アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-3 宇宙との、遭遇

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‥‥‥妖精城の中に入り込んだが、特に不審がられることはないらしい。
 どうやら挙式というのもあって、各地から集っているらしい妖精たちのテンションが高くなっており、誰が入り込もうが「祝えや飲めや歌えや」などの暴れっぷりになっているらしく、部外者が入り込んでも祝いの場に来た飛び込みの出席者扱いとして出られるようだ。

「それにしても以前、フォレストデストロイヤーでボロボロになった城だけど、その時よりも内部複雑化しているな」
【ピキィ?】

 あちこち入り組んでいるというか、どことなく某魔法学校の無茶苦茶な構造を思い起こさせるようなというか、あちこち滅茶苦茶になっており、初めてきた人にとっては優しくない造りになっているだろう。
 とは言え、妖精たちに道を聞けば軽く教えてくれるようで、窓から外も見えるので、大体の位置を予想して進むことが出来るのはまだ良いか。
 いや、ある意味一種のダンジョン扱いになっている気がしなくもないなココ‥‥‥ダンジョンはダンジョンで、かなり入り組んでいるところもあると聞くし、再建する際に参考にしてしまった可能性が否定できない。運営なら絶対に何かやらかすために仕掛けておくのが目に見えているのだ。

 それはともかくとして、あちこちで祝っている妖精たちの会話内容も聞いてみたが、特に不審なところも無いように思われる。

「普通に良い人が来てくれたとか、よくぞ女王様を射止めてくださったとか‥‥‥謎が多い相手なのに、不審に思うどころか大歓迎祭りだよなぁ」

 まぁ、無理もないか。結婚のための理想像が高すぎて色々とやらかしている妖精女王だ。
 彼女の願望に振り回された妖精も多いだろうし、この際大人しく収まるのであれば盛大に祝うことによって分かれることも防ぎ、未来永劫の平穏を得るために全力で祝っているのだと考えれば、この城の妖精たちの喜びようにも納得がいくだろう。
 この場にいないとはいえ、ターゲットにされていた悪魔や堕天使がいたら…うん、彼等も全力で成しとげられるように祝いの場に出て応援しまくるのが目に見えるようだ。
 想像するだけでも、確実に全力でこの挙式を聞きつけた時点で、成功に導こうとするんが目に見えている。あの妖精女王の壊れているというかそれすらもぶっ飛ばしているようなすさまじい執念を見せられた身とすれば、彼らに同情するというか‥‥‥ああ、僕もこれ、成功して良い奴なら全力で応援する側だ。



 そう思いつつ、各所の妖精たちに聞きながら城内を進んでいると、いつのまにか挙式会場の本番の部屋にまで来ていた。
 立食形式で、あちこちでふよふよと妖精たちが今か今かと待ち望んでいるようで、その光景を見ているとアナウンスが流れ始めた。


『あーあー、マイクテスト、マイクテスト‥ご来場の妖精たちにお知らせであります。これより、我らが妖精女王様とベルガンドンズ様がご来場されるであります。拍手で新郎新婦となられるお二人を迎えるために、拍手をお願いするのであります』

 そのアナウンスが終わると、指示通りに拍手をして向える準備をする妖精たち。
 僕らも潜り込んでいる立場とは言え、一応不自然な感じが無いように拍手に交じっていると、変な音が聞こえ始めた。

―――ポ~ヨ~ポ~ペポ~~~

 よくあるようなコテコテの効果音がしたかと思えば、どこからともなく小さな円盤が現れた。
 そのままふわふわと進んだかと思えば、神父役と思わしき妖精の前につき、少しだけ照度を上げて謎の光を放ち‥中から、本日の主役たちが出てきた。


 片方は、以前も見たことがあるこの妖精郷の妖精女王なのだが、今回はウエディングドレスのようなものを着ており、黙ってさえすれば幸せそうな花嫁というような表情で夫となるであろう相手の方に顔を向けている。
 そしてもう片方が、噂の夫の座に収まった空からの来訪者のようであったが…大体予想は出来ていたようでも、こうやって改めてみるとツッコミどころしかなかった。

 悪魔や堕天使の彼らを狙ったことがある事を考えると、面食いだった可能性がある。
 だがしかし、その可能性を否定するかのように出てきたその相手は、何と一体の巨大なタコのような生物だったのだ。
 タコと異なるとすれば。全身が赤色とかではなく宇宙色とでも呼ぶべきか例えようがない不気味な色合いが次々と変わっている肌を持っており、しっかりと新郎用の正装を穿きというべきか人が着るようなタキシードを着こなしており、8以上の大量の触手をウジュルウジュルと絶え間なく動かしている。

「‥‥‥どう見たって、宇宙人だよね、アレ」
【ピキ】

 空からの来訪者や、大型アップデートなどの情報を得ていたことで、宇宙人の可能性が大きい事は既に予想できていた。
 ただ、その予想の中でも、古典的な宇宙人のような造形に色々と手を微妙に加えただけのような存在がそのまま出てくるとは思わなかったので、少しばかり驚かされる。

「しかし、何星人だ?」
―――――
>モンスターに関しての情報が載っている図鑑に、『宇宙人』項目が追加されています。
>疑問に対して、回答することが可能です。
―――――

「あ」

 いつのまにかこっちのほうも大型アップデートに対応していたのか、どうやら見るだけで図鑑が開けるようで、すぐにどこの星の人なのか分かるようになっていたらしい。
 ログに出てきたことに気が付き、僕はすぐにそれを使用して相手の詳細を探った。

―――――
『ゲシュタリアタコン星人』
第34星雲67星系25番惑星「ゲシュタリアタコン星」出身の宇宙人。
見た目がタコの魔改造と言い現わせるような宇宙人だが、種族の特徴として番を探すためにわざわざ星々を巡る努力を行い、運命の相手がいたら熱烈にアタックし、どうにかしようと動ける熱愛の星人。
侵略性も多少は持っているのだが、星の侵略はまた別の星人が専門としているので関わることはない。
非常に熱しやすいが冷めにくい性格であり、彼等と結ばれたのであれば夫婦円満になる確率が90%以上を確定で出すことが出来る。
別名『熱き星の狩人』とも呼ばれており、番を非常に大事にするので人気がある。
―――――

「…文句がないような、相手だったかぁ」
【ピキィ】

 これで侵略性のある宇宙人とか、何かしらの大問題ある人だったらヤバかったとは思うが、この宇宙人はそのような害も何もなく、むしろ番になれればそれだけでも幸せを得られることを約束するとまで言われているらしい。

 つまり、偶然とはいえ妖精女王はその相手に選ばれたのであり‥‥‥高すぎる理想像も、彼の手によって見事にどうにか抑え込み、婚姻を結ぶに至れたのだろう。
 これ、普通に幸せな結婚というか‥‥‥素直に応援した方が良いやつだね。今後妖精郷の平穏を約束してくれるような相手なのが幸いというべきか。

 でもそうすると、ますますネアの存在に関して何なのかという疑問も浮かぶ。
 結婚してしまえば次期妖精女王になるような子供も生まれるとは思うのだが、そうすると妖精王女の種族になっている彼女がいる意味が何なのか‥‥‥



 そうこうしているうちにいつの間にか進行していたようで、式の中で宣誓を行うところにまで来ていた。

『それではお二人とも、宣誓の言葉を』
『『はい』』

 宇宙人とは言え何かしらの翻訳がなされているのか、両者とも同じ言葉に統一されているらしい。
 まぁ、そもそも言語が違って何も通じなかったら意味がないし、勉強してきているのかメタいところで言えば調整されているのかは不明だが、分かるような言葉のはありがたい。

『私たちはこれより』
『いかなる困難な待ち構えていようとも』
『この先、夫婦力を合わせて乗り越え』
『決して砕ける事のない絆をここに誓います』

 短いながらもしっかりした言葉で、そう口にする妖精女王と宇宙人。
 結婚式ってこんなのあったっけと思うのだが、文化の違いによるものなのかもしれない。

『そしてこれより私は‥‥‥退位します。妖精女王の座を、次代へ譲り渡しましょう』
『次代はいずこに?』
『かなり前、一度次代の事を考え、力を分けた御霊を何処かへ投げ飛ばし、成長を願いました』

『そしてその御霊は、どうやら最近無事に成長を成し遂げ‥‥‥そこに来たようです』

「【!?】」

 突然こっちの方に目を向けられたかと思えば、スポットライトのようなものがネアに当てられた。
 悪霊や怨霊その他魑魅魍魎のような姿になることもあった妖精女王ではあったが、伊達に女王の座についていなかったようで、僕等の事は既に分かっていたらしい。
 そして今の話を聞くかぎり、実はネアに関して女王は仕組んでいたことのようだ。

『さぁ、会場に集まってくれた妖精たちよ!!次代の女王に祝福を!!この地より空へ旅立つ我々の代わりに、希望の光を!!』

 わぁぁぁぁっと歓声が上がり、キラキラとしたなにかが妖精たちから沸きあがり、ネアの元へ殺到する。
 そのキラキラの粒子が彼女に纏わりつき、薄い渦を作り上げる。

―――――
>妖精女王より、次代としての座を世襲しました。これより、『ネア』に妖精郷での管理権限の大半が任されることになりました。
>『フェアリープリンセス』が条件を満たしました。
>黒き女神のもとにいることにより、『妖精女王』への進化がキャンセルされています。
>眷属化により、『妖精女王』から『ブラックフェアリークイーン』へ進化先が変更されました。
―――――

「うわぁ、そのパターンがあるのかよ!?」

 エラーによる変更、眷属化による進化先の変更などがあったが、今回は後者の方になったらしい。
 まさかまさかの、潜り込みなのに堂々と目立つ状況になったうえに、とんでもない進化が出てきたようであった‥


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