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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1.1-49話 こういう時だから、ド派手にやるのも

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‥‥‥レイドバトルと言うのは、中々面白い機会でもある。

 普段はそれぞれ好き勝手に過ごし合い、誰がどうしようが勝手だろうと思う部分もあるのだが、それでもこういう時に限っては皆協力し合うためにお互いをよく見ることが出来るのだ。
 のんびり勢では見ないようなガチガチの装備で固めた者たちや、逆に戦闘を楽しむ勢では見ないような、のほほんとした装備を付けている人たちなど、その姿は多種多様である。
 そして今、この大乱戦となるレイドバトルの盛り上がっている中に、それは降臨した。


ドウウゥゥゥゥッ!!

 強烈な爆音と共に、攻撃の中何かが猛スピードで駆け抜けていく。
 プレイヤーたちの中で、まだギリギリ視線を移せる余裕のあった者たちはその爆音の招待をつい探し、目視した。


「‥‥‥何だ、アレ?」

 そこにいたのは、プレイヤーなのかそうでないのか、よくわからない少女の姿。
 いや、少女というには一部が少々大きい気がしなくもないが、それでも大人の女性と言うべき姿が駆け抜けていく。

 重装備の鎧を身に纏っているように見えるのに、軽々と風と共にオララゴンの後方へ回り込み、その尻尾の上を駆け抜ける。

【オラゴォォォォォォン!!】

 自身の周囲に群がるプレイヤーたちと何かが違う事を理解したのか、オララゴンは尻尾を大きく振って振り落とそうとするも、彼女は落ちることは無い。まるで、蛇が木を軽々と登っていくかのように、その蠢く尻尾がただの大木であると言わんとするがごとく、素早く上へと目指す。

 ブレスを放った?いや、そのブレスに対しては素早い動きで回避している。
 いまいち攻撃に使われていない前足で叩き落そうとした?いや、その腕を邪魔だというように、その見える細腕からは考えられないほどの打撃音を出して、吹き飛ばす。

 何者かはわからないが、少なくとも敵ではない。
 むしろ、オララゴンが形態変化をしたせいで攻めきれないこの状況に舞い降りた天使と言うべきか‥‥‥いや、あの禍々しい鎧を着こなした姿からは悪魔と言うべきか。
 黒い長髪をなびかせ、手にいつの間にか装備された大きな槍を扱い、オララゴンの上を爆走する謎の女性の動きには迷いがなく、だからこそ彼女は今、ここで奴を確実に仕留めるための確信を持った行動をしているのだと、プレイヤーたちは瞬時に理解し、手助けを行う。

 誰が手柄を手に入れたいのか。奴を倒した名誉を得たいのか。
 これはただ、オララゴンから勝利をもぎ取るための戦いであり、敗北は許されぬ争いだ。

 ゆえに、敗北の手を遠ざけるために、この場にいるすべての者たちへの勝利のために、プレイヤーたちは言葉を交わさなくとも行動で語り合う。

 彼女が誰で、どうする気なのかは見当が付かないが、あの動きからは確殺するための手段をここへもたらすために、動いているとのだと理解させられる。

 そしてその理解をもって、自分達は全力で奴を足止めし、確実な勝利を得るのだ。

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 雄たけびを上げ、一心同体となり、ラストスパートとして力を振り絞り、この戦いを終えさせるために全てを使う。
 全ての能力を底上げさせる魔法や舞が使用され、その場にいる全員がどんどん強化され、オララゴンの命を終えさせるために、いや、元から無い命であるならば再び眠りにつかせるために何もかも絞り出す。


 そして見よ、あの悪魔の女性が掲げた槍が、何時しか光を放ち始め、この戦場に終止符を打つ一撃が繰り出される様子を。

 そして願え、その一撃をもって、強大なオララゴンを滅することを。

 すべてのプレイヤーたちがふれあい、そして失いたくないNPCたちを守るために、この世界でまだまだ遊びたいからこそすべてをそこに奉げ、その一撃は解き放たれる。


ドッゴォォォォォォォン!!

 全力で投げられ、宙で槍の柄が大爆発を起こし、その先端が猛烈な勢いをもって、至近距離でオララゴンへ直撃する。
 流石の奴もこれは不味いと思って回避を試みるも、それはもう遅い。


ぐざぁぁぁ、ずっばぁぁぁぁぁlん!!

 凄まじい勢いで貫き、内部を爆走して一気に貫通してすべてを吹き飛ばす。

 邪魔するものすべてが無かったかのように消し飛ばされ、オララゴンの頭に大きな穴ができあがり、そして見よ、そこに輝く光の弾が出来た様子を。

「あれだ!!」
「間違いなく、あれこそが!!」
「「「「「奴の真の弱点だぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 今の一撃では、隠していた肉をすべて消し飛ばすだけにとどまり、完全にやりきれなかったらしい。
 けれども、これは必殺の一撃‥‥‥必ず絶命させる一撃ではなく、皆が確実に絶命させる一撃となり得て、攻撃を集中させていく。

【オラゴォォォォォォォォォォォン!?】

 頭の大半を失い、弱点を露出させたことで驚愕し、既に上顎すらもないのにオララゴンは悲鳴を上げる。
 けれども、そんな隙をプレイヤーたちは逃すか?いや、そんなことは0に等しいと言えるだろう。

 むき出しになり、オララゴンのやられてはいけない箇所へ、攻撃が集中していく。
 無駄に強固なすべての肉壁も意味をなさず、全員が最後の一撃をもって奴を確実に葬り去っていく。


【オラアアアアアアアアアアアァァァァァーーーーーーーーーーー!!】

 断末魔を上げ、そしてオララゴンはついにその膨大なHPを削り取られ、大地へ倒れ行く。

 その巨体が地に倒れ伏し、復活が途絶えたせいか見る見るうちに肉が溶け骨が浮き出て‥‥‥ぼんっと大きな音と共に、光となって消えてしまった。


―――――
>‥‥‥今イベント最終ボス『オララゴン』。HP0を確認。
>復活ゲージ、残り3分ほどで満タンでしたが…‥‥復活は阻止されました!!
>おめでとうございます!!全プレイヤーの皆様の勝利です!!
―――――

「「「「「やったぁぁぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 かなりギリギリの戦いであったことがうかがえたが、それでも勝利できたその喜びは、全員の心に湧き上がり、舞い上がらせる。

 今の一撃を撃ち、皆の勝利を導いた悪魔の女性、いや、この場においては降臨した勝利の戦女神というべきものを捜そうとした者たちもいたのだが、残念ながら既にその姿は失せていた。

 後に、このイベントバトルの時に突如として降臨し、勝利をもたらした謎の女性に関してはプレイヤー間で『黒き女神』として祭り上げられるのだが、そんな事よりも今は勝利に酔いしれるのであった…‥‥





「おおおぅうう‥‥‥ば、爆発加減見誤った…‥‥投げて飛ばして爆発で落ちて、結構痛い…‥‥」

‥‥‥そしてその勝利の裏では、スキルの効果も切れて元の姿に戻ったプレイヤーが、自分の攻撃でほぼ自滅のような結果を出してしまい、現実ではないのに感じてしまう痛みにうめき声を上げていたのであった。

【どうやら、感覚プログラムにちょっと問題があるようデス。運営へ報告しますカ?】
「頼むロロ‥‥‥あと、出来ればこの場から逃げたいけど、逃走経路は?変にばれたらそれこそ不味い」
【大丈夫デス。皆様の姿を色々つぎはぎしたおかげで、バレていないようデス。とは言え、安全な場所まで運びましょウ。マリー、リン、セレア、一緒に主をこの場から運ぶのデス】
【シャゲェ!】
【ガウガーウ!】
【バルゥゥ!!】
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