アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.0-21 世知辛い事情は、どこにでもあるのだが

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「ゴリラマンさんの情報通り、湖の真ん中に浮かぶ城…‥‥光景としては、確かに絶景かも」

 ゴリラマンさんと別れ、教えてもらった妖精郷の場所に向かうと、そこには確かに絶景が広がっていた。

 花畑から離れた場所にある大きな湖の空には虹がかかっており、湖からぱちゃぱちゃとイルカのようなモンスターが飛び交い、綺麗な水しぶきが上がっている。
 そしてその湖の真ん中には、これまた大きな西洋風のお城がそびえたっており、どこから入るのかは不明だがバランス的に神秘的に見えて、中々光景として綺麗なバランスが整っていると言えるだろう。

 しいて問題を言うのであれば、真ん中にありつつ船や橋が見えないので近くまで行けない事だが、それでも十分ではある。泳いで向かうこともできそうだけど、こんこんっと何か通さないような透明な壁もあり、これがいわゆる結界とか言うやつなのかもしれない。


「でも、遠い所から見るだけで良いな。構図としては夜とかだと星々の明かりが映えるだろうし、霧が出てきたらより神秘的な雰囲気が増すかもしれないな」

 今は普通のぽかぽか日和な天候ではあるが、十分な光景である。

 その為、トーカや待っている他のテイムモンスターたちのために僕はスクリーンショットを撮影し始めた。普段そんなに使うことも無いけど、綺麗な光景とかはきちんと収めたい。VRMMOだからこそ、こういう写真撮影はやりやすいようになっていて、誰かに取ってもらう必要性とかは無いしね。




 そんなわけでパシャパシャと適当に写真に収めて、そろそろ戻ろうかなと思っていた時‥‥‥ふと、周囲の妖精が騒ぎ始めた。

『テーヘンダーテーヘンダー!!』
『悪魔、堕天使、イター!!』

「‥‥‥悪魔と堕天使?」

 悪魔と言えば、アルケディア・オンライン内では魔界の方に住まう亜人種族のような住民ではあるが、物凄く危険な類という事は無かったりする。
 一部に例外もあるそうだが、なにやら妖精たちの様子を見る限りその類が来たのだろうか?でも、ここに来れる条件を考えるとそんな危険なものはやすやすと来れなさそうな気はするんだがなぁ。あと、堕天使ってここでは初めて聞いたかも。天使に関しては天界で聞いたけど、堕天使もいるのか?

『ソノ二人、今不味イ!!女王様、留守予定急ニナクナッテイルノ、伝エ損ネタ!!』
『スグニ逃ゲルヨウニイワナイト!!』
『銀ト金ノ二人ダケド、ドッチモ逃ガサナイト!!』
『ダメダ!!女王様勘ヅイタァァァ!!』

 慌てふためく妖精たちの様子を眺めていると、空気が一瞬ヒヤッとしたようなものに切り替わった。
 なんとなく嫌な予感を感じ取り、ここから出る手段‥‥‥詳しい説明を読むと笛を逆に演奏すれば妖精郷から出られるという事で妖精の笛を吹く。

―――――
>逆の演奏によって、妖精郷からの退出‥不可とされました。
>妖精女王が現在、『捕縛結界』を妖精郷全体に張り巡らせました。解除しない限り、出られません。
―――――

「何これ!?」

 まさかの脱出できない状況に、僕は驚かされる。
 というか、妖精女王何やっているのだろうか?捕縛結界ってなんか物騒な名前のものも出ているし、何事なのかつかみきれない。

『プレイヤーサン、プレイヤーサン!!助ケテ助ケテ!!』
『悪魔サンタチ、ココカラ逃ゲラレルヨウニシテ!!』

 ログに出ていた表示に驚いていると、僕の存在に気が付いた妖精たちが駆け寄り、周囲を見れば他のプレイヤーたちの方にも群がって、助けを求めてきた。

―――――
>緊急クエストが妖精郷の妖精一同より出されました!!
>クエスト『妖精郷からの脱出経路確保』が、この妖精郷にいる全プレイヤーに発令されます!!

『妖精郷からの脱出経路確保』
妖精女王の手によって、脱出することができない状況になってしまった。
悪魔と堕天使の二人を妖精女王が狙っているようで、捕縛された瞬間瘴気が各地で噴出しかねない状況になります。
急いでプレイヤーたちは、全力で妖精郷各地に女王の手によって生み出された『結界石』を破壊し、ここからの脱出に手を貸しましょう。

報酬:悪魔&堕天使からの特別なアイテムのプレゼント。
失敗ペナルティ:瘴気噴出により、各地のモンスターが狂暴化&活性化します。

なお、妖精郷に関しては脱出後、通常状態へ戻ります。妖精女王に関しては、次回アップデートで詳細公開予定です。

―――――

「‥‥‥なんだろう、この状況」

 字面だけ見ると、普通は悪魔と堕天使が攻めてきて不味い状態になるという感じになるのに、襲われるのがその二人ってどういうことなのか。
 ツッコミどころが満載な気がするし、そもそもこんなことが引き起こされるのならば来ないほうが良いんじゃと言いたいが、どうも妖精たちの叫び声から考えると何かしらの事情があるらしい。

 とにもかくにも、今はその結界石とやらの破壊を優先したほうが良さそうだ。


「テイムモンスターもいない状況だけど‥‥‥久しぶりのレイドバトルとソロプレイのようなものだし、やってみるかな」

 早めに戻ってここでの光景を共有する予定だったが、突然巻き込まれたレイド形式のようなクエスト。

 とは言え、こんな突拍子の無い事に関しては、今まで色々とあり過ぎたので、この状況にすぐ慣れてしまうのであった…‥‥


「慣れた身に関して、ちょっと悲しい気もするけどね…‥‥」
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