上 下
61 / 718
Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~

ver.2.0-3 そもそもよく考えたら、無理なことは無理なのでは?

しおりを挟む
『アサシン島』
その名の通り、アサシンが住まうとされる島。
アルケディア・オンライン内においては、暗殺者や忍者と呼ばれるような人々の隠れ里の意味合いも持っており、島内限定での特殊な状態異常を引き起こしたり回復させたりする薬草が群生している。
また、Ver.2.0より職業に『サブ職業』と呼ばれるカテゴリが追加されており、各地で条件を満たせば特殊なサブ職業が入手でき、この島でも類に洩れず特殊なサブ職業を入手できる可能性がある。

『サブ職業』
今までは戦士や魔法使い、錬金術師などの職業が存在しており、上級職もあった。
けれどもそれらでは足りないステータスを補うために、サブ職業としてVer.2.0から追加された。
しかし、サブ職業は各地で条件を満たさないと入手不可能であり、イベント限定のものもあるので要注意。入手して設定次第、ステータスに反映される。
なお、あくまでもステータスの補助ではあるが、サブ職業の効果は重ね掛けが可能。ただしその場合、通常のステータス補助より重ね掛けした分上昇量が減少する。
―――――

‥‥‥船も無事に到着し、僕らは島に降り立った。
 アサシン島といわれるだけあって、遠方からだと何も見えなかったのだが、近くなってようやく存在うっすらと見せたので安心したのだが…‥‥

「それでも、隠れ里もあるというだけあって、どことなくつかみにくい島だなぁ‥‥‥皆、足元の確認が出来ているよね?」
【シャゲシャゲ】
【ガウウ】
【バルゥゥ】
【不安定ですが、なんとカ】

 存在感そのものが薄い島なせいか、降りたっても地面に足を踏みしめているという感覚が少ない。どことなく浮いているというか、漂わされているような感覚があり、まともに動くにはやや厳しい立地と言うべきだろうか。
 けれども、足元があるという事はちゃんと島があり、人が住まう場所もあるはず。そしてついでに、ここ限定の特殊な薬草がある場所も確認できるはずなので、まともに歩けるようになればこれはこれで面白いのかもしれない。
 
 なお、ミートン一家はこの不安定な足場の中、全速力で駆け抜けて下船し、あっと言う間に見えなくなった。人の欲望ってすさまじいというか、時として願いを叶えるために障害物をふっ飛ばすというのだろうか。







 とにもかくにも、僕らの目的としてはあちらとは違い、ここでの薬草採取である。隠れ里なども気にならないわけがないのだが、「隠れ」という付いている時点でそう簡単に見つからないことが予想できるし、出会えたらラッキーと思う程度でこだわることは無い。

「ロロ、薬草図鑑は?」
【ここに用意しておりマス。アサシン島限定バージョンのものデス】

 これもまたアップデートで追加された、ありそうでなかった要素「薬草図鑑」。モンスターに関しての魔物図鑑はこれまでアップデートごとに内容がどんどん追加されていたのだが、今回の大型アップデートで一気にドロップアイテムなども増加した影響なのか、各アイテムごとに対する図鑑が用意されたのである。
 しかも、各地限定の薬草図鑑は一度そろえると統合が可能となり、どんどん内容を濃くすることが可能であり、一定量を集めると報酬が貰えるのだ。高価な特級ポーションや、錬金術ではできないような薬品の数々等、中々ありがたい要素でもある。

「それじゃ皆、ここでちょっと手分けをして新しい薬草などを採取していこう。とは言え、この島でも普通にモンスターが発生するし、出来る限り近くにいつつ戦闘が始まったら即座に駆け付けろよ」
【シャゲ!】
【ガウ!】
【バルゥ!】
【了解デス】

 一応、全員のレベルは先日のオララゴン戦を経て、平均60レベルほどになっている。ロロの場合は使用人というかメイドなせいかレベル設定は無くなっているようだが、そこはプレイヤーのレベルと連動するらしく、実力的に見ても中々強くなっているはずである。‥‥‥薬草の調合から回復手段の即配布、バフ効果付きの食糧生成…‥‥あれ?もしかして僕よりかなり有能になってないかな?

 プレイヤーとしては喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか複雑な気分になりつつも、ひとまずその考えは大空へ投げ飛ばすとして、僕らは距離を把握しながら散開して探索を開始し始めるのであった。



【シャゲシャゲェ!!】
「っと、マリーの方でいきなりモンスターとエンカウントか!!」
【図鑑データ確認。アサシン島限定のモンスター『ナイフビートル』デス。角が鋭い刃物になってますので、気を付けてくだサイ】
「物騒なのがいきなり出たなぁ!?」










‥‥ハルたちが早々のエンカウントで戦闘を開始し始めていた丁度その頃。アサシン島の中を激走している集団は今、迷走していた。

「うぉぉぉぉ!!隠れ里、美人のくノ一はどこじゃぁぁぁ!!」
「出来れば美しい人か可愛い人、あるいは年端も行かぬ少女が良い!!」
「発言だけ見れば危険人物だけど、さっさと新しい出会いが欲しいぃぃ!!」

 ミートン、カックウさんにスッケンさんは今、欲望に忠実な状態で叫びながら全力で走っていた。
 しかしながら、そんな堂々とあふれ出る欲望を叫びながら爆走する集団を、やすやすと隠れ里へ到達させるような者たちがこの地にいるだろうか?いや、いないだろう。

 ゆえに、彼らは気が付いていなかったが、いつの間にか警戒していたNPCたちの手によって幻術がかけられており、同じところをぐるぐると駆け回っていたのだが…‥‥それに気が付くのは、現実時間で3日後の話であった。


「‥‥‥何だ、アレ。いつまで爆走しているんだ」
「若者たちは分かるが、あの爺さんの体力すげぇなぁ…‥‥」

‥‥‥密かにNPCたちの手によって、要注意プレイヤーリストが作られており、そこに載ったのも言うまではない。

「それと、もう一組下船してきたようだが…‥‥あちらはまともそうだ。彼らの方なら良いのでは?」
「あれと比較すると、格段に良すぎるだろ。‥‥‥プレイヤーって人達にも色々といるんだろうけれども、格差が凄まじいなぁ」

しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...