アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-17 磁力とその他の力

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 ギガスマグネットによる先制の状態異常によって、一部混乱は生じたものの、そう容易くやられることはない。

「そもそも、やられる気自体があるか!!相手が磁力のモンスターなら、その磁力を失わせればいいだけの話だし、アリス、一緒に火炎放射!!」
【オォォォォン!!】

 RMPでアリスの炎を借りつつ、黒き女神の力で強化して一緒に黒い炎を生み出してギガスマグネットへ向けて盛大に浴びせかける。
 磁石などの磁性体は、現実の世界で一番簡単に磁力を失う方法としてキュリー温度と呼ばれるような温度になるような熱を与える手段がある。
 VRMMOのアルケディア・オンラインにその常識が通じるのかは不明だが、現実世界のある程度の物理演算やその他素材の性質などは再現されているので、その際限度を極力高めているのであれば同じような手段が仕えると思ったのだ。

【オグォォォォン!?】

 そしてその目論見は当たっていたようで、火に包まれる前に本能的に不味いと思ったのか、巨大な磁石の身体を横にずらして炎から逃れようとするギガスマグネット。
 その周囲には近くの壁からはく離したのか、ダンジョン内の磁力を帯びた鉱石が浮遊し始めてこちらにぶつけようとして準備を行っていたようだが、回避できなかった部分にあった磁石にかすり、そこの磁力が失われたのか、傍に浮いていた鉱石が落下する。

「っと、どうやらこちらの磁力も失われたようだ。磁力状態が解除されたってログに出ているな」

 当たらずとも炎の熱を撃ち出した所為か、僕とアリスの磁力状態も解除されたらしい。
 この様子であれば、相手にとって効果的なのは火の攻撃だろう。

「とは言え、現実の磁石の再現をしているのなら、雷などは不味いか?」

 ついでに火も今は有効だが、やり過ぎると逆に磁性を再習得させてしまう可能性も捨てきれない。
 ここの運営がそこまで意地悪な仕掛けをすることは‥‥‥

((((いや、運営ならばやりかねないな))))

 考えた瞬間、この場にいたプレイヤー全員の心が一致したような気がした。
 日頃の信頼の積み重ねは大事というべきか、それとも日ごろの所業のせいで積みあがっていく、罪がどんどん積みあがるとは最悪ではなかろうか。

 

 何にしても、今は通じても後から無敵になって来るとか、HPが半分を切ってから遠距離攻撃が通じなくなるとか、そういうお約束も用意されていておかしくはないだろう。
 最悪の事態を想定して動かなければ、斜め上のおかしな事態になっていてもありえると断言できる。

 そう思いながら、面倒事は長引かせるのは不味いという事で早期決戦の形式で火力重視で攻めることにした。


「マリー、着火しやすい毒ガスをどんどん用意してくれ!!セレアは金属の武器や鎧が使えないから、脱いで身軽になった今は高速移動して相手の攪乱!!リンは格闘技で飛んでくる鉱石を蹴り飛ばし打ち砕け!!」
「ネアは糸を生産しつつ、コユキは雪兵召喚が可能になるまで氷で援護!!熱の温度差で脆くなる可能性もあるし、あとはその他自由に!!」
「「「最後の指示だけ物凄い丸投げ感が!?」」」
「あ、でもハルさんの指示的には間違ってないかも。こっちと組んでもすぐに全部できるわけでもないし、状態異常で片付いてないな。ならば、こちらはバフやデバフで支援を重点的に行う!!」

 指示が飛び交いつつ、全員素早く行動へ移し、攻撃を一気に強める。
 ついでにこちらも女神の力をフルに利用し、元レイドボスも務めあげた力で、この惑星のダンジョンのボスモンスター相手に、ボス同士どちらが上なのか力をぶつける。


【オグアァァァ!!オグアァァァァ!!】

 某宇宙戦艦のアステロイドベルトのごとく、磁力で周囲に浮かべている鉱石ごとの攻撃に対して、ギガスマグネットは痛みで悲鳴を上げる。
 強力な磁力の攻撃は、この惑星のダンジョンの鋼の身体を持つモンスターにとっては非常に有効で敵なしの状況だっただろうが、その強みを潰すような僕らを相手にして苦戦している様子。
 投げ飛ばされてくる鉱石はレールガンのようないきおいで吹っ飛んでくることもあり、完全に攻撃を無効化できるようなことはないのだが、この様子ならばなんとかなるだろう。

 お互にぶつかり合い、その力の差を見て勝機を見出したが‥‥‥やはり、最後まで油断はできないようだ。


【オググググ、オグ、オグアァァアアアアアアアアアアア!!】

 突然、強力な咆哮を上げたようだが、先ほどの状態異常を引き起こすものとは違う様子。
 U字型の磁石の体が真っ赤になり、何かを引き寄せ始めたようだ。
 ただしそれは、周辺の磁力を帯びることが出来る鉱石ではない。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴドドゴドゴドゴドゴドゴドゴォ!!

 何かが無理やり引き寄せられ、鋼の壁すら強行突破させられて貫通してきているような音。
 何事かと思い、身構えた次の瞬間、ボスモンスターの部屋の扉を貫通するがごとく、何かが勢いよく入出してきた。

『ギャアアアアアアアアアアアアス!?』
「「「「なんじゃありゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 巨大な人型のような恐竜のでっかい何かが飛び込んできて、そのままビトンっといきおいよくギガスマグネットにくっ付けられる。
 するとギガスマグネットが一旦磁力を解除して話したかと思えば、その頭の部分に姿勢を正し首元にグイっと括り付け、巨大な首輪のようになってがっしりとつかみ取った。

【オグアアアアアアアアアア!!】

「な、な、なんだよそれ!?ギガスマグネットが何かたって歩くような機械が色々くっ付いたゴ〇ラのようなものに憑りついたんだが!?」
「そうか、わかったぞ!!あのメ〇ゴ〇ラモドキだかメカザ〇ルスモドキのような奴の中身に、おそらく操るには十分な金属の骨組みとかが入っているのかもしれない!!磁力を自在に操って、人形のように動かす気だ!!」
「巨大な鋼のモンスターじゃなくて、どこからこんなものを引っ張り出してきたんだぜ!?」
「もしかして、ここ限定の隠しモンスターとかそういうやつなのかしら?」
「ん?いや、なんか様子がおかしいようなきがしないべか?」

『助けてくれぇぇぇ!!なんかいきなり操縦不能になったんだがぁぁぁぁぁ!?』

 ギガスマグネットが憑りついた、謎の恐竜モドキのような何かしらのものの中から、誰かの声が聞こえてきた。
 いや、誰かというか聞き覚えのあるような‥‥‥まさか。


「中三病さん!?まさか、その中にいるの!?」
『うぉぉぉぉぉい!?ハッチも開かねぇし操縦も完全に奪われているぅ!?』

―――――
>ギガスマグネットは『コントロールマグネット』を使用した。
>周囲にギガントメタルゥマンがいなかった。
>代わりに近くにいたプレイヤー「中三病」の搭乗していた、恐竜帝国で建造された『対巨大宇宙怪獣専用恐竜型決戦兵』を引き寄せ、憑りつくことに成功し、合体した!!
>磁力操作型決戦恐竜兵器モンスター『マグルス』へ切り替わった!!
―――――

「「「「何やってんのというか何に乗ってんだ中三病ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」」
【オグァ、オグギョアァァァァァァァス!!】
『不可抗力だぁぁぁぁぁあl!!』

 全員のツッコミが揃い、敵が雄たけびを上げ、中三病が必死の悲鳴を上げる。
 三者三葉の声が上がり、戦況はどうやら、さらにカオスな方向へ動こうとしていたのであった‥‥‥

―――――
『磁力操作型決戦恐竜兵器モンスター「マグルス」』
本来であれば、HPが半分以下になったギガスマグネットが周囲一帯に存在しているであろうギガントメタルゥマンなどの巨大な鋼のモンスターを引き寄せ、憑りついて変貌するはずだった『マグネッタース』になるはずが、イレギュラーによって偶然引き寄せてしまった兵器と合体し、産まれてしまった奇想天外なモンスター。
偶然の産物で生まれてしまったが、ギガスマグネットの磁力によって全身が無理やり操られ、脅威の力を発揮する磁石による恐竜の巨人という、字面の時点で意味不明な怪物と成り果てた。
―――――



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