アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~

ver.2.0-2 意気揚々に、挑みましたが

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【ガウガウガウガーーーーウ!!】
「ほげぇぇぇぇえ!?」
【バルルルルゥ!!】
「ひんぎゃぁぁぁぁ!!」

 強烈な蹴りが何発も入り、トドメに防御用の役目を果たしつつも硬さを攻撃に使用できる大盾で殴られ、何人かがまとめて吹っ飛んでいく。

「リン、セレア!!その調子で奴らを元の船にふっ飛ばせ!!」
【ガウ!】
【バルルル!!】
「そっちの方はまだ何人か残っているか!!」
「大丈夫だ!!」
「こちらもふっ飛ばしたぞ!!」

 この戦場と化した船上で一時的に組んでいる人たちに確認をとりつつ、周囲の警戒を怠らずに相手が来るのであれば吹っ飛ばす。
 今のところだいぶまとめて押し返せているようで、この調子なら準備が済み次第どうにかできるだろう。

【ただ今戻りまシタ。敵船の内外、各所に設置完了デス】
【シャゲシャゲシャゲェ!】

 っと、海からざばぁっと船の上に一気に飛び上がり、ロロとセレアが甲板へあがって報告してくれた。どうやらこの混戦状態にありながらも、しっかりと与えられた任務をこなしてきたようだ。

「それじゃ全員、衝撃に備えろ!!着火する!!」

 小さな爆裂薬を取り出し、一番狙いやすい場所に設置した粘着弾へめがけて投げつけ‥‥‥それが一気に、炸裂した。

ドッガァァァァン!!

 爆発が起きると同時に、各所に設置された他のものと連鎖して次々に起こり、相手の船があっという間にボロボロになり、海へ沈んでいく。
 それと同時に周囲にまだ残っていた他の奴ら‥‥‥この船上で暴れていた海賊たちは慌てた様子で自分達の船に戻り、その隙に僕らが乗っているこの船は場を離れていく。

「ふぅ…‥‥どうにか、乗り切ったか…‥‥」

 そうつぶやき、全員この難所を乗り越えたことに安堵の息を吐くのであった。







‥‥‥Ver.2.0になって数日。僕らは今、各地の攻略班などが調べた島や国の情報を集め、とある船に乗船して目的地を目指していた。
 他のプレイヤーたちも同船しており、目的地へ向けての航海を共に楽しんでいたのだが‥‥‥その最中に、ネットの中でも言われていた海上限定の襲撃イベントとして、海賊に襲われてしまった。

 幸い、この船に乗っているプレイヤー同士で仲良くしていたのもあって、連携も取りやすく、直ぐに対応が取れたものの、この手の襲撃イベントの敵はそこそこ強く設定されていたようで、気を抜けば全滅をしかねなかった。

「だからこそ、乗っている船が沈没しかけたら慌てて戻るというネット情報を信じて、仕掛けまくったけど…‥成功するとは流石に思わなかったな」
「ふぉふぉふぉ、まぁ百聞は一見にしかずというから、実際に見てみぬとわからぬものよ」

 僕の言葉に対して、笑いながらそう答えてくれるのは船上で出会ったプレイヤーの一人で、好々爺のような見た目をした爺さんだ。
 でも、その見た目とは裏腹に、禍々しい杖を持っており、海賊共を叩きのめしまくっていた動きは老人とは思えない。

「それにしても、まさかあなたに出くわすとはのぅ。プレイヤーの中では珍しく、人型のテイムモンスターを連れているとして話に上りやすいハルさんに出くわすとは運が良いことだ」
「僕らの方こそ、このアルケディア・オンラインで楽しむプレイヤーの中で、話題に出る事のある有名なパーティ『ミートン一家』のミートンさんに出会えて運が良かったです」
「いやいや、こちらこそ良かったというべきか、ハルさんのおかげで助かったのもありますからのぅ。のぅ、そうじゃろカックウさんにスッケンさん。お主ら、最初の方で見事に大ピンチに陥ったじゃろうが」
「うぐぐぐ‥‥‥じ、じっさまやその人が強すぎるだけなんだが…‥‥」
「というか、生で見たとはいえそちらは良いなぁ‥‥‥こちらはむさくるしいのしかおらんというか、花形募集中でそろってないからなぁ‥‥‥」

 ミートンさんの言葉にぐぅの音も出ないような顔になりつつ、そう返答するカックウさんにスッケンさん。そう、名前の通りというか、この雰囲気的に‥‥‥このパーティは水〇黄門をモデルにして作ったそうで、あちこちのエリアで勧善懲悪の旅路をして楽しんでいるそうだ。

 あまりにも配役が似合いすぎているというか、本来なら守られるべきのようなミートンさん自身が杖で敵で敵を蛸殴りにする光景や、本来なら表立って戦うべき配役になっていそうなカックウさんやスッケンさんのやらかしが中々面白いようで、ネット上でもリアル水〇黄門モドキだけどこれはこれで中々面白いとして、話題に挙がりやすいのである。

 なお、ミートンさんが好々爺ながらも棒術を使いこなしている理由としては、現実では道場を構えている人のようで、そこの師範代として勤めているらしい。若い頃は名をそれなりにとどろかせた人のようで、このアルケディア・オンラインをやり始めたのは老いた体でも動きやすいアバターが扱えるからこそ、感覚を無くさないように鍛える目的が合ったそうだ。カックウさんやスッケンさんはそんなミートンさんに巻き込まれてやらされたそうだが、それでも付き合っているところを見ると仲は悪くないらしい。

「しかしのぅ、海賊イベントとはこれはこれで美味しいようじゃな。討伐すればドロップ品というはずじゃが、このイベントでは撃退しても貰えるようじゃのぅ」
「あ、本当だ」

 アイテムドロップを見れば、どうやら海賊たちの撃退がモンスターを狩る事と同意義になるのか、いつの間にかドロップ品が幾つか入っていた。
 宝石や金貨の類がそこそこあり、売ればそれなりに稼げるようである。

「でもミートンさん、薬島では売れるところはないですか意味が無いですね」
「むぅ、孫娘がおればすぐにでも換金しやすいのだがなぁ…‥‥あやつは儂らとは違う道を行ったのが残念だ」
「パーティを組まずに、他の友達といっちゃいましたからねぇ‥‥‥」
「まぁ、そもそも面子的にちょっと無理があったというか、同じ年ごろの子と遊びたいのでしょう」

 はぁぁっと溜息を吐くカックウさんにスッケンさん。もうちょっとで配役だけならそろいそうだったようだが、叶わぬ夢だったようだ。

「だがしかし、ここから向かう島で儂らは目的を果たさねばならぬ!!そう、東洋の暗殺者が詰め込まれたという『アサシン島』でくノ一をスカウトするのだぁぁぁぁ!!」
「「おおおおおおおおお!!」」

「‥‥‥僕らの場合は、アサシン島限定の状態異常を作れる薬草採取なんだけどね。盛り上がりがすごいなぁ」
【それならメイドを雇えば良い話しのような気がするのですガ。女手が欲しいのであれば、その手段が使えないわけではないのですよネ?】
「違うのだ、可憐なメイドさんよ!!儂らはこの面子に足りないお色気要員のくノ一を求めており、メイドでは意味が無いのだ!!」
「というのは建前で、単純に雇うALが無い」
「アップデートで追加されてしまったメイド喫茶で、有り金全部貢いでいるからな‥‥‥」

 それが主な原因として、孫娘に思いっきり離反されている理由なのでは?

 そう思ったのだが、僕らは何も言わない。こういう人たちには何を言っても無駄だと思うからだ。いや、言って改善してもらっても、その孫娘さんが加わることも無いとは思うんだけどね。

 何にしても、船上での海賊襲撃も乗り切り、もう間もなく船は目的地へ到着する。僕らとしては、アップデートでの今後に備えてより戦闘面での強化も欲しいからこそ、未知の状態異常を作れる薬草を求め、ミートンさんたちはくノ一を求めてそれぞれ降り立つ。

 さてさて、どちらの目的の達成の方が早いのか。これはこれで面白そうだなぁ‥‥‥‥


「あれ?でもスカウトしたところで、そもそも雇うお金もないんじゃ?」
「ふふふ、安心せい。いざとなれば土下座をしまくって訴えるのだ!!」
「老い先短そうな老人及びその付き人たちの一斉土下座!!」
「これで同情してもらって、何とかしてもらうのだぁぁぁぁぁあ!!」

【シャゲェ…‥‥】
【ガウゥ‥‥‥】
【バルルルゥ‥‥‥】
【‥‥‥プレイヤーの個性は面白いですが、主様、この目が相手を心底軽蔑しつつドン引きする目で合ってますかネ?】
「何とも言えない。話せば良い人たちなんだけど、この執念はちょっと怖いなぁ…‥‥」
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