アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
162 / 718
Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.1-31 考えはたまに、正統な方向にあることも

しおりを挟む
‥‥‥アルケディア・オンラインの運営は、結構斜め上のことをやらかすことが多い。
 前にあったプレイヤーがレイドボスになる事や、悪の組織の設立、表があれば裏がある異界に婚活求め妖精女王などと、ツッコミどころ満載な前例が数多く作られてきたのだ。

 けれども、時としてまだギリギリのラインでまともなことをやってくる時もあった。

「ギルド無所属かつ、ある程度の実力を持つプレイヤー向けの乱入依頼か‥‥うん、まだまともかな?」
【ものすっごい変なことをしでかさない時点で、控えめな方かもしれませんネ】

 ぷかぷかと海上を戦艦で漂っている中、流れてきたとあるお知らせ。
 どうも運営側から一定の基準で判断されたプレイヤー向けの特殊なメールのようで、ギルドに所属していない条件も含めて色々と封がされていた。
 
 中身を読んでみると、ギルド同士の対抗戦の正式なお知らせのようだが、その中に乱入して暴れて見ないかというお誘いである。

「‥‥‥ただギルド同士の争いにするだけじゃなくて、ギルドに所属していない実力者を呼んで盛り上げてみようってことか」

 各分野、それぞれに得意なギルド同士が争う試合は見ごたえがある。
 けれども同じような実力同士であったら泥沼になる可能性もあり‥‥‥だからこそ、異分子を投入することで泥沼化を防ぐ目的があるようだ。
 ちなみに、乱入した場合一試合ごとに結構な額のALを支払う用意がされているようで、ファイトマネーとして豪快にふるまわれるらしい。実力があると認められているからこそもらえるようだが、デメリットはそんなにないようだ。

「これはこれで面白そうかも?ギルドに所属せず、むしろ勧誘されまくったうっとおしさのうっぷん晴らしの機会‥‥‥良いかも!!」

 運営も中々粋な事をしてくれる。堂々とした憂さ晴らしの舞台になるというか、逃げまわった日々に終止符を打ちつつ、なおかつその逃げ回る原因になった人たちに色々とやらかせるのだ。

…‥‥まぁ、そもそもの原因として運営がこのイベントを作ったことにあるので、できればそっちの方を狙いたいけどね。残念ながらそれはできないようだ。ちょっと残念。

 とにもかくにも、公の場で堂々とやり返せる機会は逃す手はない。
 全力で、ココは暴れまわらせていただこう‥‥‥いつぞやかのレイド以来の、大暴れができそうだ。

 結構楽しみになってきた対抗戦に、早く来ないかなと待ちわびるのであった‥‥‥‥


【ところで主様、黒き女神の姿でも乱入してみますカ?】
「あー、いや、流石に公開される場でやらかしまくると身バレしそうなのがちょっと怖いかな。けど、いっそバレないように変装もありか?」







…‥‥ハルがテイムモンスターたちと、乱入に関して作戦を練りまくっていた丁度その頃。
 裏魔界でも同様のお知らせを受け取っていた者がいた。

「…‥‥乱入か。姉にバレそうだが、ここで過ごし続けるのも場所がバレそうで危険だし、いっそ変装して目立つことで、あえて自分の影を薄れさせるのもありか」

 誰であろう‥‥‥中三病である。

【ホゲゲゲ、ゲッゲッゲー!!】
【ジョボベゲェ!!】
「うん、皆の言う通りだ。この裏魔界で鍛えた力を試すのにもちょうどいいだろう」

 中三病がこの裏魔界でテイムした様々なモンスターたちの言葉に耳を傾けて答える。


…‥‥姉であるティラリアの下から逃げ、裏魔界に潜伏してかなりの時間が経った。
 桁違いの強敵が多いこの地において、ただ逃げるだけではなく、自らの経験値にするために様々な戦いを挑み、中三病はかなりの実力を手に入れていたのだ。
 そう、今ならば、もしかすると姉に勝てるかもしれない。
 圧倒的な恐竜女王の力を持つティラリアとは言え、あくまでも恐竜の範疇ならば、この化け物が大量に出る裏魔界を生き延びた自分であれば、圧倒的に上回ったかもしれないと思えるのだ。


 とは言え、油断は禁物である。井の中の蛙大海を知らずというように、裏魔界で過ごしていたせいで大海に目を向けることはできていなかった。
 だからこそ、大海を知るために飛び出し、今の自分の実力を見る必要性があり、ここで運営からの乱入依頼が来たのはまさに天啓とも言えるだろう。

「各ギルド、相当な実力者が集まる場。ならばこそ、そこで実力を示せるのであれば、挑む時が来たと言えるだろう!!」

 ぐっとこぶしを握り締め、そう叫ぶ中三病。
 自身の実力を確かめるために、姉という悪夢に打ち勝つために、裏魔界から出て乱入することを彼は決意するのであった。

【ホンベェェェ!!】
【シャケシャケェェ!!】
「よし、お前たちも実力を見せるのだ。この裏魔界で出会った友たちよ!!」


…‥‥少々厳しい環境に身を置き過ぎたせいで、微妙に残っていた中ニ病感も復活していたようであった。
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

処理中です...