アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
149 / 718
Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.0-20 星になったもの、どこかにおいておくとして

しおりを挟む
‥‥‥新しいアイテムを手に入れた以上、それを使用してみたい好奇心が沸き上がるのは、当然のことかもしれない。
 未知の場所になるだろうけれども、そういう場所を探索するのもアルケディア・オンラインを楽しむ要素にはなるからだ。

「でも、吹いた人しか入れないかぁ‥‥‥テイムモンスターたちもいけないようだし、ちょっと見に行ってみる程度にするけど、トーカはどうする?」
「んー、私もできれば見に行きたいけど、いけないなら潔く諦めるしかないから待っているよ。その間、お兄ちゃんのテイムモンスターたちの面倒を見てあげる♪」
「その前に、解放してほしいのじゃが」
「だーめ!!」
「なんでじゃぁぁぁぁぁ!!」

 掲示板に載せられるほどの悪行をしていたのじゃロリが拘束されているのであれば、ここでトーカによって捕縛されている方が世のため人のためになるかもしれない。
 心の中でそう思いつつも、僕は手に入れた妖精郷の笛を使用することにした。

 ほんのちょっとだけの見学のつもりで、良い光景があればきちんとスクリーンショットを撮影していくことを忘れないようにしつつ、笛を吹いてみる。
 どうやら演奏がうまくない人でも、吹いてみるとそこそこいい音色が鳴るようで、ピョロロ~♪っとなると同時に浮遊感を覚える。


 そして次の瞬間には景色が転じており、花畑の中に立っていたのであった。

「…‥‥これこそ、ある意味ルー〇っぽいのかな?」






 とにもかくにも、辿り着いた妖精郷とやらを見渡してみれば、辺り一面は現実世界でもなかなかお目にかかれない規模の凄い花畑が広がっている。
 とは言え、全部が花で埋め尽くされているわけでもなく、桜やその他木に咲く花などもあるようで、あちこちで花びらが舞う光景になっているようだ。

 また、花びらの中に紛れて飛び回っているのは瓶詰めされていた妖精たちのようで、解放された空を楽しんでいるのか楽しそうに歌っており、花に着地して休んだり、花びらに乗って遊んでいたりと和む様子もうかがえる。

『アー!マタ、プレイヤーサンガキタヨー!!』
『ヨウコソ、妖精郷ヘ!!』
『歓迎歓迎、女王様ニ選バレタヒト、イツデモオイデー!!』

 あちこちでそう口にしつつ、楽しそうに飛び交う妖精たち。

 ここに来れる人は、現時点で知る限り善意で願い事を使用した人ぐらいだが、またと言っているという事は他にもいるのかもしれない。

「でもネット情報だと見なかったような‥‥‥あ、でも知ってしまったら100%善意ともならないのか」
 
 あくまでも完全な善意が条件で、事前に知ってしまったら意味を無くすのかもしれない。

 考えていなくてもちょっとでも思うと、結果として駄目になる入手法…‥‥中々シビアというか、厳しいアイテムの入手方法ではある。


 でも、その分ここに訪れる人は善意でやる人が多いようで、ちらほらと少ないながらも見かけつつ、互に軽く挨拶をすれば返って来るし、中々過ごしやすい場所でもあるだろう。
 だからこそ、妖精たちも自由に過ごしているのだろうし、仲には花畑で寝転がって満喫している人の姿も見る。

「けど、それならもうちょっと制限軽くしてほしかったかなぁ‥‥‥テイムモンスターたちも一緒なら、もっと楽しみやすいのに」

 まだまだ調整中なのだろうかと思いながら寝転がっている人を見ていると‥‥‥ふと、見覚えのある姿を目にした。


「あれ?ゴリラが寝転がって‥‥‥いや違う、ゴリラマンさんか」
「うほっ?今わたしの名前を呼んだのは‥‥‥ほぅ、最初の方で教えてあげたハル君か」
「名前、憶えていたんですか」
「ああ、そうだ。人を導き、楽しませるものたるもの、受講した生徒たちは全て覚えているモノなのだよ」

 そこにいたのは、アルケディア・オンラインで最初のころに、遊び方などをプレイヤーたちに教えまわっていたゴリラのような姿をしたゴリラマンさん。
 バージョンアップでだいぶ変わってきた世界とは言え、ゴリラマンさんの新人プレイヤー向けの授業は人気があり、未だに教えを頼む人も多いと聞く。

「それに、今はアルケディア・オンライン内で学業の塾講師もしているんでしたっけ」
「ああ、そうだ。遊ぶだけではなく、学びも必要であり、このアルケディア・オンラインでは知識も生かせるからな。最近は巣立った生徒たちが戻ってきて手伝ってくれるので、たまにこうやって休むこともあるのだよ」

 ゴリラのような見た目の人なのに、教育者としての志は高いようで、常に最新の知識を生徒たちに与えることができるように動いてもいる人。
 ゴリラは森の賢者とも言う話があるけれども、この人にはまさにその言葉が似合うだろう。

「最近は友人も増えてな。ネスッシー水泳教員やチュカバン夜行教員なども増えている。卒業した生徒であっても、常に受け付けているから機会があればぜひとも受けて欲しい」
「人が思った以上に増えているんですね」
「そうとも、このアルケディア・オンラインはオンラインゲームだからこそ全世界に広がり、繋がる場所だ。国や言葉、考え方などが違ったとしても遊びたいという心の持ち主が集いやすく、だからこそ人も集まるのだ」

 最新の情報なども集めやすいようで、攻略や前線にいるプレイヤーたちもたまに講義を受けているらしい。

 ある意味生ける辞典というか攻略本というか、それとも熱意溢れるゴリラの教員というべきだろうか。


「とは言え、さすがにわたしもここに来れたのは偶然なんだがな。妖精の瓶詰の話を聞き、これまで受けた生徒たち全員に僅かでもいいから幸運が宿ってほしいと願ったら、どういう訳か妖精の女王とやらに気に入られたようでな、ここに来れたのだよ」

 なお、その望みは叶っているようで、これから講義を受ける人たちも対象になるらしい。結構幅が広い大きな願い事のようにも思えるのだが、ゴリラマンさんの熱意に打たれた妖精が全力でやってくれたそうだ。

…‥‥そんな全力が出せるなら、僕の方の遭遇率関係もどうにかできて欲しかったけどなぁ。そこはやはり、人徳が違いすぎるせいなのだろうか。

「とにもかくにもだ、ここで出会ったのも何かの縁だ。妖精郷に訪れて調査は既に完了しているが、何処か聞きたい場所はあるだろうか?」
「あー、それじゃ、ちょっと待たせている人がいるんで、ここでお勧めの綺麗な撮影スポットがあれば教えてほしいのですが」
「任せたまえ。絶景スポットは既にいくつか確認しているが‥‥‥ふむ、ハル君の望むような光景を考えるのであれば、ここから東に歩いて2分ほどの近場にある妖精城が良いだろう。湖の中に浮かんでおり、泳いでいこうとしてもはじかれるようになっているが、撮るのは構わないようだ」

 なんでも妖精郷には妖精女王が住まう城があるそうだが、その城には現在立ち入ることはできないらしい。

 湖の中に浮かんでおり、特殊な結界のような物が張り巡らされて訪れられないようになっているのだとか。

「ちなみに、周囲の妖精たちに聞いたが、2~3日後の小規模なアップデートを待ってほしいという話だ。もしかするとここ限定のクエストが発生するかもしれないから、興味を持ったならその時にでもまた向かって見るといい」
「分かりました。ありがとうございます、ゴリラマンさん」
「いやいや、当然のことだ。人を導くというのはお礼を言われるためにやるのではなく、その人のためを思っての事。教育者として心がけるのであれば、それを活かしてより良い道に向かってほしいだけなのだよ」

 うははははっと笑いつつ、ゴリラマンさんはもうちょっとこの花畑でゆっくり休むと言い、寝転がる。
 
 想いもがけないところで意外な人に出会ったが、相変わらず変わっていない人であった…‥‥


「‥‥‥しかし、テイムモンスターを連れてこれないのは残念だとは思う」
「あー、それは同感ですけれども、ゴリラマンさんもやはり不満に思っているんですね」
「そうだ。このような美しき花園であれば、皆で共有し、楽しみ合いたい。それができないのは非常に惜しいが、開放される機会があるまでココの光景を写しておこう。わたしのほうの使用人も花が好きでな、ここの光景を見せれば喜ぶだろう…‥‥」

しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...