上 下
186 / 718
Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.1-54 因果応報、同情無し

しおりを挟む
‥‥‥緊急メンテナンス扱いで、アルケディア・オンラインが止まったが、あの鏡面ののじゃロリは現実の方に出たので、やる意味はあるのかと疑問に思うところはあった。

【一応、ありますネ。現実の方に逃げたので消去はできないのですガ、その代わりに内部データの改造個所を徹底的に洗い出し、正常化作業が可能になるのデス】
「なるほど‥‥‥まぁ、データを改竄するやつがいたままだと、いくら修復しても無駄になるからか」
 
 箱庭の方にテイムモンスターたちを出しつつ、現実の方にある機体でロロが説明してくれたので、現在どうなっているのかという情報はすぐに他に入っていた。

【とは言え、運営の方は大変そうデス。発見が遅れるように工作されていたのもありますが、生み出したNPCが勝手に動き過ぎたせいで色々と忙しいようで、なおかつこの騒ぎに乗じて余計なことをしでかす外部がそれなりにいますので、そちらの粛清も兼ねて相当仕事量が増えているのデス】

 既に全世界に向けて配信されているVRMMOだからこそ、その技術に対してケチをつける様な輩なども多く、この緊急メンテナンスを引き起こした今こそが叩き時だと言わんばかりに、色々と仕掛けてきているらしい。

【ですが、そちらはあまり意味ないデスネ。しっかりリスト化されてますし、盛大に反撃が可能ですので問題ありまセン。想定から外れた暴走事故の対応は後手後手に回されてしまいましたが、想定内の騒ぐ奴らであれば気楽に対応できるのデス】

 なお、既にその反撃はなされているのか、ネット上ではいくつかの企業が収賄や八百長、技術盗用、著作権違反などの逮捕状が出ており、どこがやらかしてくれたのかよく分かる状態になっている。
 むしろこれだけの犯罪があったのに、今まで表面化しなかったのは巧妙に隠しているとかではなく、こういうやらかしを見据えて手元に持っていたのだろうか…‥‥今さらだけど、運営会社の凄さが良く分かる。


 そんないくつもの企業が自業自得の大惨事になっているのはさておき、問題はそこではない。
 現実世界に不完全な状態で逃亡を果たしてしまった鏡面ののじゃロリの方が危険なのだ。

「で、そっちの方は場所が分かっているのか?」
【‥‥‥まだ捜査中ですネ。現実へ移動するプログラムを利用したようですが、不完全な状態での起動と、そもそも現実に出る様な箱庭やドールなどのシステムを介さない状態で、なおかつNPCが行うとなると‥‥‥より大きな負担がかかり、全身のプログラムに異常をきたし、捉えにくくなるようデス】
「なるほど‥‥‥」

 それにしても、現実の方に介入するNPCとか、本当にどういう技術なんだと思いたくなる。
 いや、そもそもVRMMOの代物に過ぎないはずだったのに、よく考えたら何でメイドとかテイムモンスターも現実にある程度の制限がかかるとは言え出てこれているのか、そこからツッコミをいれるべきか。
 考えない方が幸せかもなぁ…‥‥








‥‥‥おかしすぎるところが多いが、ツッコミを放棄しておいた方がいいとハルが考えていたころ。
 鏡面ののじゃロリは今、ある場所に顕現していた。

「お、おぅ…‥‥座標が固定できぬから適当に出たようじゃが‥‥‥ここは‥‥‥」

 バチバチと、周囲にある電子機器が火花を散らしているようだが、そんな事はどうでもいい。
 不完全な状態で使用したのでろくでもないことになっている可能性もあるが、今はとりあえず現実世界に飛び出すことは成功したようだ。

「ふむ‥‥‥ハッキングして作り上げた部屋とは違うのぅ。誰かの室内か?」

 現実に出る際に、足がかりが必要なのは分かっており、今回はプレイヤーがアルケディア・オンラインの世界に入る際に使う機器を利用し、出てこようと考えていた。
 とはいえ変な人のところに出るのは避けたかったので、事前に工作をしておいたのだが、残念ながら不完全な状態で使用したため、何処かのプレイヤーを足掛かりにして出てしまったらしい。
 いや、物理的にやってしまったようで、出た衝撃でふっ飛ばしたのか壁際に叩きつけられているようであった。
 
「い、いつつつ…‥‥な、なんだ?急に変なアナウンスがしたかと思っていたら、現実で痛みが‥‥‥」
「む、不味いのぅ」

 被っていた機器が目隠しになっているのか、すぐに鏡面ののじゃロリの存在に気が付く訳ではない。
 今のうちにさっさと部屋を出て逃げようとした…‥‥その時だった。


「‥‥‥んぅ?この感じ、この気配…‥‥間違いない!!ロリ娘だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「のじゃぁ!?」

 びゅばっと目にもとまらぬスピードで動かれ、思わずビクンッと体を硬直させてしまう鏡面ののじゃロリ。
 非道で非合法な手段にいくつも手を染めて来たのだが、現実だからこそ出てくる混沌とした気配に思わずビビったのである。
 そしてこの瞬間、逃げなかったことをのじゃロリは後悔した。


「うぉぉぉぉぉ!!まじで、ロリ娘が現実にくんかすうはすうはぁはぁはぁ!!」
「へ、変態じゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!」

 ぎゅううっと抱きしめられ、嗅いできた相手に対して言いようの無い嫌悪感とおぞましさを感じ取り、突き放そうとするもびくともしない。
 現実に出ているロリのボディとは言え、肉体強度や筋力の強さは内部データそのままに反映されているはずなのに、どういう訳か凄まじい力で放してくれないのだ。

「とりあえず嗅ぐな触るな放すのじゃぁぁぁぁぁあ!!」
「いやだぁぁぁ!!現実でこんな機会絶対に味わえないから、今のうちにしっかりと堪能させてもらうんだぁぁぁぁぁ!!」
「その後すぐに警察とやらに捕まるじゃろ!!というか、今通報してもいいんじゃよ!!」
「堪能しまくった後で捕まるなら本望!!いや、そうなると出会えなくなるならより一層一擲残らず搾り取れるほどのものにしなければ!!」
「お主精神あかん方向に振り切れているじゃろ!?」

 悪党とも自覚できるが、そんな悪よりもおぞましい何かに、思わずそう叫んでしまう鏡面ののじゃロリ。
 現実に出てくる機会をうかがっていた時もあるが、今この瞬間だけは全力でアルケディア・オンラインの世界に逃走したいと、心の底から思わされるのであった…‥‥

(いや、待てよ?この魅力にかかっているのならば、うまく利用して現実での隠れ蓑に‥‥‥)
「の、のぅ!!頼むから少し待ってほしいのじゃ!!あとでたっぷり相手をしてあげるのじゃから、今は話を聞いてくれぬかのぅ!!」
「逃げない?消えない?」
「う、うむ!!」

…‥‥この執着心、利用すればいい隠れ蓑になるかもしれない。今は少しだけ我慢し、利用するだけ利用してやれば良い話なだけなのだ。
 それと、このおぞましさも憎き運営側の刺客共に対して使えるかもしれないと、そう思う鏡面ののじゃロリであったが‥‥‥数日後、さらなる事態に巻き込まれるとは思わないのであった。
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

処理中です...