主であるネアの方が権限がありそうなので、止めようが無かったのかもしれない。

【何にしても、妖精郷は生まれ変わりました。そう、黒き女神でもある主様のために、その威光を知らしめるために、やってみせたのデス。本日のログインまで、自由にやっていて良いとおっしゃられたので、させていただいたのデス】
「‥‥‥あ!?」

 そう言えば、自由にしていていいって確かに言った。
 もしや、そのせいで‥‥ここまで、やらかしちゃったのか、この使用人。

【神域指定大妖精郷改造計画…ログアウトから次のログインまで時間が限られていましたが、それでも数時間もあれば十分でシタ。妖精女王の言葉に従い妖精たちもそれに遣える獣たちも色々と扱えましたからね。計画以上に順調に進み、無事にログインされた時点で完成したのデス】

 たった数時間、されど与えられた短いようで長い時間。
 さらに自力で、僕らがダンジョン内を必死に探索していた横で、彼女はあの惑星で…いや、実は留守中に船を動かして資源採取を行ってたようで、必要な資源を確保していたようだ。

 それらが合わさり合った結果、物凄くのほほんっとのんびりしているというか、田舎の極みと言って良いような地は今、真新しすぎる大発展をしてしまったようである。

「‥‥‥うわぁ、妖精郷の名前も変わっているじゃん」

―――――
『神域指定大妖精郷』
黒き女神の神域に指定されていた妖精郷が、さらなる発展を遂げ、その女神の威光をより張り巡らせることに成功した、大妖精郷へと進化した姿。
神域となった場所は通常よりも発展しやすい傾向にあるのだが、宇宙での資源も追加されたことにより、さらなる発展を遂げることになった。
あちこちにエリアが分かれており、従来の妖精郷エリアは存在しているが、それ以外のエリアが拡張されて、様々な商業施設やここでしか得られない鉱石や素材が得られる場所など、かなりエリアとしては大きくなっている。
なお、神域に指定した神スキルもちは、この地限定で全ステータスが大幅に強化されている。
また、神域が大発展を遂げたことにより大地の力が流れ込むようになり、この地以外の場所でのステータスダウンの減少幅が小さくなり、少しパワーアップもしている。
―――――

 自由にやらせた結果、妖精郷が大発展してしまいました。
 何というか、アップデートでほかのNPCなどもより生き生きとしている姿を見ることも増えていたが、ここにきて使用人により変な大幅な強化要素が増えるとは思いもしなかった。

 何にしても、勝手に任せているととんでもないことになるのだという事を、念のために攻略組の方に伝えつつ、他のプレイヤーにも同様の被害が出る…被害でもないような気がするのだが、それでもとんでもないことをやらかされないようにと、警告を発しておくのであった‥‥‥



「…あ、駄目だ、すでに手遅れか」

‥‥‥悲しい。掲示板を見ると、使用人に好き勝手させた結果、やらかしたことに関しての報告が上がっていたよ。
 現実の方では家の改修を頼めば大幅なリフォーム、介護を頼めばいらないほどにご老人を若者と変わらないぐらいの身体能力を持った元気な人に。
 アルケディア・オンライン内ではバフを盛る料理が更に量が増え、戦闘参加ではより強力なデバフを用意するなど、大幅なパワーアップが報告されていたようだ。

 宇宙ばかり目に行って、こっちの方全然見てなかった…‥‥ええ、でもこれいいのか?なんかやけにバランス崩壊をしかねないような調整だと思うけど、現実の方にもこうも出るって、何かおかしいような‥‥?


しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...