アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1.1-46話 数の暴力、対抗するのは

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‥‥‥それは突然、やってくる。
 いつものように赤い夜が来るはずが、湧き出てくるアンデッドたちは一体も出てこず、音もしない静寂な空間が広がる。
 
ビシィッ!!

 割れるような音がしたかと思えば、その音がした方向の空にひびが入り始め、それは徐々に大きくなってくる。
 そして、大きくなった穴から這いずるような音が続けて出て、ひび割れからじわりじわりと赤黒い液体が染み出て地上へ滴りながらその体を出してくる。。

【グォォォォォォォオラァァァァァ!!】

 咆哮がとどろき、ひび割れた空間が散らばって内部から化け物が飛び出してきた。

 見よ、その巨体を山より大きな獣の姿を。
 見よ、その肉が失せていたはずなのに、脈打つような血管が張り巡らされた身体を。

 欠片として力を見せていた肉片が全て集まっていき、それは一つの巨大な怪物へと成り果てる。

 かつては世界に名を響かせ、恐怖のどん底に陥れたとも言われる、巨体を誇るモンスター「オララゴン」は、その姿をついに見せ‥‥‥‥


「いよっしゃ狩るのデース!!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
「全員、あの怪物を叩きのめせぇぇぇ!!」
「「「「「ひぃやっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

…‥‥出て早々に、狂ったかのような大声を上げていた人々に、群がられるのであった。







「‥‥‥うわぁ、流石レイドバトル最終戦『オララゴン戦』とは言え、皆気合いが入っているな」

 群がられ、その巨体で薙ぎ払い、ブレスによって吹き飛ばしつつもすべてを押しのけ切れていない巨体を見て、思わず僕はそうつぶやいた。
 本日は休日前の夜8時頃であり、大体風呂や夕食なども済ませた人たちが入ってくるゴールデンタイムといえるような時間。そんな時間に運営から出現時間を予告されたのならば、皆準備万端の体制で攻め入ることが決まっていただろう。

 全プレイヤー参加のレイドバトルということもあってか、本来であればパーティ単位でしかかからないようなバフなども、参加している全プレイヤーにかかるようですべてのパーティでのバフ付与が重ね掛けされているせいで、見たことが無いダメージ量や回復量を出してしまう。

 ただ、その事も考慮されてなのかオララゴンの方のHPなども滅茶苦茶大量に設定されているで、現状は善戦しつつもまだまだ押し切れない状態のようだ。


「セレア、前衛の方で防御をしつつ、隙を見て攻撃してくれ。リン、そっちも混じりつつ攻撃をかわしながら相手の手を見ていこう」
【バルルルゥ!!】
【ガウガーウ!!】

 元気よく返事をして、新しい装備品として大盾を構えるセレアが前に出て、リンが前衛の人達に混ざって攻撃を仕掛け始める。

「マリーは状態異常を試しつつ、ロロはHPがヤバそうな人へ向けて回復効果のあるクッキーを詰め込んでサポートを頼む」
【シャゲェ!!】
【了解デス】

 素早い動きで毒の霧を発生させてオララゴンを狙いつつ、腕を変形させて詰め込み回復のサポートをして行くのも忘れない。
 全プレイヤーが参加なので、最初は烏合の衆というか皆バラバラにやり合う者かと思っていたが、中々協力し合える状況となっており、効率的に攻めやすくなっているだろう。

 攻めるのが苦手なプレイヤーたちは後衛支援として回復魔法やポーションを散布して手助けを行い、彼らがやられないように防衛の役目として上級職の守りに適したシールドマンやタンクマンといった者たちが請け負う。
 そして攻める方に関しては遠距離から魔法攻撃を行う魔法使いや弓兵、その上級職が行い、近距離戦ではバーサーカー・狂戦士ギルドなどが連合を組んで積極的に攻めていく。

 誰一人として身勝手に動かないというか、やらかしたら危険な巨大な敵だからこそ、自然と協力し合って一体感を生み出す。強大な敵を前にすると流石に誰もが手を取り合うのかもしれない。
 まぁ、中には傍若無人に勝手に動くのが出るかもしれないが、その攻撃すらも利用して周囲がサポートを行い、好き勝手に動きつつも乱れることが無い攻撃が出来ているのだろう。

「とは言え、相手の山のような巨体の攻撃も中々辛いな‥‥‥」

 見た目的には大きな山のようなオララゴン。
 その姿を例えるのであれば、名前からなんとなく分かっていたドラゴンっぽい特徴だが、どちらかと言えばオオトカゲのような容姿といえなくもないだろう。
 しかしながらトカゲに有らず、その口からは強力な炎のブレスが放たれ、巨大さを利用した尻尾を振り回す攻撃も広範囲をふっ飛ばしていく。


「回復、防御のバフがあるとは言え、それでも守りの方が辛いが…‥‥失う訳にもいかないようなNPCたちが混ざっているからなぁ」

 プレイヤーたちに混ざって攻撃を仕掛けている様子が見えるのだが、NPCの生はこの世界では一度きり。やられても復活できるプレイヤーとは違って、終わったらそこでアウトなのに、攻撃に参加する意味があるのか?‥‥‥いや、その理由はあるのだろう。

 戦闘を進めていくにつれて、ログ内にいつの間にかオララゴンに関する情報が開示されており、読むだけでもアレが生きて動いていた時の恐怖というのが存在していたことがうかがえる。
 だからこそ、完全なる復活を果たされる前に打倒したいと‥‥‥

「‥‥‥って、あれでまだ、完全に復活していないという事か」

 ある程度血肉が出来上がっているように見えるのだが、それでもあの状態ではまだアンデッドとしての仲間になるようで、死体が蠢いている状況といえるだろう。
 それでもこうやって動き続けるのは、もうすぐ真の意味での復活を狙っているそうで、今宵ついに出てきたという事のようである。

 敗北条件は、その真の復活をされてしまった時…‥‥現在進行形で貯まっているゲージのようなものが満タンになった瞬間に、全員一気に死亡判定扱いされるようだ。
 なかなか鬼畜な判定のようだが、それでもNPCとはいえ親しくなった人たちがいるのもあって守りたい人たちが動き、協力してオララゴンを潰すことに専念する。

 僕もまた、親しくなった人たちがいるからこそ全員で挑み、爆裂薬やロケットパンチガントレットなどで攻撃を支援しつつ、足りなくなってくる薬を作ったりしてのサポートを行い、全員の力を常に保てるように立ちまわる。

 後は運営から正式なお仕置き用の称号も活かして、無理しすぎているNPCを見つければ、駄目になる前に避難させて回復を行う。
 こういう時に干渉できるとなかなか便利だよね。

「しかし、姉妹揃ってペラペラ状態になって、それで生きているのが不思議だよね」
「のじゃぁ‥‥‥さ、参戦したのは良かったのじゃが、即潰されたのじゃ」
「これもある意味、一種の状態異常‥‥‥回復すれば、参戦できるのよね」

 ペラペラの紙のように薄っぺらい身体になったエルフの姉妹、のじゃロリレティアとその妹のロティさんを後方の治療用スペースに運びながらそう口にするのであった。

 というか、ペラペラの状態異常って聞いたことが無いな。未知の状態異常攻撃にも注意しないといけないとなると、オララゴンはかなり手ごわそうだ‥‥‥‥
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