アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.0-25 三人寄れば文殊の知恵、というらしいが

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 悪魔と堕天使と手を組み、残る結界石の破壊に取り組むことになった。

「とは言え、今ログを確認したら‥‥‥残り2つか」

 話し込んでいる間にもあちこちでプレイヤーたちが捜索し、残り2つとなっていた。
 このペースであればもうすぐだと言いたくなるが、最後の方に回ってくる分、妖精女王が仕向けた番人が増強されている可能性がある。

「可能性がある、というよりも確定事項だな」
「討伐されたとしても、手駒は多いからね。でも、この様子だと最後の方になったら相当ヤバい切り札を出すかもね☆」
「妖精女王の切り札と言うと?」
「あー、今のところだと巨大なガーディアンか、もしくはドラゴン系統かな」
「多分残る二つそれぞれに配置されているが…‥‥プレイヤーたちに当たってほしいのは、ガーディアンの方だろう。あっちは種族特性というか、悪魔と堕天使の俺たちでは少し分が悪いからな」
「相性的なものがあるんだよ。逆に、ドラゴンならこっちが有利になれる」

 どうやら話を聞く限り、このアルケディア・オンラインには隠し相性のようなものがあるらしい。
 表立って見える相性だと、火を水で消したり、水は電気に弱かったりとあるが、隠し相性は当たり前に見え無さそうな部分に備わっているのだとか。

「悪魔と堕天使は、ガーディアンにちょっと不利だが、ドラゴンならば色々有利に働ける」
「ちなみにプレイヤーには?」
「あまり無いかな?装備とか持っているスキルや称号に少々影響されるらしいけど、よっぽど変な類が無ければ何もおかしなことにはならないはず」
「そっか、よっぽど変なスキルや称号が無ければ…あれ?一つ聞いて良いかな?」
「何だ?」

 ドラゴンにしろ何にしてもまともに正面突破する気はなく、協力してトラップでも仕掛ければ良いかなと考えていたのだが、今の言葉に少し不安を覚えた。

「あのさ、黒き女神ってスキルがあるんだけど…‥‥女神のスキルや称号だと、何か影響あるかな?」
「…‥‥神、かぁ‥‥‥」
「しかも女神だと‥‥‥あー、うん、変な類に該当するね☆」
「やっぱり?」

 念のために問いかけてみたところ、二人そろって渋い顔になってしまうのであった。




―――――
※特別意訳【竜語】

…‥‥妖精郷の結界石の一つ。
 ひときわ大きな石の前には、ドラゴンたちが鎮座していた。

【それにしても、此度の結界守護命令…‥‥妖精女王はまだ、諦めておらぬのか】
【狙われた悪魔と堕天使に憐れみたいが、生憎これも命令ゆえに忠実にこなさなければいかぬ】
【相性は良くもないが…‥‥それでも、この数であれば問題あるまい】

 その場に集っているドラゴンたちの総数は10体ほど。5体ずつ相手をすればいい計算であり、一対一よりも有利になりやすいだろう。
 また、体が大きいものが多そうなイメージがあり、むしろ体格がお互いに邪魔になりそうな気もしそうだが、ここに集っているのは大きさよりも純粋にその場に合ったものたちであり、素早く動ける細身の者が多く、なおかつ力もそこそこある若い者たちの割合が多い。

 とはいえ、油断することはできないので3体の高齢のドラゴンたちが指示を出すことにしており、経験不足をカバーする役目についているのである。

【何にしても、プレイヤーとやら徒党を組んできたとしても問題あるまい。いや、むしろ過剰戦力になりかねぬが、油断しなければいい話だ】
【すでにデカワンコとかが犠牲になっているからな…‥‥情報は出まわって来たが】
【罠にかかって動けなくなるとは、油断しすぎだろう】

 いくつかの結界石が破壊された時点で、どの様な状況になっていたのかドラゴンたちは既に連絡を受け、詳細を知っていた。
 守る役目を持ちながらも、慢心して油断しまくる輩たちには後でお仕置きを妖精女王と共に行い、今後の失敗に繋がらぬようにしようと思いつつ、周囲に警戒をしつづける。

【怪しい動きでもあれば、直ぐに罠だと思え】
【話し合いではなく、即発見即滅殺でいく心構えでいくぞ】
【見敵必殺、サーチ&デストロイを覚えよ。失敗すれば、妖精女王からのお仕置きが‥‥‥おおぅ、嫌だな】

 ぶるぅっと経験があるのかドラゴンの一体が身を震わせつつ、この場には蟻の子一匹はいらないような警戒態勢が敷かれていた。
 このまま油断せずにしっかりと役目を成し遂げていれば、妖精女王が悪魔と堕天使を仕留めきり強制婿取り、しばらく平穏無事に過ごせるだろうと思っていた‥‥‥その時だった。


【むぅ!?何だ、今の気配は!!】
【どうした?何を感じ‥‥‥ぬ?これは】

 ふと、できれば訪れてほしい平和な未来を望んでいたところで、何体のドラゴンが気が付き始める。

【これは悪魔でも堕天使でもないな】
【感じ取れるのは、神に似た気配…‥‥しかし、我々が知る者とはまた違うような、妙な気配だ】
【そもそも、この妖精郷に神がいるという話は聞いていないのだが‥‥‥プレイヤーとやらが、何かやらかしたのか?】
【神か、あるいはその眷属か、もしくはそれに連なる何かが近づいてきているぞ】

 正体不明の気配とは言え、感じ取れるものとしては神の類だと断言するドラゴンたち。
 ここに神が訪れているという情報はなく、ならば何者かが呼んだかあるいは呼び寄せたのか、判断が付きづらいが、臨戦態勢へと移りだす。

【神々相手は辛いが‥‥‥一柱程度ならば、どうにかなるだろう。その間に悪魔と堕天使がくれば不味いが…‥出迎えろ】

 気配のする方向へ向き、ドラゴンたちは何が来るのか目を凝らす。

 もう間もなく、目視できる位置へ来るようで、しっかり正体を見極めようとした次の瞬間だった。


ドォォォォォォンボォォォォン!!
【【【!?】】】

 突然、気配がしていた方向に爆発が起き、大きな土煙が発生する。
 それと同時に、一気に感じ取っていた気配がより強くなり、神の気配に関して意識を集中させる。

【何だ、今の爆発は!!】
【同時に神気がより増大したぞ!!各自、意識を神へ向けろ!!】
【何をするのか、目を離すな!!】

 神々の中には非常に気まぐれな類もおり、もしかすると今回来たのもその気まぐれな類かもしれない。
 だとすると、ここで気を緩めてしまえば一気に何かをしでかされるのが目に見えており、神の気配に関して意識を外せなくなる。


‥‥‥そう、いい意味でも悪い意味でもドラゴンたちは意識を謎の神だけに向けてしまった。

 油断ならない相手ならば、動きを見るためにも素早く動くためにも、必要な判断だったのかもしれない。
 けれども、油断していない事には変わらなかったのだが、少々意識を強く向けすぎており‥‥‥隠された気配に気が付くには、神の気配が濃すぎて無理だった。


「そいやっさー!!」
「えいやぁー☆」
ボゴン!!ゴゴン!!ドッゴン!!
【ほげぇっ!?】
【ごんげぇっ!?】
【ごぶべっ!?】

 突然、妙な掛け声と共に何か一撃を喰らい、指示をしていたドラゴンたちが地に倒れ伏す。

 何事かとどよめく中、その者たちの姿を目にした次の瞬間、遅いと言わんばかりに次々にドラゴンたち地に伏していった。

【ぐぉぉぉ!!何だ、いつの間にだぁぁ!!】
「最初からだ!!」
【神の気配に隠れて、何故、悪魔と堕天使がぁぁぁ!!】
「強襲するためにね☆」

 問いかけ、回答ともに力が振るわれ、一体、また一体とドラゴンたちは倒れていく。
 あまりにも手早い動きに、既に司令塔が倒されたせいで統率がすぐに取れず、若いドラゴンたちは対応に後れを取る。

 そして動揺していた時間がわずかだとしても十分だったようで、ものの数分後には全滅していたのであった…‥‥

―――――

「良し!!全員叩き伏せたな!!」
「強襲したとしても、戦闘を仕掛けられたら面倒だったからね。混乱を招き、動揺している隙に瓦解させていくのはなかなか楽しかったよ!」
「うわぁ、相性がいいと聞いていたとはいえ、この数を全滅かぁ…‥‥とりあえず、元に戻っていいよな?」
「ああ、問題ない。こいつらは神の気配に敏感に反応するが、気絶しているなら特に何もないからな」

 悪魔ゼアに確認を取り、僕はすぐに黒き女神のスキルの使用を止め、元の姿に戻った。

 神の気配に敏感なドラゴンたちの修正を利用して、わざと接近を気が付かせつつ一気に気配を倍増させ、大きな気配に隠しての不意打ちとは言え‥‥‥こうもうまくいくとは、流石に思わなかった。

「何にしても、後は石を砕けばいいよね?」
「そうだ」
「盛大に、やっちゃおう☆」

 結界石を砕いて見れば、ちょうど他のプレイヤーたちも片付いたところだったようで、一気にログに情報が流れ出す。

―――――
>プレイヤーたちの働きによって、結界石の全滅を確認!!
>妖精郷全体にかけられた結界が、破壊されました!!
―――――

 バリィンッとガラスが砕けるような音がしたかと思えば、どうやら結界が砕けたようだ。
 ここに出入りする笛も使用可能になっており、クエストがクリアされたことが表示される。

「よし!!そうと決まればさっさとここから出るぞ!!」
「ありがとうね、プレイヤーのハル!今回のクエスト報酬は参加していたプレイヤー全員に妖精郷から出た後に配られるよ!!」

 意気揚々と、直ぐに脱出の準備に取り掛かる悪魔ゼアと堕天使シルル。
 さっさとでなければ妖精女王がやってきて、無理やり襲われそうだからこそ早めに逃げるようだ。

「ああ、それとだ。今回の結界破壊に感謝するが…‥‥一応、こうやって手を組んでドラゴンへの不意打ちが成功したからな。個人的な報酬を先に渡すぞ」
「オイラからも、渡すよ。それじゃ、またね☆」

 何かを操作するかのように動かし、その場から悪魔と堕天使の姿が消え失せる。
 それと同時に、ログの方に表示が行われた。

―――――
>悪魔と堕天使に感謝され、特別な褒賞が手渡されました。
>悪魔ゼアからの贈り物『魔界・表優遇の印』を入手しました。
>堕天使シルルからの贈り物『天界・表優遇の印』及び、『特殊成長剤』を入手しました。

『魔界・表優遇の印』
表の方にある魔界にて、各所で特別な優遇が行われるようになる特別な印。
値引きして購入、増額して販売、その他様々な店でのサービスが利用可能になる。

『天界・表優遇の印』
表の方にある天界にて、各所で特別な優遇が行われるようになる特別な印。
限定販売「天使の羽DX」の購入が可能になるなど、面白いものを得やすくなる。

『特殊成長剤』
テイムモンスターに対して使用可能な、使いきりの特殊なアイテム。
使用するとレベルアップを待たずにして、進化が可能になる。また、未解禁の進化先も選択可能となる。
―――――
「へぇ、優遇されるのは良いかも。それに成長剤か」

 こういうのもあるのか‥‥‥テイムモンスターたちの中では一番新しいコユキに使うのもいいかもしれない。
 中々面白そうな手土産を貰いつつ、僕の方も待たせているトーカたちのために、さっさとここから脱出するのであった…‥‥‥





…‥‥そして数十秒後に、その場に妖精女王が全速力で駆け抜けてきていたが、既にもぬけの殻であった。




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