アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~

ver.2.1-25 惜しいとすれば、背後の爆発

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>『レティアの悪だくみ道中記』を受注。クエストが開始されました。
―――――

 正直言ってクエスト名の時点でツッコミどころがあるのだが、気にしないほうが良いだろう。何かあればすぐにでも、お仕置き称号を活かして成敗できるのだからなぁ‥‥‥いや本当に、この称号をくれた運営、凄い英断である。

「結構理不尽じゃけれどな‥‥‥まぁ、開始するのであれば話を聞くのじゃ」

 のじゃろりことレティア曰く、今回のイベントに関して一番需要がありそうな薬は『胃薬』。VRMMOの中なのに現実的過ぎる中身のような気がするが、それでも効果は現実の比ではない。
 まさにゲームだからこそ出来る、ぶっ飛んだ効果の代物が作成可能であり、それを捧げれば良いことがあるようだ。なお、効果としては薬神のみ限定で、プレイヤーに使っても精々二日酔いを瞬時に直すぐらいなのだとか。

 とにもかくにも、胃薬は胃薬でも、ただの胃薬では意味がない。本当にぶっ飛んだ代物を作るためには、それ相応の原材料が必要になるのは当然のことだろう。
 その為、その素材がある場所へ向かうことになったのだが…‥‥





ドドドドドド!!
「ひゃっはぁ!!速いのぅ!!しいて言うのであれば、なんで凧に括り付けられて飛ばされる形になるのじゃろうか?」
「セレアが嫌がったからね。妥協案としてこうなった」

 現在、セレアの背中に僕は乗せてもらい、その後ろの方で凧に括り付けられてのじゃロリレティアが飛ばされていた。
 セレアの背に乗って移動するのが一番早い方法なのだが、乗る人を選ぶというかのじゃロリを乗せるのは嫌だったようで、どうしたものかと協議した時にルトを見て思いついたのである。蛸と凧では全然違うが、発想のヒントになったので良いとしよう。絵面が酷いように見えなくもないが、地面を引きずって連れて行くのとは違うからまだマシな方法だと思ってほしい。

 ついでに言うのであれば、セレアの走りに合わせてマリーもリンも並走しているが、彼女達は彼女達で足が速い。女神の使い魔見習いとなったことで身体能力が向上したおかげか、元々素早く動けるせいなのかは不明だが、置いていかれることはない。
 そう考えると、ルトやロロはどうなのかという話になりそうだが‥‥‥今回、二人はハウス内にお留守番という事でこの場にはいない。現地でハウスシステムを作動させて出せばいい話なので、特に反対は無かった。

【まぁ、嫌な予感がしますので道中は大人しくしているほうが良いと判断しまシタ】
【ギャベィ】

…‥‥ハウスシステム内に入る前にそうつぶやかれたが、道中何もない事を祈りたい。



 とにもかくにも、凧に括り付ける形ではあれど、クエスト限定パーティという事でのじゃロリに案内してもらう形で加わってもらい、目的地へ目指して駆け抜ける。

「ふむ、次の道を右に向かうのじゃ!!あ、左はいかぬほうが良いのぅ」
「何で?」
「あっちはイベント限定薬泥棒がいるからのぅ。エンカウントすれば強制戦闘、敗北すれば奪いつくされるから注意じゃ。まぁ、お主らの今の強さであれば問題はないじゃろうが、面倒な道中は避けたいじゃろ?」
「それもそうか」

 面倒事厄災を引き付けるようなのじゃロリだったはずだが、アップデートを経て少々成長はしているらしい。見た目は全然変わらないけれども、普通にお役立ち情報をくれるのであれば普通にありがたいだろう。

 出来れば何も余計なことも無く、このまま穏便に終えたいと願ったが‥‥‥それは残念ながら、叶う事は無かった。









【バルルルゥ!!】
「っと、到着か。のじゃロリレティア、ここでいいのかな?」
「うむ!まちがいないのぅ!!ここに素材になる薬草が生えているのじゃ!!」

 大樹の村から1時間ほど駆け抜けたところにあったのは、盆地になっているエリア。

 木々が生い茂る中も突き抜けた先にあった開けた場所でもあり、アップデートで多くのエリアが解放されているはずだが、すべてにプレイヤーの手が伸びていなかったようで、秘境のような雰囲気を醸し出している。
 そしてイベント中なのであちこちの薬草の群生地もだいぶ寂しいことになっていたはずだが、ここはまだ手付かずなおかげで、うっそうと茂っているだろう。

「まぁ、ここから大変なんじゃがな。必要な薬草の一つが『ストマックイート』という薬草でな、漫画表現にあるような胃の形状をした葉っぱに、あちこちに口のような模様が出来ているやつじゃよ」
「‥‥‥それ薬草なのかな?イメージしたら不気味すぎて、毒草に思えるんだけど」
「む?ちゃんとした薬草じゃよ。煎じ方を間違えれば、『ゲリラ草』とも呼ばれるのじゃがな」
「何でゲリラ‥‥‥あ、いや、何となく察したから説明しなくていいや」

 銃撃音か、はたまたは奇襲的なものなのかは定かではないが、ろくなものではないことが大体わかる。

 薬も扱いようになっては毒になるので、それの丁度いい例にもなるのだろう。

「さて、到着したからハウスを開けて、ロロたちを‥‥‥」
【ガウゥ?】
「ん?どうした、リン?」

 全員をここに出して、手分けをして薬草を集めようとする中、ふとリンが何かを聞きつけた。

 何事かと思い、その視線の先を見れば、先ほど突っ切って来た森しかないのだが‥‥‥何かが聞こえてくる。

―――ドドドドドドドド!!
「---おおおお!!おおおおおおお!!」

 何かが駆け抜け、叫びながら迫るような音。モンスターかと思ったが、声の感じからして人のようなのだがそのありようが人ではないと思えるような感覚がある。


ドドドドドド!!
「おおおおおお!!ついに、ついに、見つけぁぁぁぁ!!」

 ドッカァァンっと盛大に木々をふっ飛ばして現れたのは、プレイヤーと思わしき男性。

 NPCではなくプレイヤーと断言したのは、どう考えてもこの世界に住まう人たちが着るような装備をしておらず、余にも珍妙な格好をしていたからだ。
 そう、戦隊もののスーツとヘルメットを着ているかのような、色合いは真っ赤でリーダーと言えるような‥‥‥そんな人物が現れて警戒する中、その人物は僕らに目を向けなかった。

 いや違う、目を向けたのは僕らではなく‥‥‥‥

「のじゃぁ!?」
「見つけたぞ魅惑のロリッコォォォォォォォォォォ!!」

 見た目が戦隊ものなのに、発言と行動が終末の変態というような動きでレティアに迫る。

 普通に不審者のようだが…‥‥うん、のじゃロリはただの幼女のような見た目をしているわけではないので、心配はいらないだろう。

「どう考えても気持ち悪いのじゃぁぁ!!」

 流石にこの不審人物の前で何もしないわけにはいかないので、心配はいらないと思いつつも、ハリセンの失敗作の一つ『ヘヴィーメタルハリセン』を手渡せば、火事場の馬鹿力というべきか軽々とのじゃロリは振るって不審者を叩きつける。

ばっごぉぉぉぉぉぉん!!
「あふぅぅぅうん!?」

 聞いているだけでも想い一撃と気色悪い声を上げ、戦隊ものの不審者はふっ飛ばされた。

 綺麗なホームランが決まり、そのまま星になったのであった…‥‥‥

―――――
『ヘヴィーメタルハリセン』
制作評価:12
効果:お仕置き用としては効果が強すぎて、武器認定された特殊なハリセン。振りかぶれば相手に想い一撃を叩きつけることが可能なうえに、想いを乗せて打ち付ければ対象をふっ飛ばす効果を持つ。想いが重ければ重いほど効果を発する。
―――――

 つまり、それほどまでに近寄ってほしくないという想いが強かったんだろうなぁ…‥‥

「いやまぁ、突然の強襲する変態は誰でもふっ飛ばして消し飛ばしたくなるのは分かるけれどね」
「何じゃよアレ…‥‥プレイヤーにはあんなのもいるのかのぅ…‥‥」

‥‥‥そう言えば、戦隊ものっぽい服装だったけれども、それならば一人でやっているわけでもないんじゃ?
 イメージとしてはレッド、ブルー、イエロー、ピンク、ホワイトという感じに5人そろってのパターンもあるし、そう考えるとあれがあと4人は…‥‥うん、考えないでおこう。奴は赤い星になって、もう会わないと思いたい。
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