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Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~
ver.2.0-19 潰される側は、どうなのか
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‥‥‥その男は、生まれつき屑であった。
屑であるがゆえに己の所業を省みることはなく、その環境もまた屑を助長させるには十分すぎるほどのものであったがゆえに、じっくりコトコトと煮詰められて味が濃くなるように、その屑さもますます磨きがかかっていった。
だがしかし、そんな男の屑な人生も、ある時あっけなく終わった。死因は明らかにそのクズ過ぎた人生がゆえに、恨みを買いまくり、人々によって討ち取られたというもの。
ありきたりかつ、これで何もかも終わるだけ…‥‥そう思われていたのだが、ただでは終わらなかった。
【ゲダァ?ゲダゲダァ!?】
なんという事でしょう。男の身体は腐り落ちて骨だけになっても、何故か墓場から蘇ったではありませんか。
その屑さ故に行き場のない魂があの世からも追い出されたせいなのか、その者はモンスターとして生まれ変わったのです。
だがしかし、肉体を失い、骨身の身体では生前のようなことはできない。それでも男の屑さはそんなことにもめげずに磨き上げ、持ちうるすべての能力をこれでもかと駄目な方向に使いまくった結果、何をどうして運命が動いたのか、何時しかダンジョンを治めるまでに至ったのだが…‥‥そんな快進撃も、この場で終わりを告げようとしていた。
【ゲダァァァァ!!】
キングリッチとなった男は、その目の前の光景が信じられなかった。
人から奪う瞬間が最もキングリッチにとっての快感となっていたが、その快感を得られないばかりか、有利だろうと思っていた軍勢が次々に葬り去られ、恐怖をしみこまされていく。
無理もない。目の前で荒ぶるのは、畏怖を感じさせられる黒き女神であるからだ。
その手先からは電撃放たれて軍勢を吹き飛ばし、接近した者は霧に包まれて腐り落ちて消えていく。
そしてその女神の仲間たちもまた強く、軍勢を薙ぎ払い、蹴り飛ばし、貫き、肉片へ変えられていく。
【オゴボベェェェン!!】
【ブッゲェェ!!】
キングリッチの生前の手駒たちの中には実力者もいたはずなのだが、その実力を発揮する間もなく、あっけなくあの世へ戻されて、失われる。
さらには、その黒き女神が引き連れていたように思える他の者たちも非常に強く、そちらはそちらで蹂躙劇となっていた。
おおきな猫が集団で襲い掛かり、食虫植物と踊りながら蹴り飛ばし、ギターで盛り上げて野菜で殴り飛ばす。
見ているだけでもツッコミどころがありそうな光景だが、屑であったそのキングリッチにツッコミの才能はなく、己の軍勢があっという間に消し飛ばされていく光景を見る事しかできない。
【ゲダ、ゲダダダダダダダァァァ!!】
黙って見ているだけではまずいと思い、反撃を考えてモンスターとなったこの身で扱える魔法を振るうも、その攻撃も当たらなければ意味がない。
いや、どういうわけか呪いなどの攻撃も含めているはずなのだが、あの黒き女神を前にした途端に呪いの効果も失せ、弾き飛ばされていく。
どうすればいいのか、屑の頭の中で必死になって考えるも答えは出ない。
生まれてこの方、自分も持ちうるものを全て利用して、人から金を、感情を、人権を奪い続け、堕ちた身になったとしても悔いることも無く、最大限利用し続けていた化け物。
そんなものが命がけの状況になっても、その本質は変わることはない。
では、何をすべきなのか?
その考えに至り、屑が導き出したのはこの場からの逃走。
ダンジョンが今の自分の居場所になっていたとしても、ここから出て新しい住みかを捜せばいいだけの話。
いくらでも放棄して、後は通りがかる者たちから奪いつくし、またこの生活を再建すればいい。屑だからこそできる諦めの良さと将来を見据えての行動によって、味方を囮にして最大限逃げるために全力を尽くす。
これでこの場から逃れたとしても、また同様の目に遭う可能性も無きにしも非ずだが、ここで知ったからこそ対策を立てればいいだろう…‥‥そう考え、屑は動いたが、すでに遅かった。
ざしゅっ!!
【!?】
何かが横切って、骨身の足に突き刺さり、床に縫い付けられた。
何があったと思い見れば、その足に突き刺さっているのは鋭利な包丁であり、しっかりと屑を捕らえている。
【‥‥‥まぁ、逃げようとするのは想定内デス。主様の蹂躙劇を利用して、バレないように逃げる‥‥‥あなたはそうやって、自分の罪から逃げ続け、ありとあらゆる罪を犯し続けてきたということを、私は聞いてましたからネ】
投げてきた方向からそう声が聞こえるが、今の屑には構って居られる暇はない。
この包丁を抜き、直ぐに逃げなければ命が危ない…‥‥いや、すでに死んでいる身なのに、なぜ命の危機を感じるのだろうか?
【ですが、気が付いていなかったようですネ。あなたが再びこうやって動けるようになったのは、収穫を待っていただけの話なのデス。ここで死すれば、本来であればダンジョンのボスとして再復活の予定があるのですが…‥‥あなたには、その権利も、ダンジョンのボスとして君臨する価値もないのデス】
聞きたくはない、そこから先は。
知りたくない、己の真実を。
見たくはない、絶望を告げる死神の姿を。
必死になって逃げようとするのだが、いつの間にか周囲の音が消えていた。
先ほどまでは自身のかつての手駒たちの断末魔が響き渡っていたのに、その声すらもない。
‥‥‥ああ、もう遅かったのだ。生かされていたその身はすでに、亡びる運命が決まっていたのだ。
もう一度、奪いつくせる屑な人生を楽しめるかと思っていた男は、単に餌として育てられ、熟成させられてその時を狙われていただけなのだ。
【残念ながら、使用人である私は経験値しかいただけないのですが…‥‥まぁ、良いでしょウ。さっくりと終わらせて、後は上の人達に任せマス。それでは、世界を超える最後の旅をどうぞお楽しみくだサイ】
最後に聞こえて来たのは、何の感情も抱かない棒読みの声。
そしてその言葉を最後に、屑は世界から切り離され…‥‥運ばれゆく。
二度と戻れぬ最後の旅路に共に行く者はおらず、屑のみの旅路はすぐに終わり‥‥‥しゃくっと、己のすべてが喰われゆくことのみを実感するのが最後の感覚であった‥‥‥‥
【‥‥‥スキル『真・アサシンアタック』。使用人限定、そのままの名前の特殊暗殺用スキルですが、さっくりいけましたネ】
ぼそりとつぶやかれたその言葉を聞く者はいない。
湧き出てくるアンデッドたちの対応に追われ、彼らは細かく見えていなかったのだから。
でも、これはこれで都合が良いのだ。こういう仕事をやるときには、目立たないほうが良い。
【後でちょっと、確認時にログを見直してもバレないようにしてもらいますかネ】
もう中身も何もないただの白骨死体が光となって消えゆく中、彼女はそっと人知れずに戦闘が行われている場へ戻り、今の主のもとへ仲間と共に動く。
そして気が付いた時には、どさくさに紛れてキングリッチが討たれていたことになるのだが‥‥‥『流れ弾に当たって死亡した』という隠蔽工作によって、バレる事は何もないのであった…‥‥
「って、あれ!?あのキングリッチがいつの間にかいないんだけど!?」
「ハルさん!!ログ、ログ!!流れ弾の巻き添えで、どさくさに紛れてやっちゃっていたよ!!」
「うっそだろおい!?ボスモンスターだと思っていたのにあっけなさすぎるのだぜーよ!!」
「まぁ、これはこれでありじゃないかしら?あんな女の敵は、あっけない死にざまほど記憶に残らなくて済むのよねぇ」
「まぁ、覚えたくない敵と言えるし間違ってもないのかだべ」
‥‥‥知らぬは、このうたかたのような、未だに完全に出来上がっていないあやふやな世界で遊ぶ者たちのみである。
屑であるがゆえに己の所業を省みることはなく、その環境もまた屑を助長させるには十分すぎるほどのものであったがゆえに、じっくりコトコトと煮詰められて味が濃くなるように、その屑さもますます磨きがかかっていった。
だがしかし、そんな男の屑な人生も、ある時あっけなく終わった。死因は明らかにそのクズ過ぎた人生がゆえに、恨みを買いまくり、人々によって討ち取られたというもの。
ありきたりかつ、これで何もかも終わるだけ…‥‥そう思われていたのだが、ただでは終わらなかった。
【ゲダァ?ゲダゲダァ!?】
なんという事でしょう。男の身体は腐り落ちて骨だけになっても、何故か墓場から蘇ったではありませんか。
その屑さ故に行き場のない魂があの世からも追い出されたせいなのか、その者はモンスターとして生まれ変わったのです。
だがしかし、肉体を失い、骨身の身体では生前のようなことはできない。それでも男の屑さはそんなことにもめげずに磨き上げ、持ちうるすべての能力をこれでもかと駄目な方向に使いまくった結果、何をどうして運命が動いたのか、何時しかダンジョンを治めるまでに至ったのだが…‥‥そんな快進撃も、この場で終わりを告げようとしていた。
【ゲダァァァァ!!】
キングリッチとなった男は、その目の前の光景が信じられなかった。
人から奪う瞬間が最もキングリッチにとっての快感となっていたが、その快感を得られないばかりか、有利だろうと思っていた軍勢が次々に葬り去られ、恐怖をしみこまされていく。
無理もない。目の前で荒ぶるのは、畏怖を感じさせられる黒き女神であるからだ。
その手先からは電撃放たれて軍勢を吹き飛ばし、接近した者は霧に包まれて腐り落ちて消えていく。
そしてその女神の仲間たちもまた強く、軍勢を薙ぎ払い、蹴り飛ばし、貫き、肉片へ変えられていく。
【オゴボベェェェン!!】
【ブッゲェェ!!】
キングリッチの生前の手駒たちの中には実力者もいたはずなのだが、その実力を発揮する間もなく、あっけなくあの世へ戻されて、失われる。
さらには、その黒き女神が引き連れていたように思える他の者たちも非常に強く、そちらはそちらで蹂躙劇となっていた。
おおきな猫が集団で襲い掛かり、食虫植物と踊りながら蹴り飛ばし、ギターで盛り上げて野菜で殴り飛ばす。
見ているだけでもツッコミどころがありそうな光景だが、屑であったそのキングリッチにツッコミの才能はなく、己の軍勢があっという間に消し飛ばされていく光景を見る事しかできない。
【ゲダ、ゲダダダダダダダァァァ!!】
黙って見ているだけではまずいと思い、反撃を考えてモンスターとなったこの身で扱える魔法を振るうも、その攻撃も当たらなければ意味がない。
いや、どういうわけか呪いなどの攻撃も含めているはずなのだが、あの黒き女神を前にした途端に呪いの効果も失せ、弾き飛ばされていく。
どうすればいいのか、屑の頭の中で必死になって考えるも答えは出ない。
生まれてこの方、自分も持ちうるものを全て利用して、人から金を、感情を、人権を奪い続け、堕ちた身になったとしても悔いることも無く、最大限利用し続けていた化け物。
そんなものが命がけの状況になっても、その本質は変わることはない。
では、何をすべきなのか?
その考えに至り、屑が導き出したのはこの場からの逃走。
ダンジョンが今の自分の居場所になっていたとしても、ここから出て新しい住みかを捜せばいいだけの話。
いくらでも放棄して、後は通りがかる者たちから奪いつくし、またこの生活を再建すればいい。屑だからこそできる諦めの良さと将来を見据えての行動によって、味方を囮にして最大限逃げるために全力を尽くす。
これでこの場から逃れたとしても、また同様の目に遭う可能性も無きにしも非ずだが、ここで知ったからこそ対策を立てればいいだろう…‥‥そう考え、屑は動いたが、すでに遅かった。
ざしゅっ!!
【!?】
何かが横切って、骨身の足に突き刺さり、床に縫い付けられた。
何があったと思い見れば、その足に突き刺さっているのは鋭利な包丁であり、しっかりと屑を捕らえている。
【‥‥‥まぁ、逃げようとするのは想定内デス。主様の蹂躙劇を利用して、バレないように逃げる‥‥‥あなたはそうやって、自分の罪から逃げ続け、ありとあらゆる罪を犯し続けてきたということを、私は聞いてましたからネ】
投げてきた方向からそう声が聞こえるが、今の屑には構って居られる暇はない。
この包丁を抜き、直ぐに逃げなければ命が危ない…‥‥いや、すでに死んでいる身なのに、なぜ命の危機を感じるのだろうか?
【ですが、気が付いていなかったようですネ。あなたが再びこうやって動けるようになったのは、収穫を待っていただけの話なのデス。ここで死すれば、本来であればダンジョンのボスとして再復活の予定があるのですが…‥‥あなたには、その権利も、ダンジョンのボスとして君臨する価値もないのデス】
聞きたくはない、そこから先は。
知りたくない、己の真実を。
見たくはない、絶望を告げる死神の姿を。
必死になって逃げようとするのだが、いつの間にか周囲の音が消えていた。
先ほどまでは自身のかつての手駒たちの断末魔が響き渡っていたのに、その声すらもない。
‥‥‥ああ、もう遅かったのだ。生かされていたその身はすでに、亡びる運命が決まっていたのだ。
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【残念ながら、使用人である私は経験値しかいただけないのですが…‥‥まぁ、良いでしょウ。さっくりと終わらせて、後は上の人達に任せマス。それでは、世界を超える最後の旅をどうぞお楽しみくだサイ】
最後に聞こえて来たのは、何の感情も抱かない棒読みの声。
そしてその言葉を最後に、屑は世界から切り離され…‥‥運ばれゆく。
二度と戻れぬ最後の旅路に共に行く者はおらず、屑のみの旅路はすぐに終わり‥‥‥しゃくっと、己のすべてが喰われゆくことのみを実感するのが最後の感覚であった‥‥‥‥
【‥‥‥スキル『真・アサシンアタック』。使用人限定、そのままの名前の特殊暗殺用スキルですが、さっくりいけましたネ】
ぼそりとつぶやかれたその言葉を聞く者はいない。
湧き出てくるアンデッドたちの対応に追われ、彼らは細かく見えていなかったのだから。
でも、これはこれで都合が良いのだ。こういう仕事をやるときには、目立たないほうが良い。
【後でちょっと、確認時にログを見直してもバレないようにしてもらいますかネ】
もう中身も何もないただの白骨死体が光となって消えゆく中、彼女はそっと人知れずに戦闘が行われている場へ戻り、今の主のもとへ仲間と共に動く。
そして気が付いた時には、どさくさに紛れてキングリッチが討たれていたことになるのだが‥‥‥『流れ弾に当たって死亡した』という隠蔽工作によって、バレる事は何もないのであった…‥‥
「って、あれ!?あのキングリッチがいつの間にかいないんだけど!?」
「ハルさん!!ログ、ログ!!流れ弾の巻き添えで、どさくさに紛れてやっちゃっていたよ!!」
「うっそだろおい!?ボスモンスターだと思っていたのにあっけなさすぎるのだぜーよ!!」
「まぁ、これはこれでありじゃないかしら?あんな女の敵は、あっけない死にざまほど記憶に残らなくて済むのよねぇ」
「まぁ、覚えたくない敵と言えるし間違ってもないのかだべ」
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