アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.1-56 思わず吹き出すわ、こんなもん

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‥‥‥メンテナンスに時間がかなりかかるかと思ったが、3日ほどで終了していた。
 どうやら鏡面ののじゃロリがやらかしていたプログラムの改造個所はバックアップもしっかりとっており、早期の復旧がしやすかったらしい。

【ブラックボックスまで侵食されていないのが幸いでシタ。もうすでにメンテナンスが解除され、プレイヤー全員にお詫びとしてのアイテム配布やAL増加キャンペーンなどのものが開始されていマス。主様、ログインされマスカ?】
「あー、今日はもうちょっとしてからかな?ちょっと珍しく、会社から仕事を持ってきたからね。30分程度で終わるし、それまで箱庭の方で皆に異常が無いか確認をお願いしたいな」
【わかりまシタ】

 ロロを箱庭の方に下がらせ、僕は会社のPCを開き、作業を開始し始める。
 うちの会社は基本的に残業もさほどないけれども、たまにはちょっと残してしまうことがあるから、こうやって持ち帰ってやれるものならやっているのである。
 ある意味サービス残業に近いかもしれないが…‥‥本当にまれにしかない程度だし、これも後で申請すればきちんと残業扱いになって手当が出るのだから良いだろう。

 そう思いつつ、聞き流す程度でTVでも付けているとニュースが流れてきていた。

『本日あった事故ですが、原因としては~~~』
『XXX国が建設の件で○○国と条約を結び~~』
『彗星のごとく現れ、デビューした悪魔と堕天使コンビ系アイドルのルシファリアンとゼ~~~』
『合理羅大臣が銅鑼に関しての法律を~~~』

「…‥‥こういうニュースも、久しぶりにゆっくり聞いているような気がするなぁ」
 
 ここ最近、アルケディア・オンラインにログインしていたがゆえに、現実での出来事の方に目を向ける機会が少し減っていた。
 ゲームをするが故の弊害という人もいるかもしれないが、特に面白くもないニュースが多かったり、あるいはずば抜けたニュースが少ないだけだったりするのもある。

 とは言え、聞くに値するような情報も流れるのでそれなりに聞き流しつつ、ロロが合間に出してくれたコーヒを飲みながら面白そうなものが無いかなと軽く思っていた…‥‥その時だった。

『続きましては本日、離党した議員たちが集まり合い、新しい党が立ち上がりました』
『党名は「全日本鏡面のじゃロリ推したい戦隊」だという、訳の分からないものですが、正式に受理されました』
「ぶーー!?」

 聞こえてきたぶっ飛んだ言葉に、思わずコーヒーを噴き出してしまった。

「ぎゃあああああ!!PCにかかった!?」

…‥‥正直、今の驚愕よりもやらかしたほうに意識がすぐに向いてしまうのであった。







【‥‥‥よし、大丈夫ですネ。水分も抜けましたし、内部洗浄も行いました。確認しましたが、故障は避けられたようデス】
「よかったよかった、こっちの方が本当に心臓に悪かった‥‥‥」

 こういう時に、機械に強いメイドがいてくれて本当に助かった。会社のパソコンを壊してしまう方がかなりシャレにならないだろう。
 いや、とりあえず落ち着いたのはいいけれども、今のニュースは何だったのか。

 改めて内容を確認してみると、政治の世界に突然彗星のごとく現れた者たちがいるようで、それが一気に数を増やして政党として成り立ったらしい。
 しかも、選挙をしていないわけじゃなくて、今の与党や野党から離党した議員たちが集まって作り上げたようだが、何故その名前にしたのだろうか。

「というか、鏡面のじゃロリって‥‥‥もしかして、あの逃げたやつか?」
【さすがに、消去されるのを分かっているのならばここまで堂々とやることはないとは思うのですガ‥‥‥念のため、運営の方に連絡しておきマス】

 あちこちを色々と改変しまくり、やらかしまくった鏡面ののじゃロリ。
 メンテナンスを終えてもなお創作されているようだが、現実のどこかに逃亡したようで、未だに情報をつかめていない状態のようだ。
 なので、ここまで堂々とした党名でいることを主張しているのはおかしいが、もしかするとこれはこれで目をそらすためのカモフラージュにでもしているのだろうか?

「その前に、こんな政党が立ち上がる時点で政治が終わっていそうなんだよなぁ‥‥‥」

 世も末というか、すえどころか世紀末を突破しないと出てこないだろうおかしな党名の団体。
 そう言えばそろそろ選挙もあったとは思うけれども、あっと言う間に爆散するのだろうなとも思えるのであった…‥‥






「…‥‥いや、本当にここまでやれとは言ってないのじゃが。というか、短い間に何故こうなった」
「はっ!!これもそれもすべては貴女様のためでございます!!」
「全員気持ちを一つにして、全て推すためにでているのです!!」
「そう、我々の話術を、説得力を、持ち得る魂の咆哮をともにすればたやすいこともでもあります!!」
「連絡はこのチミッターを通じ、ネットも何も介さずに済む、我々だけで作り上げた超特殊な通信網で行えますので、存在を知られることもないでしょう!!」

 それでも度があると言いたいが、ココで下手なことを言えば余計にややこしいことになるかもしれない。
 そう思いつつ、鏡面ののじゃロリ‥‥‥この現実世界では名前を変えてアティを名乗ることにした彼女は、目の前で綺麗に星座のように並んで正座をして報告を行う覆面集団を前に、顔を引きつらせていた。

 現実世界で、己の容姿などを武器にして下僕を得ることに成功したのはまだ良いだろう。
 だがしかし、そんなに時間も経たないうちに、あっと言う間に色々と勧められてしまい、正直ここまでやらかしたことに関して引いてしまうのは無理もない。

「残念ながら、未だに安全に扱うために、法律違反を起こさないための免許などは取得出来ていない部分もありますが」
「それでも、これからどんどんコネや伝手を用いて期間を短縮し、我々の実力だけで全て入手し、合法ですすめます」
「これもそれも、この男気しかない空間に、天から与えてくれた恵みの様な貴女様のために我々は全力を出すことを誓えたからです」
「なので、貴女様のために我々は国すらも牛耳りましょう」
「そ、そうかのぅ…‥‥ま、まぁ頑張るのじゃぞ」
「「「「ははー!!」」」」


 まことに恐ろしいのは、人の欲望に対する行動力なのだろうか。
 そして自分は、なにかやってはいけないパンドラの箱を開いてしまったのではなかろうかと、ここにきて鏡面ののじゃロリのアティは後悔をし始める。

「…‥‥もしや、こっちの方が余計にやばいのではなかろうか。主に頭が」

 自分がアルケディア・オンラインの世界でやらかしたことは棚に上げるが、それを差し引いても彼等の方が怖ろしい事をしているのではないかと思ってしまう。
 残念ながら無駄に行動力と頭、その他色々あるおかしな集団なだけに、既にどうしようもない状況になっているようであった…‥‥‥


 
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