アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.1-54 因果応報、同情無し

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‥‥‥緊急メンテナンス扱いで、アルケディア・オンラインが止まったが、あの鏡面ののじゃロリは現実の方に出たので、やる意味はあるのかと疑問に思うところはあった。

【一応、ありますネ。現実の方に逃げたので消去はできないのですガ、その代わりに内部データの改造個所を徹底的に洗い出し、正常化作業が可能になるのデス】
「なるほど‥‥‥まぁ、データを改竄するやつがいたままだと、いくら修復しても無駄になるからか」
 
 箱庭の方にテイムモンスターたちを出しつつ、現実の方にある機体でロロが説明してくれたので、現在どうなっているのかという情報はすぐに他に入っていた。

【とは言え、運営の方は大変そうデス。発見が遅れるように工作されていたのもありますが、生み出したNPCが勝手に動き過ぎたせいで色々と忙しいようで、なおかつこの騒ぎに乗じて余計なことをしでかす外部がそれなりにいますので、そちらの粛清も兼ねて相当仕事量が増えているのデス】

 既に全世界に向けて配信されているVRMMOだからこそ、その技術に対してケチをつける様な輩なども多く、この緊急メンテナンスを引き起こした今こそが叩き時だと言わんばかりに、色々と仕掛けてきているらしい。

【ですが、そちらはあまり意味ないデスネ。しっかりリスト化されてますし、盛大に反撃が可能ですので問題ありまセン。想定から外れた暴走事故の対応は後手後手に回されてしまいましたが、想定内の騒ぐ奴らであれば気楽に対応できるのデス】

 なお、既にその反撃はなされているのか、ネット上ではいくつかの企業が収賄や八百長、技術盗用、著作権違反などの逮捕状が出ており、どこがやらかしてくれたのかよく分かる状態になっている。
 むしろこれだけの犯罪があったのに、今まで表面化しなかったのは巧妙に隠しているとかではなく、こういうやらかしを見据えて手元に持っていたのだろうか…‥‥今さらだけど、運営会社の凄さが良く分かる。


 そんないくつもの企業が自業自得の大惨事になっているのはさておき、問題はそこではない。
 現実世界に不完全な状態で逃亡を果たしてしまった鏡面ののじゃロリの方が危険なのだ。

「で、そっちの方は場所が分かっているのか?」
【‥‥‥まだ捜査中ですネ。現実へ移動するプログラムを利用したようですが、不完全な状態での起動と、そもそも現実に出る様な箱庭やドールなどのシステムを介さない状態で、なおかつNPCが行うとなると‥‥‥より大きな負担がかかり、全身のプログラムに異常をきたし、捉えにくくなるようデス】
「なるほど‥‥‥」

 それにしても、現実の方に介入するNPCとか、本当にどういう技術なんだと思いたくなる。
 いや、そもそもVRMMOの代物に過ぎないはずだったのに、よく考えたら何でメイドとかテイムモンスターも現実にある程度の制限がかかるとは言え出てこれているのか、そこからツッコミをいれるべきか。
 考えない方が幸せかもなぁ…‥‥








‥‥‥おかしすぎるところが多いが、ツッコミを放棄しておいた方がいいとハルが考えていたころ。
 鏡面ののじゃロリは今、ある場所に顕現していた。

「お、おぅ…‥‥座標が固定できぬから適当に出たようじゃが‥‥‥ここは‥‥‥」

 バチバチと、周囲にある電子機器が火花を散らしているようだが、そんな事はどうでもいい。
 不完全な状態で使用したのでろくでもないことになっている可能性もあるが、今はとりあえず現実世界に飛び出すことは成功したようだ。

「ふむ‥‥‥ハッキングして作り上げた部屋とは違うのぅ。誰かの室内か?」

 現実に出る際に、足がかりが必要なのは分かっており、今回はプレイヤーがアルケディア・オンラインの世界に入る際に使う機器を利用し、出てこようと考えていた。
 とはいえ変な人のところに出るのは避けたかったので、事前に工作をしておいたのだが、残念ながら不完全な状態で使用したため、何処かのプレイヤーを足掛かりにして出てしまったらしい。
 いや、物理的にやってしまったようで、出た衝撃でふっ飛ばしたのか壁際に叩きつけられているようであった。
 
「い、いつつつ…‥‥な、なんだ?急に変なアナウンスがしたかと思っていたら、現実で痛みが‥‥‥」
「む、不味いのぅ」

 被っていた機器が目隠しになっているのか、すぐに鏡面ののじゃロリの存在に気が付く訳ではない。
 今のうちにさっさと部屋を出て逃げようとした…‥‥その時だった。


「‥‥‥んぅ?この感じ、この気配…‥‥間違いない!!ロリ娘だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「のじゃぁ!?」

 びゅばっと目にもとまらぬスピードで動かれ、思わずビクンッと体を硬直させてしまう鏡面ののじゃロリ。
 非道で非合法な手段にいくつも手を染めて来たのだが、現実だからこそ出てくる混沌とした気配に思わずビビったのである。
 そしてこの瞬間、逃げなかったことをのじゃロリは後悔した。


「うぉぉぉぉぉ!!まじで、ロリ娘が現実にくんかすうはすうはぁはぁはぁ!!」
「へ、変態じゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!」

 ぎゅううっと抱きしめられ、嗅いできた相手に対して言いようの無い嫌悪感とおぞましさを感じ取り、突き放そうとするもびくともしない。
 現実に出ているロリのボディとは言え、肉体強度や筋力の強さは内部データそのままに反映されているはずなのに、どういう訳か凄まじい力で放してくれないのだ。

「とりあえず嗅ぐな触るな放すのじゃぁぁぁぁぁあ!!」
「いやだぁぁぁ!!現実でこんな機会絶対に味わえないから、今のうちにしっかりと堪能させてもらうんだぁぁぁぁぁ!!」
「その後すぐに警察とやらに捕まるじゃろ!!というか、今通報してもいいんじゃよ!!」
「堪能しまくった後で捕まるなら本望!!いや、そうなると出会えなくなるならより一層一擲残らず搾り取れるほどのものにしなければ!!」
「お主精神あかん方向に振り切れているじゃろ!?」

 悪党とも自覚できるが、そんな悪よりもおぞましい何かに、思わずそう叫んでしまう鏡面ののじゃロリ。
 現実に出てくる機会をうかがっていた時もあるが、今この瞬間だけは全力でアルケディア・オンラインの世界に逃走したいと、心の底から思わされるのであった…‥‥

(いや、待てよ?この魅力にかかっているのならば、うまく利用して現実での隠れ蓑に‥‥‥)
「の、のぅ!!頼むから少し待ってほしいのじゃ!!あとでたっぷり相手をしてあげるのじゃから、今は話を聞いてくれぬかのぅ!!」
「逃げない?消えない?」
「う、うむ!!」

…‥‥この執着心、利用すればいい隠れ蓑になるかもしれない。今は少しだけ我慢し、利用するだけ利用してやれば良い話なだけなのだ。
 それと、このおぞましさも憎き運営側の刺客共に対して使えるかもしれないと、そう思う鏡面ののじゃロリであったが‥‥‥数日後、さらなる事態に巻き込まれるとは思わないのであった。
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